師導古典を学びたいすべての人に

了凡四訓 / 積善之方・只だ此の一點の心、如何ぞ得易からん

嘉興包憑,字信之,其父為池陽太守,生七子,憑最少,贅平湖袁氏,與吾父往來甚厚,博學高才,累舉不第,留心二氏之學。一日東游泖湖,偶至一村寺中,見觀音像,淋漓露立,即解橐中得十金,授主僧,令修屋宇,僧告以功大銀少,不能竣事;復取松布四疋,檢篋中衣七件與之,內紵褶,係新置,其僕請已之。憑曰:但得聖像無恙,吾雖裸裎何傷?僧垂淚曰:舍銀及衣布,猶非難事。只此一點心,如何易得。後功完,拉老父同遊,宿寺中。公夢伽藍來謝曰:汝子當享世祿矣。後子汴,孫檉芳,皆登第,作顯官。

新字:嘉興包憑,字信之,其父為池陽太守,生七子,憑最少,贅平湖袁氏,与吾父往来甚厚,博学高才,累舉不第,留心二氏之学。一日東游泖湖,偶至一村寺中,見観音像,淋漓露立,即解橐中得十金,授主僧,令修屋宇,僧告以功大銀少,不能竣事;復取松布四疋,検篋中衣七件与之,内紵褶,係新置,其僕請已之。憑曰:但得聖像無恙,吾雖裸裎何傷?僧垂涙曰:舎銀及衣布,猶非難事。只此一点心,如何易得。後功完,拉老父同遊,宿寺中。公夢伽藍来謝曰:汝子当享世禄矣。後子汴,孫檉芳,皆登第,作顕官。

書き下し

嘉興の包憑、字は信之、其の父は池陽の太守為り。七子を生み、憑最も少し。平湖の袁氏に贅し、吾が父と往來甚だ厚し。博學高才なるも、累ねて舉するも第せず、心を二氏の學に留む。一日東のかた泖湖に游び、偶ま一村寺の中に至り、觀音の像の淋漓として露立するを見る。即ち橐中を解きて十金を得、主僧に授けて、屋宇を修めしむ。僧告ぐるに功大にして銀少なく、事を竣ふる能はざるを以てす。復た松布四疋を取り、篋中の衣七件を檢めて之に與ふ。内の紵褶は、新たに置く所に係り、其の僕之を已めんことを請ふ。憑曰く、但だ聖像の恙無きを得ば、吾裸裎たりと雖も何ぞ傷まん、と。僧淚を垂れて曰く、銀及び衣布を舍つるは、猶ほ難事に非ず。只だ此の一點の心、如何ぞ得易からん、と。後に功完り、老父を拉きて同に遊び、寺中に宿す。公夢みるに伽藍來りて謝して曰く、汝の子當に世祿を享くべし、と。後に子の汴、孫の檉芳、皆な第に登り、顯官と作る。

現代語訳

嘉興の包憑は、字を信之といい、父は池陽の太守でした。七人の息子のうち憑は末っ子で、平湖の袁氏に婿入りし、私(了凡)の父と深く付き合っていました。博学で才能に恵まれていましたが、科挙には何度受けても合格せず、仏教と道教の学問に心を寄せていました。ある日、東の泖湖に遊び、たまたまある村の寺に立ち寄ると、観音像が雨ざらしで濡れたまま立っていました。すぐに袋を開けて十両を取り出し、住職に渡して堂を修理させようとしました。住職は、工事が大きいのに銀が少なく、やり遂げられないと言いました。そこで包憑はさらに松江産の布四疋を出し、箱の中の衣を七着選んで与えました。その中の麻の上着は新しく仕立てたばかりのもので、召使いはそれだけはやめるよう頼みました。憑は「仏像さえ無事であれば、私が裸になろうと何の差し支えがあろう」と言いました。住職は涙を流して言いました。「銀や衣や布を差し出すのは、まだ難しいことではありません。ただこの一つの心は、どうしてたやすく得られましょうか」。のちに工事が完成すると、包憑は老父を連れて一緒に出かけ、寺に泊まりました。公の夢に伽藍神(寺の守り神)が現れて礼を述べ、「あなたの子は代々の禄を受けるでしょう」と言いました。のちに子の汴、孫の檉芳はみな科挙に合格し、高官になりました。

解説

了凡の父の友人だった包憑の話です。科挙に何度も落ちた包憑は、雨ざらしの観音像を見て、持ち合わせの銀を差し出し、足りないと言われると布や衣まで与えました。召使いが止めた新しい上着についても、仏像が無事なら自分が裸になっても構わないと答えました。住職の「銀や衣を差し出すのは難しくない、難しいのはこの一つの心だ」という言葉が要です。了凡は、施した物の多さではなく、惜しまずに差し出す心の働きを評価しています。子や孫が科挙に合格したという結びは、自らは合格できなかった包憑への報いとして語られています。何かを差し出すときの物惜しみの無さこそが、人の心を打つのです。

この章句が説くこと

積善施し陰徳布施因果

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる