論語 / 憲問篇
子曰:「不在其位,不謀其政。」
書き下し
子曰く、其の位に在らざれば、其の政を謀らず。
現代語訳
先生がおっしゃった。「その地位にいなければ、その職務について口を出さない。」
解説
泰伯篇にも同じ言葉があり、繰り返し説かれた原則である。担当でないことに口を出さない、という規律だ。消極的な処世訓に見えるが、二つの実際的な意味がある。一つは、責任を負わない立場からの発言は無責任になりやすいということ。実行の負担を引き受けないまま意見だけを述べれば、言うことは容易になる。もう一つは、自分の持ち場に集中するための線引きである。他部署の問題は目につきやすく、指摘すれば有能に見える。だが、その時間は自分の職務から引かれている。ただし、この原則を過度に適用すると、誰も全体を見ない組織になる。孔子自身、前の章では自分の職分を理由に諫言している。位に在らざれば口を出さないというのは、逆に言えば、位にある事柄には必ず口を出すということでもある。
この章句が説くこと
職分越権集中規律責任
関連する章句
-
『墨子』號令圍城の重禁。敵人、卒かに至らば、嚴しく吏民に令して、敢えて讙囂し、三最並び行き、相い視て坐して泣き涕を流すこと無からしむ。若し視て手を舉げて相い探り、相い指し相い呼び、相い歴り相い踵し、相い投じ相い擊ち、相い靡くに身及び衣を以てし、訟駮の言語、及び令に非ずして敵の動移を視る者は、斬る。伍人、得ざれば斬る。之を得れば除く。五人、城を踰えて敵に歸せば、伍人、得ざれば斬る。伯と敵に歸せば、隊吏、斬る。吏と敵に歸せば、隊将、斬る。
-
論語・季氏篇孔子曰く、禄の公室を去ること、五世なり。政の大夫に逮ぶこと、四世なり。故に夫の三桓の子孫、微なり。
-
論語・憲問篇子曰く、「我を知ること莫きかな。」子貢曰く、「何為れぞ其れ子を知ること莫からんや。」子曰く、「天を怨みず、人を尤めず、下学して上達す。我を知る者は、其れ天か。」
-
論語・衛霊公篇子曰わく、君子はこれを己に求め、小人はこれを人に求む。
-
論語・里仁篇子曰わく、父母在すれば、遠く遊ばず。遊ぶに必ず方有り。
-
葉隠・聞書第一役儀(やくぎ)を危(あぶ)なきと思うは、すくたれ者なり。外(ほか)の事、私(わたくし)の事にて仕損(しそん)ずるとこそ辱(はじ)にてもあるべし。その事に備(そな)わりたる身なれば、その事にて仕損ずるは定まりたることなり。不調法(ぶちょうほう)にて何と相勤(あいつと)むべきやとの心遣(こころづか)いは、あるべき事なり。