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驢鞍橋 / 卷下

一日、長水長老云ふ、何某殿子息大病なるに、弔を賴み來る也。如何仕るべきや。師曰く、楞嚴咒千坐程誦せば、快く成るべし。總而兵法者抔の弟子に起請を多く書せたる抔は、子孫不吉也。彼れも祖父の代より馬の上手にて、弟子共に起請を多く書せたる末也。その咎と覺えたり。然る間、諸神を請じ下し奉り、報謝に楞嚴咒千坐誦せば、大略よかるべしと也。

新字:一日、長水長老云ふ、何某殿子息大病なるに、弔を頼み来る也。如何仕るべきや。師曰く、楞厳咒千坐程誦せば、快く成るべし。総而兵法者抔の弟子に起請を多く書せたる抔は、子孫不吉也。彼れも祖父の代より馬の上手にて、弟子共に起請を多く書せたる末也。その咎と覚えたり。然る間、諸神を請じ下し奉り、報謝に楞厳咒千坐誦せば、大略よかるべしと也。

書き下し

一日、長水長老云ふ、何某殿子息大病なるに、弔を頼み来る也。如何仕るべきや。師曰く、楞厳咒千坐程誦せば、快く成るべし。総而兵法者抔の弟子に起請を多く書せたる抔は、子孫不吉也。彼れも祖父の代より馬の上手にて、弟子共に起請を多く書せたる末也。その咎と覚えたり。然る間、諸神を請じ下し奉り、報謝に楞厳咒千坐誦せば、大略よかるべしと也。

現代語訳

ある日、長水長老が言った。某殿の子息が大病で、弔い(祈祷)を頼みに来ました。どうすればよいでしょうか。師は言われた。楞厳咒を千座ほど誦せば、よくなるだろう。おおよそ兵法者などが弟子に起請文を多く書かせるのは、子孫にとって不吉である。あの家も祖父の代から馬術の名手で、弟子たちに起請文を多く書かせた末である。その咎と思われる。だから、諸神をお招きして、報謝に楞厳咒を千座誦せば、たいていよくなるだろう、と。

解説

大病の子息のための祈祷を頼まれ、正三は、この家は祖父の代から馬術の師範で、弟子に誓約書を多く書かせてきた、その咎だろう、と見立てる。神仏に誓わせて弟子を縛ることが、神々への負債となっている、という考え方である。因果の解釈は当時の信仰によるが、人に誓いを強いて縛りつけることの重さを問う視点は興味深い。教える側が権威で人を縛ることへの戒めとして読むこともできる。
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この章句が説くこと

起請文誓約因果祈祷兵法者縛る

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