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驢鞍橋 / 卷上

一日聚會の次で、一僧去る病躰の和尙に向つて云く、惡病抔出でざる樣になさるべし。若し惡病出でば、大に人の爲めに怨と成るべし。師聞て曰く、扨も詮なき事を云ふ人かな、如何なる病をか受け、如何なる死をかせん。我人知られてこそ因果次第也。從今分別するとも爭かあたらんや。唯今修する處にこそ詮議はあれ、後はひつてひり破つても、死にめされよ。只死しても奇麗にもをりないぞ、野に成りとも山に成りとも只捨てめされよと也。

新字:一日聚会の次で、一僧去る病体の和尚に向つて云く、悪病抔出でざる様になさるべし。若し悪病出でば、大に人の為めに怨と成るべし。師聞て曰く、扨も詮なき事を云ふ人かな、如何なる病をか受け、如何なる死をかせん。我人知られてこそ因果次第也。従今分別するとも争かあたらんや。唯今修する処にこそ詮議はあれ、後はひつてひり破つても、死にめされよ。只死しても奇麗にもをりないぞ、野に成りとも山に成りとも只捨てめされよと也。

書き下し

一日聚会の次で、一僧去る病体の和尚に向つて云く、悪病抔出でざる様になさるべし。若し悪病出でば、大に人の為めに怨と成るべし。師聞て曰く、扨も詮なき事を云ふ人かな、如何なる病をか受け、如何なる死をかせん。我人知られてこそ因果次第也。従今分別するとも争かあたらんや。唯今修する処にこそ詮議はあれ、後はひつてひり破つても、死にめされよ。只死しても奇麗にもをりないぞ、野に成りとも山に成りとも只捨てめされよと也。

現代語訳

ある日、集まりのついでに、一人の僧が、ある病身の和尚に向かって言った。悪い病などが出ないようにしてください。もし悪い病が出れば、大いに人のために怨となるでしょう。師は聞いて言われた。なんとも詮ないことを言う人だな。どんな病を受け、どんな死に方をするか、自分も人も知られるものか。因果次第である。今から分別しても、どうして当たることがあろうか。ただ今修めているところにこそ、詮議はあるのだ。その後は、ひきつって、ひり破ってでも、死になさい。ただ死んでも、きれいでもないのだぞ。野にでも山にでも、ただ捨ててしまいなさい、と。

解説

病身の和尚に、人の迷惑になる悪い病気にならないように、と言った僧を、正三はたしなめる。どんな病でどんな死に方をするかは、誰にも分からない因果次第のことだ、今から心配しても意味がない、と。大切なのは、今どう修めているかだけであり、死に様は野でも山でもどうなってもよい、と言い切る。自分では選べない将来の心配に心を奪われ、今やるべきことをおろそかにする人への、力強い言葉である。
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この章句が説くこと

今因果病死に様心配集中

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