列子 / 力命篇
晏子對曰:「使賢者常守之、則太公桓公將常守之矣、使有勇者而常守之、則莊公靈公將常守之矣。數君者將守之、吾君方將被蓑笠而立乎畎畝之中、唯事之恤、行假念死乎?則吾君又安得此位而立焉?以其迭處之迭去之、至於君也、而獨爲之流涕、是不仁也。見不仁之君、見諂諛之臣。臣見此二者、臣之所爲獨竊笑也。」景公慙焉、舉觴自罰、罰二臣者各二觴焉。
新字:晏子対曰:「使賢者常守之、則太公桓公将常守之矣、使有勇者而常守之、則荘公霊公将常守之矣。数君者将守之、吾君方将被蓑笠而立乎畎畝之中、唯事之恤、行仮念死乎?則吾君又安得此位而立焉?以其迭処之迭去之、至於君也、而独為之流涕、是不仁也。見不仁之君、見諂諛之臣。臣見此二者、臣之所為独窃笑也。」景公慚焉、舉觴自罰、罰二臣者各二觴焉。
書き下し
晏子對えて曰く、賢者をして常に之を守らしめば、則ち太公・桓公將に常に之を守らんとす。勇有る者をして常に之を守らしめば、則ち莊公・靈公將に常に之を守らんとす。數君の將に之を守らんとせば、吾が君は方に將に蓑笠を被て畎畝の中に立ち、唯だ事をのみ之れ恤え、行くゆく假に死を念わんや。則ち吾が君又た安んぞ此の位を得て立たんや。其の迭々に之に處り迭々に之を去るを以て、君に至れるなり。而るに獨り之が爲に涕を流すは、是れ不仁なり。不仁の君を見、諂諛の臣を見る。臣此の二つの者を見る。臣の獨り竊かに笑う所以なり、と。景公慙ず。觴を舉げて自ら罰し、二臣を罰すること各々二觴なり。
現代語訳
晏子は答えた。「賢者がいつまでもこの国を守っていられるなら、太公や桓公がいまも守っておられるでしょう。勇者がいつまでも守っていられるなら、荘公や霊公がいまも守っておられるでしょう。その方々がいまも守っておられたなら、我が君はいま蓑と笠をつけて田んぼのなかに立ち、その日の仕事のことだけを心配して、死のことなど考える暇もなかったでしょう。そもそも我が君がどうしてこの位に就いていられましょう。代わる代わるここに就き、代わる代わる去ってきたからこそ、君の番が回ってきたのです。それなのに自分ひとりのためにそれを嘆いて涙を流すのは、仁ではありません。私は仁でない君主を見、へつらう臣下を見ました。この二つを見たので、ひとりひそかに笑っていたのです」。景公は恥じ入った。杯を挙げて自ら罰盃を飲み、二人の臣にはそれぞれ二杯の罰盃を与えた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『晏子春秋』諫上・景公登牛山悲去國而死晏子諫景公、牛山に游び、北のかた其の国城に臨みて涕を流して曰く、「若何ぞ滂滂として此を去りて死せんや」と。艾孔・梁丘据、皆従いて泣く。晏子独り旁らに笑う。公、涕を刷いて晏子を顧みて曰く、「寡人、今日の游びに悲しむ。孔と据と皆寡人に従いて涕泣す。子の独り笑うは、何ぞや」と。晏子対えて曰く、「賢者をして常に之を守らしめば、則ち太公・桓公将に常に之を守らんとす。勇者をして常に之を守らしめば、則ち霊公・荘公将に常に之を守らんとす。数君の者、将に之を守らんとせば、則ち吾が君安んぞ此の位を得て焉に立たん。其の迭いに之に処り、迭いに之を去るを以て、君に至りて、独り之が為に涕を流す。是れ不仁なり。不仁の君一つを見(あら)わし、諂諛の臣二つを見わす。此れ臣の独り竊かに笑う所以なり」と。
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『列子』力命篇齊の景公牛山に游び、北のかた其の國城に臨みて涕を流して曰く、美なるかな國や。鬱鬱芊芊たり。若何ぞ滴滴として此の國を去りて死せんや。古より死する者無からしめば、寡人將に斯を去りて何くにか之かんとする、と。史孔・梁丘據皆な從いて泣きて曰く、臣は君の賜に賴りて、疏食惡肉も得て食らうべく、駑馬稜車も得て乘るべきなり。且つ猶お死を欲せず。而るを況んや吾が君をや、と。晏子獨り旁らに笑う。公涕を雪いて晏子を顧みて曰く、寡人今日の游は悲し。孔と據とは皆な寡人に從いて泣く。子の獨り笑うは、何ぞや、と。
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『晏子春秋』外篇上・景公置酒泰山四望而泣晏子諫景公酒を泰山の上に置き、酒酣にして、公四のかた其の地を望み、喟然として歎じ、泣数行下りて曰く、「寡人将に此の堂堂たる国を去りて死せんとするか」と。左右の佐けて哀しみ泣く者三人、曰く、「臣は細人なり、猶お将に死し難からんとす。而るを況んや公をや。是の国を棄てて死すること、其れ孰れか為す可けんや」と。晏子独り其の髀を搏ち、天を仰ぎて大いに笑いて曰く、「楽しいかな、今日の飲や」と。公怫然として怒りて曰く、「寡人哀しみ有り、子独り大いに笑う、何ぞや」と。晏子対えて曰く、「今日怯君一、諛臣三を見る。是を以て大いに笑う」と。公曰く、「何をか諛怯と謂うや」と。晏子曰く、「夫れ古に死有るは、後世の賢者をして之を得て以て息わしめ、不肖者をして之を得て以て伏せしむ。若し古の王者をして如し死有ること毋からしめば、昔の先君太公より今に至るまで尚お在らん。而して君も亦安くんぞ此の国を得て之を哀しまんや。夫れ盛んなるに衰え有り、生に死有るは、天の分なり。物には必ず至る有り、事には常に然る有るは、古の道なり。曷為れぞ悲しむ可けん。老いに至るまで尚お死を哀しむは、怯なり。左右の哀しみを助くるは、諛なり。怯諛聚居す、是の故に之を笑う」と。公慚じて辞を更めて曰く、「我は国を去りて死するが為に哀しむに非ず。
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『晏子春秋』諫上・景公貪長有國之樂晏子諫景公、淄上に観(み)て、晏子と閑(しず)かに立つ。公、唱然として歎じて曰く、「嗚呼、国をして長く保ちて子孫に伝えしむべくんば、豈に楽しからずや」と。晏子対えて曰く、「嬰聞く、明王は徒らには立たず、百姓は虚しくは至らず、と。今君は政を以て国を乱し、行いを以て民を棄つること久し。而るに之を保たんと欲す、亦難からずや。嬰之を聞く、能く長く国を保つ者は、能く終わりを善くする者なり、と。諸侯並び立てば、能く終わりを善くする者を長と為し、列士並び学べば、能く終わりを善くする者を師と為す。昔、先君桓公、方に賢を任じて徳を賛(たす)くるの時、亡国は恃みて以て存し、危国は仰ぎて以て安んず。是を以て民は其の政を楽しみ、世は其の徳を高しとす。行きて遠く暴を征し、労する者も疾まず、海内を駆りて天子に朝せしめ、而して諸侯怨みず。是の時に当たりては、盛君の行いも焉より進むこと能わず。其の卒するに及びて衰え、徳に怠りて楽しみに並び、身は婦侍に溺れて謀は豎刀に因る。是を以て民は其の政に苦しみ、世は其の行いを非とす。故に身は胡宮に死して挙げられず、蟲出でて収められず。是の時に当たりては、桀紂の卒も焉より悪しきこと能わず。詩に曰く、『初め有らざる靡きも、克く終わり有ること鮮し』と。終わりを善くする能わざる者は、其の君を遂げず。今君は民に臨むこと寇仇の若く、善を見ること熱を避くるが若し。政を乱して賢を危うくし、必ず衆に逆らい、欲を民に肆にして、虐げ誅すること下に於いてす。恐らくは身に及ばん。嬰の年老い、君の使いを待つ能わず。行い革むる能わずんば、則ち節を持して以て世を没えんのみ」と。
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説苑・臣術景公酒を飲む、陳桓子侍り、晏子を望み見て公に復して曰く、「請う晏子を浮せん」と。公曰く、「何の故ぞや」と。対えて曰く、「晏子緇布の衣、麋鹿の裘、棧軫の車にして駑馬を駕して以て朝す、是れ君の賜を隠すなり」と。公曰く、「諾」と。酌者觴を奉じて之を進めて曰く、「君子に浮せよと命ず」と。晏子曰く、「何の故ぞや」と。陳桓子曰く、「君卿位を賜いて以て其の身を尊くし、之を百万に寵して以て其の家を富ませ、群臣の爵、子より尊きは莫く、禄子より厚きは莫し。今子布衣の衣、麋鹿の裘、棧軫の車にして駑馬を駕して以て朝す、則ち是れ君の賜を隠すなり、故に子を浮す」と。晏子席を避けて曰く、「請う飲みて而る後に辞せんか、其れ辞して而る後に飲まんか」と。公曰く、「辞して然る後に飲め」と。晏子曰く、「君卿位を賜いて以て其の身を顕かにす、嬰敢えて顕の為に受けざるなり、君令を行うが為なり。之を百万に寵して以て其の家を富ませ、嬰敢えて富の為に受けざるなり、君の賜を通ずるが為なり。臣聞く、古の賢臣厚賜を受けて其の国族を顧みざれば、則ち之を過つ。事に臨みて職を守り其の任に勝えざれば、則ち之を過つ。君の内隸、臣の父兄、若し離散して野鄙に在る者有らば、此れ臣の罪なり。君の外隸、臣の職とする所、若し播亡して四方に在る者有らば、此れ臣の罪なり。兵革完からず、戦車修まらざるは、此れ臣の罪なり。夫の敝車駑馬を若し以て朝主するは、臣の罪に非ざるなり。且つ臣君の賜を以て、臣の父の党車に乗らざる無く、母の党以て衣食に足らざる無く、妻の党凍餒する者無く、国の簡士臣を待ちて後に火を挙ぐる者数百家なり。此くの如きは君の賜を隠すか、君の賜を彰すか」と。公曰く、「善し、我が為に桓子を浮せよ」と。
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『晏子春秋』諫下・景公登路寢台望國而歎晏子諫景公晏子と路寝の台に登りて国を望む。公愀然として歎じて曰く、「後嗣をして世世此れを有たしめば、豈に可ならざらんや」と。晏子曰く、「臣聞く、明君は必ず其の治を正して、以て民を利することを事とするを務め、然る後に子孫之を享く。詩に云う、『武王豈に事とせざらんや、厥の孫謀を貽し、以て子を燕翼す』と。今君佚怠に処り、政に逆らい民を害すること日有り、而して猶お若き言を出だす、亦た甚だしからずや」と。公曰く、「然らば則ち後世孰か将に斉国を把らんとする」と。対えて曰く、「服牛死すれば、夫婦哭す、骨肉の親に非ざるなり、其の利の大なるが為なり。斉国を把る者を知らんと欲せば、則ち其の之を利する者か」と。公曰く、「然り、何を以て之を易えん」と。対えて曰く、「之を移すに善政を以てす。今公の牛馬は欄牢に老い、服するに勝えざるなり。車は巨戸に蠹われ、乗るに勝えざるなり。衣裘襦褲は蔵に朽弊し、衣るに勝えざるなり。醯醢は腐り、沽るに勝えざるなり。酒醴は酸酢となり、飲むに勝えざるなり。菽粟は鬱積し、食うに勝えざるなり。又た厚く百姓に藉斂して、以て餒民に分かたず。夫れ財を蔵して用いざるは、凶なり。財苟くも守を失えば、下、其の報い環り至る。其の次は財の守を失うを昧み、委ねて以て人に分かたざる者は、百姓必ず進みて自ら分かつ。故に人に君たる者は、人に請うよりは、己に請うに如かず」と。
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