列子 / 周穆王篇
一體之盈虛消息、皆通於天地、應於物類。故陰氣壯、則夢涉大水而恐懼、陽氣壯、則夢涉大火而燔焫、陰陽俱壯、則夢生殺。甚飽則夢與、甚饑則夢取。是以以浮虛爲疾者、則夢揚、以沈實爲疾者、則夢溺、藉帶而寢則夢蛇、飛鳥銜髮則夢飛、將陰夢火、將疾夢食、飲酒者憂、歌儛者哭。
新字:一体之盈虚消息、皆通於天地、応於物類。故陰気壮、則夢渉大水而恐懼、陽気壮、則夢渉大火而燔焫、陰陽倶壮、則夢生殺。甚飽則夢与、甚饑則夢取。是以以浮虚為疾者、則夢揚、以沈実為疾者、則夢溺、藉帯而寝則夢蛇、飛鳥銜髪則夢飛、将陰夢火、将疾夢食、飲酒者憂、歌儛者哭。
書き下し
一體の盈虛消息は、皆な天地に通じ、物類に應ず。故に陰氣壯んなれば、則ち大水を涉りて恐懼するを夢み、陽氣壯んなれば、則ち大火を涉りて燔焫するを夢み、陰陽俱に壯んなれば、則ち生殺を夢む。甚だ飽けば則ち與うるを夢み、甚だ饑うれば則ち取るを夢む。是を以て浮虛を以て疾と爲す者は、則ち揚がるを夢み、沈實を以て疾と爲す者は、則ち溺るるを夢む。帶を藉きて寢ぬれば則ち蛇を夢み、飛鳥髮を銜めば則ち飛ぶを夢む。將に陰らんとすれば火を夢み、將に疾まんとすれば食を夢む。酒を飲む者は憂え、歌い儛う者は哭す。
現代語訳
体の満ち欠けや増減は、みな天地に通じ、物の類に応じている。だから陰の気が盛んなら、大きな水を渡って恐れおののく夢を見る。陽の気が盛んなら、大きな火を渡って焼かれる夢を見る。陰陽ともに盛んなら、生かしたり殺したりする夢を見る。ひどく満腹なら、人に与える夢を見る。ひどく飢えていれば、人から取る夢を見る。だから、浮ついた気を病とする者は、空へ舞い上がる夢を見る。沈んで重い気を病とする者は、水に溺れる夢を見る。帯を敷いて寝れば蛇の夢を見る。鳥が髪をくわえれば飛ぶ夢を見る。曇りかけると火の夢を見る。病みかけると食べる夢を見る。夢のなかで酒を飲む者は、目覚めて憂え、歌い舞う者は、目覚めて泣く。
解説
夢を予兆ではなく、体の状態の表れとして説明しています。満腹なら与える夢、飢えていれば取る夢。帯を敷いて寝れば蛇の夢。二千年前の観察としてはずいぶん唯物的です。ここから引き出せるのは、内側から湧いてきた強い感情や欲求を、そのまま状況判断の材料にしてはいけない、ということです。焦りが強い日は、焦るべき事実が増えたのではなく、こちらの状態が変わっているだけかもしれない。経営判断を体調と切り離して考えるのは難しく、切り離せると思うことのほうが危うい。判断を下す前に、いま自分がどの状態にあるかを一度確かめる。それだけで防げる誤りがあります。
この章句が説くこと
甚だ飽けば与うるを夢み甚だ饑うれば取るを夢む一体の盈虚消息は天地に通ず酒を飲む者は憂う自己修養
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