列子 / 黄帝篇
列子師老商氏、友伯高子、進二子之道、乘風而歸。尹生聞之、從列子居、數月不省舍。因閒請蘄其術者、十反而十不告。尹生懟而請辭、列子又不命。尹生退。數月、意不已、又往從之。列子曰:「汝何去來之頻?」尹生曰:「曩章戴有請於子、子不我告、固有憾於子。今復脫然、是以又來。」
新字:列子師老商氏、友伯高子、進二子之道、乗風而帰。尹生聞之、従列子居、数月不省舎。因閒請蘄其術者、十反而十不告。尹生懟而請辞、列子又不命。尹生退。数月、意不已、又往従之。列子曰:「汝何去来之頻?」尹生曰:「曩章戴有請於子、子不我告、固有憾於子。今復脫然、是以又来。」
書き下し
列子は老商氏を師とし、伯高子を友とし、二子の道を進めて、風に乘りて歸る。尹生之を聞き、列子に從いて居ること、數月にして舍を省みず。閒に因りて其の術を蘄うことを請うこと、十たび反りて十たび告げられず。尹生懟みて辭せんことを請う。列子又た命ぜず。尹生退く。數月、意已まず、又た往きて之に從う。列子曰く、汝何ぞ去來の頻りなる、と。尹生曰く、曩に章戴子に請う有るに、子我に告げず。固より子に憾み有り。今復た脫然たり、是を以て又た來れり、と。
現代語訳
列子は老商氏を師とし、伯高子を友として、二人の道を修め、風に乗って帰ってきた。尹生はこれを聞いて、列子のもとに身を寄せ、数か月のあいだ自分の家を顧みなかった。折を見てその術を教えてほしいと願い出たが、十度たずねて十度とも教えてもらえなかった。尹生は恨みを抱いて、辞去したいと申し出た。列子はそれにも何も言わない。尹生は去った。数か月たっても思いが消えず、また戻ってきて弟子入りした。列子は言った。「なぜ行ったり来たりが頻繁なのか」。尹生は言った。「以前、私はあなたにお願いしましたが、あなたは教えてくださらなかった。もちろん恨みがありました。いまはすっかり晴れました。それでまた来たのです」。
解説
十度たずねて十度とも教えない。辞めると言われても引き止めない。指導としては極端ですが、この段が描いているのは、教えないことによる選別です。恨んで去り、数か月かけて恨みが消え、それでもまた来た。ここまでで尹生は、教わる前にすでに二つのことを済ませています。自分の意志で戻ったこと、そして恨みを自分で処理したこと。人を育てる側にとって、いちばん省きたくなるのがこの時間です。すぐ教えれば早いし、恨まれもしない。しかし早く与えたものは、たいてい早く手放されます。ただし列子はこのあと、戻ってきた尹生をいきなり褒めません。次の段まで読んでください。
この章句が説くこと
十たび反りて十たび告げられず尹生懟みて辞せんことを請う脫然たり
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