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忍経 / 総論・君子は以て忿を懲らし欲を窒ぐ

《易·損卦》云:「君子以懲忿窒欲。」 《書》周公戒周王曰:「小人怨汝罟汝,則皇自敬德。」又曰:「不啻不敢含怒。」又曰:「寬綽其心。」成王告君陳曰:「必有忍,其乃有濟;有容,德乃大。」 《左傳》宣公十五年:「諺曰:『高下在心,川澤納汙,山藪藏疾,瑾瑜匿瑕,國君含垢,天之道也。』」昭公元年:「魯以相忍為國也。」

新字:《易·損卦》云:「君子以懲忿窒欲。」 《書》周公戒周王曰:「小人怨汝罟汝,則皇自敬徳。」又曰:「不啻不敢含怒。」又曰:「寛綽其心。」成王告君陳曰:「必有忍,其乃有済;有容,徳乃大。」 《左伝》宣公十五年:「諺曰:『高下在心,川沢納汚,山藪蔵疾,瑾瑜匿瑕,国君含垢,天之道也。』」昭公元年:「魯以相忍為国也。」

書き下し

《易・損卦》に云ふ、「君子は以て忿を懲らし欲を窒ぐ」と。 《書》に周公、周王を戒めて曰く、「小人汝を怨み汝を罟(詈)らば、則ち皇いに自ら德を敬め」と。又た曰く、「啻に敢て怒りを含まざるのみならず」と。又た曰く、「其の心を寬綽にせよ」と。成王、君陳に告げて曰く、「必ず忍ぶこと有りて、其れ乃ち濟すこと有り。容るること有りて、德乃ち大なり」と。 《左傳》宣公十五年に、「諺に曰く、『高下は心に在り、川澤は汙を納れ、山藪は疾を藏し、瑾瑜は瑕を匿す、國君の垢を含むは、天の道なり』」と。昭公元年に、「魯は相忍ぶを以て國を爲むるなり」と。

現代語訳

『易経』損の卦に「君子は怒りを懲らし、欲をふさぐ」とあります。 『書経』で周公は周の王を戒めて言いました。「小人があなたを怨み、あなたを罵るなら、大いに自らの徳を慎みなさい」。また「怒りを胸に含むことさえしないのだ」とも、「心をゆったり広く持ちなさい」とも言いました。成王は君陳(周の臣)に告げて言いました。「必ず忍ぶことがあってこそ成し遂げられる。包み容れることがあってこそ、徳は大きくなる」。 『春秋左氏伝』宣公十五年には「ことわざに『高い低いは心しだい。川や沢は汚れを受け入れ、山や藪は害あるものを隠し、美しい玉も傷を秘める。国君が恥を含み忍ぶのは天の道である』とある」と記されます。昭公元年には「魯は互いに忍び合うことで国を治めている」とあります。

解説

総論の最初の段で、『易経』『書経』『春秋左氏伝』から忍にかかわる言葉を並べています。損の卦の「忿を懲らし欲を窒ぐ」は、減らすべきは怒りと欲だという教えです。周公の言葉は、自分を怨み罵る者がいるときこそ自分の徳を慎めというもので、相手を正すより先に自分を整える順序を示します。『左伝』の諺は、川や沢が汚れを受け入れるように、上に立つ者は恥や欠点を含み容れるものだと言います。忍がここでは個人の我慢ではなく、国を治める度量として語られている点が目を引きます。組織を預かる人ほど、小さな不満を呑み込む広さが求められるということでしょう。
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