甲陽軍鑑 / 品第四十七
又典厩信繁を以て寺川·赤口關が出入の塲にゐたる侍衆に、なにとて兩人の仕形をとりあつかはぬぞと仰出さるれば當番の面々畏て候、赤口關·寺川が樣子、町人か或は七八歲のわらはべなどのごとくに仕候間少しも大事是有まじきと存候故、取あつかひ申さず候と銘々口をそろへ申上る、
新字:又典厩信繁を以て寺川·赤口関が出入の塲にゐたる侍衆に、なにとて両人の仕形をとりあつかはぬぞと仰出さるれば当番の面々畏て候、赤口関·寺川が様子、町人か或は七八歳のわらはべなどのごとくに仕候間少しも大事是有まじきと存候故、取あつかひ申さず候と銘々口をそろへ申上る、
書き下し
又典厩信繁を以て寺川·赤口関が出入の塲にゐたる侍衆に、なにとて両人の仕形をとりあつかはぬぞと仰出さるれば当番の面々畏て候、赤口関·寺川が様子、町人か或は七八歳のわらはべなどのごとくに仕候間少しも大事是有まじきと存候故、取あつかひ申さず候と銘々口をそろへ申上る、
現代語訳
また典厩信繁をもって、寺川・赤口関の出入りの場にいた侍衆に、どうして両人の仕形を取り扱わなかったのかと仰せ出だされれば、当番の面々が畏まって候。赤口関・寺川の様子は、町人か、あるいは七八歳の童べなどのごとくにいたし候あいだ、少しも大事はこれあるまじきと存じ候ゆえに、取り扱い申さず候と、銘々が口を揃えて申し上げる。
解説
なぜ止めなかったのかと問われ、居合わせた者は口を揃えて、あれは町人か子どもの喧嘩のようだったから止めるまでもないと思ったと答える。仲裁しなかった理由が、そのまま二人への評になっている。仲裁しなかった理由が、そのまま二人への評になっている。止めるまでもないと見られたこと自体が、当人たちにとっては重い判定であった。
この章句が説くこと
仲裁当番評喧嘩典厩見切り
関連する章句
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『甲陽軍鑑』品第四十七さるに付て典厩信繁·原美濃守·山本勘介此事始め終り言上也、信玄公きこしめし、寺川·赤口関何れもとしこばい、宿老にて男子道いまだ若きなりと見ゆる侍が、侍にいであふて伐つく事有べきに、さはなくして暫くおし付て罷有は、人にとりさへられたきとある事に相似たり、又押付らるゝ侍も武士が胸へ手をかけられかこると、一度にはや脇ざしをぬきつく所にてはなきか、
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『甲陽軍鑑』品第四十七さて両方ひいきの輩、赤口関左衛門寺川四郎右衛門におし付られたる間寺川手抦と云ふ、赤口関左衛門方は機を取失ふほど寺川をふみたふしたる、是は赤口関左衛門利口なるといふもあり、僉議まち〳〵の事なれば、目付の人廿人頭、横目の小人頭其日に聞付候、惣別信玄公御仕置に善悪の事、何事においても三日に一度書立を以て言上いたせとある目付衆へ御仕置故御耳に立、其座にある侍衆めしよせられ、双方の仕形をきこしめすに、何れの口も両方共に少しも脇指心なし、諸人きこつたへの批判にも、わきざしの心なしとあり、
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『甲陽軍鑑』品第四十七是身際論ともいはれぬ事、子細は手を手と取あふ程にての勝負也、又手と手を取あふても喧嘩とは申されず候、みぎはへ互による程にて脇指心なき故也、わきざし心なきは一向のわらはべなどのいさかひといふ物也、抑々男が四十·五十にあまり赤口関左衛門·寺川四郎右衛門などゝ官途·受領まで仕る侍が、いさかひなどあるは他国の批判もいかゞ、きはめては信玄が家の瑕になる事なりとて、
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『甲陽軍鑑』品第四十七然れば原美濃守·山本勘介両人を以て右の赤口関左衛門·寺川四郎右衛門両人に御尋候、さすがの侍共なるが、暫く取あふて両方に脇指の勝負なきは如何と尋ね給此両人其はづしも、さこそは申度存る事は有べけれ共、撿使原美濃守·山本勘介也、又右出入の座にゐる衆、武田の家に伝る侍、或ひは近国·他国の先方衆·牢人衆つばをならす人々の寄合なれば、赤口関·寺川作り事もならず、
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『甲陽軍鑑』品第四十七其由来は関東牢人に赤口関左衛門、上方牢人寺川四郎右衛門と申仁、両人の侍口がらかひいたし、旣に彼雑言に付て寺川四郎右衛門座を起て赤口関左衛門がむなづくしをとりて後ろのかべにおしつくる、赤口関左衛門おしたふされて、おきあがると雖も、寺川四郎右衛門其比四十余りの盛り、赤口関は五十六七の者なれば、おしつけられておくる事ならず、仰のきに成てゐながら赤口関左衛門が両方の足を以て寺川四郎右衛門が、ひはらをあらけなく踏ければ、寺川心に覚へず手をはなして三間斗跡へしさりて、色をわろくして機を取失ふ子細は、いきぶくろをふまれての事也、
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『甲陽軍鑑』品第四十七四奉行腹立ち給ふ様に候へ共、三人は遠慮して其挨拶もなし、其中に小身にて候へ共桜井殿は、ちかき御親類の事なれば、いひかね之給ふ色もなく腹をたて御申し候は、曲淵殿は近来勿体なき事を承り候物かな、上義をかろしめ申すにこそ、さやうのさたもあるべきに、是程御法度つよき文·武二道のほまれ、誠に近国·他国までゆかしくまします御大将のしたにて、さやうのうしろぐろき事を仕るべく候や、重ねて公事をなされ候はゞ理屈を持ち参り候へ、無理なる事に候はゞ金銀·米銭を、たとへば車につみ持ち来り候とも、其方まけたるべしと御申し候へば、