鬼谷子 / 内揵篇
君臣上下之事、有逺而親、近而疏、就之不用、去之反求、日進前而不御、遙聞聲而相思。事皆有內揵、素結夲始。或結以道徳、或結以黨友、或結以財貨、貨結以采色。
新字:君臣上下之事、有遠而親、近而疏、就之不用、去之反求、日進前而不御、遥聞声而相思。事皆有内揵、素結本始。或結以道徳、或結以党友、或結以財貨、貨結以采色。
書き下し
君臣上下の事、逺くして親しき有り、近くして疏き有り。之に就くも用いられず、之を去るも反って求めらる。日々前に進むも御いられず、遙かに聲を聞きて相い思う。事は皆な内揵有り、素より夲始を結ぶ。或いは結ぶに道徳を以てし、或いは結ぶに黨友を以てし、或いは結ぶに財貨を以てし、貨結ぶに采色を以てす。
現代語訳
君臣上下のあいだには、遠く離れているのに親しい場合があり、近くにいるのに疎い場合がある。近づいて仕えても用いられない場合があり、去っていったのに逆に求められる場合がある。毎日目の前に出ていても用いられず、遠く声を聞くだけで互いに思い合う場合もある。物事にはみな内側で結ばれる楔があり、もとから根本のところで結ばれている。ある場合は道徳によって結ばれ、ある場合は仲間や友によって結ばれ、ある場合は財貨によって結ばれ、財貨は色事によって結ばれる。
解説
距離と親しさが一致しない、という観察から始まります。毎日顔を合わせているのに用いられず、去ったのに呼び戻される。理由は物理的な近さではなく、内側で何によって結ばれているかだ、と。そして結びつきの種類が四つ挙げられます。道徳、仲間、財貨、色事。並びが率直で、きれいごとになっていません。組織で誰が誰に近いかを読むとき、席の距離や面談の頻度で測ると外します。何によって結ばれているかを見るほうが正確で、その四つは今も変わりません。
この章句が説くこと
遠くして親しく近くして疏し内揵素より本始を結ぶ人間関係信頼洞察
関連する章句
-
『鬼谷子』謀篇故に情を同じくして相い親しむ者は、其れ俱に成る者なり。欲を同じくして相い疏んずる者は、其れ偏に害する者なり。惡むを同じくして相い親しむ者は、其れ俱に害する者なり。惡むを同じくして相い疏んずる者は、偏に害する者なり。故に相い益すれば則ち親しみ、相い損すれば則ち疏んず。其の數行わるるなり。此れ異同の分を察する所以なり。
-
孟子・離婁章句上孟子曰く、「下位に居りて、上に獲られざれば、民得て治む可からざるなり。上に獲らるるに道有り。友に信ぜられずんば、上に獲られず。友に信ぜらるるに道有り。親に事えて悅ばれずんば、友に信ぜられず。親に悅ばるるに道有り。身に反して誠ならずんば、親に悅ばれず。身を誠にするに道有り。善に明らかならずんば、其の身に誠ならず。是の故に誠は、天の道なり。誠を思うは、人の道なり。至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなり。誠ならずして、未だ能く動かす者有らざるなり。」
-
葉隠・聞書第十一諸人(しょにん)主君に思い附(つ)き、諸朋輩(しょほうばい)思い合うこと肝要(かんよう)なり。斯様(かよう)に仕(し)なす樣(よう)これあるなり。たとえ、御主人朋輩の内に惡(あ)しき事ありとも、それに理を附けて褒めて置くまでなり。斯様々々(かようかよう)に宜(よろ)しからざることありと聞きては、その儘(まま)隔たるものなり。人の心はやさしきものなる故(ゆえ)、移り易(やす)きものなり。よき事ありと聞きては、その儘思い附くものなり。諸人主君に思い附き、諸朋輩思い合う様にするは、及ばざる事の様なれども、一人の力にて確かになるものなりと。
-
尚書・盤庚上人は惟れ旧きを求め、器は旧きを求むるに非ず、惟れ新しきを求む。
-
論語・為政篇子曰く、君子は周して比せず、小人は比して周せず。
-
菜根譚・前集欺詐の人に遇わば、誠心を以て之を感動す。暴戻の人に遇わば、和気を以て之を薫蒸す。傾邪私曲の人に遇わば、名義気節を以て之を激礪す。天下の人、我が陶冶の中に入らざるは無からん。