韓非子 / 孤憤第十一
其可以罪過誣者,以公法而誅之;其不可被以罪過者,以私劒而窮之。是明法術而逆主上者,不僇於吏誅,必死於私劒矣。朋黨比周以弊主,言曲以便私者,必信於重人矣。故其可以功伐借者,以官爵貴之;
新字:其可以罪過誣者,以公法而誅之;其不可被以罪過者,以私劒而窮之。是明法術而逆主上者,不僇於吏誅,必死於私劒矣。朋党比周以弊主,言曲以便私者,必信於重人矣。故其可以功伐借者,以官爵貴之;
書き下し
其の罪過を以て誣(し)ふ可き者は、公法を以て之を誅し、其の罪過を以て被らしむ可からざる者は、私劒を以て之を窮む。是れ法術に明らかにして主上に逆らふ者は、吏誅に僇(りく)せられずんば、必ず私劒に死せん。朋黨比周して以て主を弊(おお)ひ、言を曲げて以て私を便にする者は、必ず重人に信ぜられん。故に其の功伐を以て借る可き者は、官爵を以て之を貴くす。
現代語訳
罪を着せられる相手なら公式の法によって処罰し、罪を着せられない相手なら私的な刺客を用いて追い詰める。つまり法と術に通じていながら上に逆らう者は、役人の手で処刑されないとしても、必ず刺客の刃に倒れる。逆に、徒党を組んで君主の目をふさぎ、言葉を曲げて私利を図る者は、必ず権臣に信用される。だから権臣は、功績を口実にできる者には官位や爵位を与えて高く取り立てる。
解説
邪魔になる人物に罪を着せられる場合は表向きの決まりを使って処罰し、罪を着せられない場合は裏の手を使ってでも追い詰める、という話です。権力を握る者が目障りな相手を排除しようとするとき、まず勤め先の決まり違反や成績不振など、誰もが納得できる理由を探します。それが見つからなければ、嫌がらせや仲間はずれ、根も葉もない噂を流すといった、表には出ない手段を使ってでも、その人を辞めさせたり、居場所をなくさせたりしようとします。これは会社の中だけでなく、学校や地域の集まりでも見られることです。表向きは筋の通った理由に見えても、実は誰かを追い出すための後付けの言い訳にすぎない場合があります。この章句は、そうした裏の力の動きを見抜く目を持ちなさいという戒めでもあります。
この章句が説くこと
排除の論理左遷パワハラ既得権益報復人事
関連する章句
-
史記 韓信盧綰列伝韓王信は、故の韓の襄王の孽孫なり。長八尺五寸。項梁の楚の後の懐王を立つるに及び、燕・斉・趙・魏は皆已に前に王たり、唯だ韓のみ後有ること無し。故に韓の諸公子横陽君成を立てて韓王と為し、以て韓の故地を撫定せんと欲す。項梁定陶に敗死し、成は懐王に奔る。沛公兵を引ゐて陽城を撃ち、張良をして韓の司徒を以て韓の故地を降下せしめ、信を得て、以て韓の将と為し、其の兵を将ゐて沛公に従ひ武関に入る。沛公立ちて漢王と為るや、韓信従ひて漢中に入り、乃ち漢王に説きて曰く、「項王は諸将を近地に王とし、而して王独り遠く此に居る、此れ左遷なり。士卒は皆山東の人にして、跂ちて帰らんことを望む。其の鋒の東に郷ふに及ばば、以て天下を争ふべし」と。漢王還りて三秦を定め、乃ち信を許して韓王と為し、先づ信を拝して韓の太尉と為し、兵を将ゐて韓の地を略せしむ。項籍の諸王を封ずるや皆国に就くも、韓王成は従はずして功無きを以て、遣はして国に就かしめず、更めて以て列侯と為す。漢の韓信を遣はして韓の地を略せしむと聞くに及び、乃ち故の項籍の呉に游びし時の呉の令鄭昌をして韓王と為し以て漢を距がしむ。漢の二年、韓信韓の十余城を略定す。漢王河南に至り、韓信急に韓王昌を陽城に撃つ。昌降る。漢王乃ち韓信を立てて韓王と為し、常に韓の兵を将ゐて従ふ。三年、漢王滎陽を出で、韓王信・周苛等滎陽を守る。楚の滎陽を敗るに及び、信楚に降り、已にして亡ぐるを得て、復た漢に帰す。漢復た立てて以て韓王と為し、竟に従ひて項籍を撃破し、天下定まる。五年の春、遂に与に符を剖きて韓王と為し、潁川に王たらしむ。
-
『韓非子』和氏第十三然り而して呉起を枝解して商君を車裂する者は何ぞや。大臣は法に苦しみて、細民は治を悪めばなり。
-
『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖公、大名府に鎮す。北使、道に之に由る。公に謂いて曰く、相公の望重し。何を以て中書に在らざるやと。公曰く、皇上、朝廷無事なるを以てす。北門の鏁鑰、凖に非ざれば不可なりと。
-
『宋名臣言行録』前集巻九・王禹偁出でて黄州を知る。三黜賦を作りて以て志を見す。卒章に曰く、身に屈すれども道に屈せず。百謫すと雖も其れ何ぞ虧けん。吾れ當に正直を守りて仁義を佩ぶべし。惟だ終身にして之を行わんと。
-
『韓非子』用人第二十七儀的を釋てて妄に發すれば、中ると雖も小にして巧みならず。法制を釋てて妄に怒れば、殺戮すと雖も姦人恐れず。
-
『驢鞍橋』卷下或人語て曰く、この前、師、予に示して曰く、人は只かしの木が好いぞよ、藤かづらは用にたゝず。紀州に某と云ふ强者あり、国中に聞えたる人切にて、内の者どもに手も見せす、少しの事も許さす切るなり。此人、一日我所に来り、某はかくれなき人切也。是れ悪業とや成るへきと云ふ。我聞て、中々業となるべからす、定めて其方無理には殺しめされまい。盗するか、慮外するか、兎角咎なくては殺しめされまいと云ひけれは、彼の人中々其通也と云ふ。我良有りて、但し傍輩の中又余所の者には、其方機に合はぬ慮外者抔なしや。答て曰く、有る也。我それをも殺しめさるゝやと云へは、彼の人然らすと云ふ。その時、我扨て扨て鄙怯千万なる人哉、人切ならは、なせ夫れをきりめされんず。他人の慮外者はきりえすして、内の者ともの主とて、たつはいしはい廻る者とも、少しのことに切る様なる鄙怯なることあらんやと、强くはぢしめければ、彼の人ひしとうけ、一腰をぬき金を打て、其後は終に人をきらず。樫の木はをれ端各別也。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る