韓非子 / 有度第六
故以法治國,舉措而已矣。法不阿貴,繩不撓曲。
新字:故以法治国,舉措而已矣。法不阿貴,縄不撓曲。
書き下し
法は貴に阿らず、縄は曲れるに撓まず。
現代語訳
法(ルール)は、地位の高い者(貴)にも忖度せず、墨縄が曲がった木を決して許容しないように、厳格であるべきだ。
解説
決まりは、地位の高い者に対してもへつらわず、大工の使う墨縄が曲がった木を決して見逃さないのと同じように、誰に対しても厳しく当てはめられるべきだという教えです。もし「あの人は幹部だから」「あの人は成績がいちばんだから」という理由で決まりを曲げてしまえば、その人だけが特別扱いされる聖域ができてしまい、周りの人は決まりを軽く見るようになります。これは会社に限った話ではなく、家庭でも、上の子だけ甘やかして下の子には厳しくするようなことが続けば、子どもたちは公平さを信じられなくなります。地域の集まりでも、古株や声の大きい人だけが決まりを免れるようであれば、その集まりの秩序は長続きしません。誰であっても同じ物差しで測るという姿勢こそが、決まりそのものへの信頼を守るのです。
この章句が説くこと
公平性コンプライアンス聖域なき適用法の下の平等規律
関連する章句
-
『韓非子』詭使第四十五法令は治を為す所以なり。而るに法令に従わず、私善を為す者を、世之を忠と謂う。
-
『十七条憲法』第五条五に曰わく、餮(むさぼり)を絶ち欲(ほしみ)を棄(す)てて、明(あきらか)に訴訟(うたえ)を弁(わきま)えよ。其れ百姓(ひゃくせい)の訟(うたえ)、一日に千件(ちくだり)なり。一日尚(なお)爾(しか)るを、況(いわん)や歳(とし)を累(かさ)ねんをや。頃(このごろ)、訟を治むる者、常(つね)に利を心と為(し)、財(たから)を受けて察(ことわり)を行(おこな)う。便(すなわ)ち財有る人の訟は、石を水に投ぐるが如(ごと)く、貧しき者の訴は、水を石に投ぐるに似たり。是(ここ)を以て貧しき民は、則(すなわ)ち由(よ)る所を知らず。臣の道も亦(また)焉(ここ)に闕(か)けぬ。
-
『韓非子』大體第二十九縄の外に引かず、縄の内に推さず、法の外に急にせず、法の内に緩くせず。
-
『韓非子』六反第四十六故に法の道為る、前に苦しみて長く利あり。仁の道為る、偷楽しみて後窮す。聖人は其の輕重を權りて、す出づ。故に法の相忍ぶを用いて、仁人の相憐むを棄つるなり。
-
『韓非子』飭令第五十三刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者來たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
-
『韓非子』難三第三十八桓公能く管仲の功を用いて、鉤を射るの怨みを忘る。文公能く寺人の言を聴きて、祛を斬るの罪を棄つ。... 是れ臣讎するに、而も明燭すこと能わず、多く之に資を假すに、自ら以て賢と為して戒めず。