韓非子 / 詭使第四十五
法令者所以為治也。而従法令、為私善、世謂之忠。
書き下し
法令は治を為す所以なり。而るに法令に従わず、私善を為す者を、世之を忠と謂う。
現代語訳
法令は国を治めるためのものである。しかし、法令に従わず個人的な温情を行う者を、世間は『忠臣だ』と褒める。
解説
決まりごとは、世の中をきちんと治めるために定められたものである。ところが、その決まりに従わずに自分の思う情け深い行いをする者を、世間はかえって『忠義者だ』と褒めそやしてしまう、と韓非は指摘します。会社の規則よりも個人的な温情や、良かれと思っての判断の方が持ち上げられる風土は、一見美談に見えても、実はきちんとした治め方を内側から崩していきます。たとえば親が決めた家庭内の約束事を、祖父母が『可哀想だから』とこっそり破らせてしまうようなことが続けば、家の中の筋道は保てなくなります。情け深さよりも、決めたことを誰に対しても同じように貫く姿勢こそが、本当の公平さを守るのです。
この章句が説くこと
公平性コンプライアンスルール法治主義情実
関連する章句
-
『韓非子』飾邪第十九故に曰く、「法を明らかにする者は強く、法を慢にする者は弱し。」
-
『韓非子』愛臣第四明君の其の臣を蓄うや、之を盡くすに法を以てし、之を質すに備えを以てす。
-
『韓非子』詭使第四十五夫れ法令を立つるは、私を廢する所以なり。法令行われて私道廢す。
-
『韓非子』南面第十八三者は、主を惽くらまし法を壊るの資なり。人主、人臣をして、智能有りと雖も、法に背きて専制するを得ず、賢行有りと雖も、功を踰えて先だちて労するを得ず、忠信有りと雖も、法を釈てて禁ぜざるを得ざらしむ。此れを之れ明法と謂う。
-
『韓非子』有度第六法は貴に阿らず、縄は曲れるに撓まず。
-
『韓非子』六反第四十六聖人の治や、法禁を審らかにす。法禁明著なれば則ち官法あり。賞罰を必す。賞罰阿らざれば則ち民用いらる。民用いられ官治まれば則ち國富む。國富めば則ち兵強くして、而して霸王の業成る。