韓非子 / 五蠹第四十九
鄙諺曰、「長袖善舞、多錢善賈。」此言多資之易為工也。
新字:鄙諺曰、「長袖善舞、多銭善賈。」此言多資之易為工也。
書き下し
鄙諺に曰く、「長袖は善く舞い、多錢は善く買う。」此れ多資の工を為し易きを言うなり。
現代語訳
資源が多ければ仕事を成し遂げやすいということだ。
解説
「袖の長い者は舞いやすく、元手の多い者は商いをしやすい」ということわざを引いて、道具や元手が多ければ物事は成し遂げやすいという当たり前の事実を述べています。気合いや精神論だけでは仕事は進みません。人を動かす立場にある人は、まず人手や資金、道具や情報といった「持ち駒」をどれだけ用意できるかを考える必要があります。これは会社の経営者に限った話ではなく、家庭を切り盛りする親や、行事を取り仕切る町内会の世話役にも当てはまります。子育てでも、気持ちだけでなく時間やお金にいくらか余裕があれば、落ち着いて子どもに向き合うことができます。まず土台となる備えを整え、その上で工夫を凝らすこと。それこそが物事を成し遂げる確かな近道だと、韓非は説いているのです。
この章句が説くこと
リソース経営資源選択と集中資金力スケールメリット
関連する章句
-
尚書・旅獒無益を作して有益を害せざれば、功乃ち成る。異物を貴んで用物を賤しめざれば、民乃ち足る。
-
史記 孫子呉起列伝斉の使者、梁に如く。孫臏、刑徒を以て陰かに見え、斉の使に説く。斉の使、以て奇と為し、窃かに載せて之と斉に之く。斉の将田忌、善として之を客待す。忌、数々斉の諸公子と馳逐して重射す。孫子、其の馬足の甚だしくは相ひ遠からず、馬に上・中・下の輩有るを見る。是に於いて孫子、田忌に謂ひて曰く、「君弟だ重射せよ。臣能く君をして勝たしめん」と。田忌、信じて之を然りとし、王及び諸公子と千金を逐射す。質に臨むに及び、孫子曰く、「今、君の下駟を以て彼の上駟に与し、君の上駟を取りて彼の中駟に与し、君の中駟を取りて彼の下駟に与せよ」と。既に馳すること三輩して畢り、田忌一たび勝たずして再び勝ち、卒に王の千金を得たり。是に於いて忌、孫子を威王に進む。威王、兵法を問ひ、遂に以て師と為す。
-
老子・第59章人を治め天に事うるは、嗇に若くは莫し。夫れ唯だ嗇、是を早服と謂う。早服は之を重ねて徳を積むと謂う。重ねて徳を積めば則ち克たざる無く、克たざる無ければ則ち其の極を知る莫し。其の極を知る莫ければ、以て国を有つべし。国を有つの母は、以て長久なるべし。是を根を深くし柢を固くし、長生久視の道と謂う。
-
呂氏春秋・博志②冬と夏とは兩つながら刑ること能わず、草と稼とは兩つながら成ること能わず、新穀熟して陳穀虧き、凡そ角有る者には上齒無く、果實繁き者は木必ず庳く、智を用うること褊なる者の功を遂ぐる無きは、天の數なり。故に天子は全きに處らず、極まるに處らず、盈つるに處らず。全ければ則ち必ず缺け、極まれば則ち必ず反り、盈つれば則ち必ず虧く。先王は物の兩つながら大なる可からざるを知る。故に務の當たれるを擇びて之に處す。
-
孟子・盡心章句上孟子曰く、「知者は知らざること無きなり。當に務むべきを之れ急と為す。仁者は愛せざること無きなり。賢を親しむを急にするを之れ務と為す。堯舜の知にして物に遍からざるは、先務を急にすればなり。堯舜の仁にして人を愛するに遍らざるは、賢を親しむを急にすればなり。三年の喪を能くせずして、緦(シ)・小功を之れ察し、放飯・流歠(セツ)して、齒決すること無きを問う、是を之れ務めを知らずと謂う。」
-
史記 呂不韋列伝呂不韋曰く、「秦王老いたり、安国君太子と為るを得。竊かに聞く、安国君華陽夫人を愛幸し、華陽夫人子無し、能く適嗣を立つる者は独り華陽夫人のみ、と。今子は兄弟二十余人、子又中に居り、甚だしくは幸せられず、久しく諸侯に質たり。即し大王薨じ、安国君立ちて王と為らば、則ち子長子と太子為るを争ふを幾(こひねが)ふを得る毋からん」と。子楚曰く、「然り、之を為すこと柰何」と。呂不韋曰く、「子貧しく、以て親に奉献し及び賓客に結ぶ有るに非ず。不韋貧しと雖も、請ふ千金を以て子の為に西游し、安国君及び華陽夫人に事へ、子を立てて適嗣と為さん」と。子楚乃ち頓首して曰く、「必ず君の策の如くば、請ふ秦国を分かちて君と共にするを得ん」と。