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史記 / 孫子呉起列伝

齊使者如梁、孫臏以刑徒陰見、說齊使。齊使以為奇、竊載與之齊。齊將田忌善而客待之。忌數與齊諸公子馳逐重射。孫子見其馬足不甚相遠、馬有上中下輩。於是孫子謂田忌曰、君弟重射、臣能令君勝。田忌信然之、與王及諸公子逐射千金。及臨質、孫子曰、今以君之下駟與彼上駟、取君上駟與彼中駟、取君中駟與彼下駟。既馳三輩畢、而田忌一不勝而再勝、卒得王千金。於是忌進孫子於威王。威王問兵法、遂以為師。

新字:斉使者如梁、孫臏以刑徒陰見、説斉使。斉使以為奇、竊載与之斉。斉将田忌善而客待之。忌数与斉諸公子馳逐重射。孫子見其馬足不甚相遠、馬有上中下輩。於是孫子謂田忌曰、君弟重射、臣能令君勝。田忌信然之、与王及諸公子逐射千金。及臨質、孫子曰、今以君之下駟与彼上駟、取君上駟与彼中駟、取君中駟与彼下駟。既馳三輩畢、而田忌一不勝而再勝、卒得王千金。於是忌進孫子於威王。威王問兵法、遂以為師。

書き下し

斉の使者、梁に如く。孫臏、刑徒を以て陰かに見え、斉の使に説く。斉の使、以て奇と為し、窃かに載せて之と斉に之く。斉の将田忌、善として之を客待す。忌、数々斉の諸公子と馳逐して重射す。孫子、其の馬足の甚だしくは相ひ遠からず、馬に上・中・下の輩有るを見る。是に於いて孫子、田忌に謂ひて曰く、「君弟だ重射せよ。臣能く君をして勝たしめん」と。田忌、信じて之を然りとし、王及び諸公子と千金を逐射す。質に臨むに及び、孫子曰く、「今、君の下駟を以て彼の上駟に与し、君の上駟を取りて彼の中駟に与し、君の中駟を取りて彼の下駟に与せよ」と。既に馳すること三輩して畢り、田忌一たび勝たずして再び勝ち、卒に王の千金を得たり。是に於いて忌、孫子を威王に進む。威王、兵法を問ひ、遂に以て師と為す。

現代語訳

斉の使者が梁(魏の都)に来たとき、孫臏は罪人の身のままひそかに面会し、斉の使者を説き伏せた。使者は彼を非凡と見抜き、こっそり車に乗せて斉へ連れ帰った。斉の将軍・田忌は孫臏を気に入り、客としてもてなした。田忌はよく斉の公子たちと競馬をして大金を賭けていた。孫臏は、両者の馬の足はさほど差がなく、馬に上・中・下の三ランクがあることを見て取った。そこで孫臏は田忌に言った。「思い切って大金を賭けなさい。あなたを勝たせてみせます」。田忌は信じて、王や公子たちと千金を賭けた。勝負の直前、孫臏は言った。「あなたの下等の馬を相手の上等の馬にぶつけ、あなたの上等の馬を相手の中等に、あなたの中等の馬を相手の下等にぶつけなさい」。三番勝負が終わると、田忌は一敗二勝で、ついに王から千金を得た。そこで田忌は孫臏を威王に推挙した。威王は兵法を問い、ついに彼を軍師とした。

解説

個々の戦力が互角でも、「どこに何をぶつけるか」の配分次第で全体の勝敗は変えられる――資源配分の戦略を鮮やかに示した、有名な「田忌の競馬」です。孫臏は、勝てない下等馬を相手の最強馬に「捨て駒」として当て、確実に勝てる組み合わせを二つ作ることで、全体では二勝一敗を確定させました。要点は、すべての勝負に勝とうとしないことです。負ける戦い(最弱を最強にぶつける)をあえて選び、そこで消耗を最小化して、勝てる戦いに戦力を集中する。経営でも、限られた人材・資金・時間をどの市場・案件に配分するかが成否を分けます。全方位で戦って共倒れするより、勝てない領域は最小の力で捨て、勝てる領域に主力を投入する。同じ手駒でも、配置を変えるだけで結果が逆転する。まさに戦略とは「選択と集中、そして捨てる勇気」だと教える一段です。

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