韓非子 / 定法第四十三
以一國耳聽,故聽莫聰焉。今知而弗言,則人主尚安假借矣?
新字:以一国耳聴,故聴莫聰焉。今知而弗言,則人主尚安仮借矣?
書き下し
今知りて言わずんば、則ち人主尚ほ安にか假借せん。
現代語訳
今、知っていて言わないのであれば、君主はどこから情報を得て頼りとすればよいのか。
解説
国じゅうの人の耳をすべて自分の耳として使ってこそ、物事をよく聞き分けることができる。もし何かに気づいていながら、自分の担当ではないからと黙って知らせないのであれば、上に立つ者は一体どこから頼りになる情報を得ればよいのか、と韓非は問います。これは、自分の持ち場のことだけを見て他の持ち場の問題には口を出さないという考え方の落とし穴を突いたものです。会社でも自治会でも、担当が違うからと気づいた問題を見て見ぬふりする空気が広がれば、まとめ役の耳には都合の良い話しか届かなくなり、いざというときに正しい判断ができなくなります。気づいたことを担当の垣根を越えて伝え合える雰囲気こそが、集まり全体を守るのです。
この章句が説くこと
セクショナリズム報告義務情報の分断組織の風通しサイロ化
関連する章句
-
『韓非子』初見秦第一臣聞く、知らずして言うは不智、知りて言わざるは不忠と。
-
『韓非子』愛臣第四将相の主を營して、家を隆にするは、此れ人に君たる者の外にするなり。
-
『韓非子』外儲説右上第三十四夫れ国にも亦た狗有り。有道の士、其の術を懐きて以て万乗の主に明らかにせんと欲するも、大臣猛狗と為りて迎えて之を齕む。此れ人主の蔽脅せらるる所以にして、有道の士の用いられざる所以なり。
-
老子・第46章天下に道有れば、走馬を却けて以て糞す。天下に道無ければ、戎馬は郊に生ず。禍は足るを知らざるより大なるは莫く、咎は得んと欲するより大なるは莫し。故に足るを知るの足るは、常に足る。
-
『韓非子』愛臣第四諸侯の博大なるは、天子の害なり。群臣の太だ富むは、君主の敗なり。
-
『韓非子』揚權第八一家二貴なれば、事乃ち功無し。夫妻政を持てば、子適從する無し。人君爲る者は、數々其の木を披(ひら)き、木枝をして扶踈ならしむる毋(なか)れ。木枝扶踈なれば、將に公閭を塞がんとし、私門將に實ち、公庭將に虚しく、主將に壅圉(ようぎょ)せられんとす。