韓非子 / 初見秦第一
臣聞、知而不言、是不智、知而不言、是不忠。
書き下し
臣聞く、知らずして言うは不智、知りて言わざるは不忠と。
現代語訳
臣(私)はこう聞いております。「(物事を)知らないで発言するのは愚かなことであり、知っているのに発言しないのは(主君に対して)不忠なことである」と。
解説
「知らずして言うは不智、知りて言わざるは不忠」とは、よく分からないのに知ったかぶりで発言すれば愚か者と見なされ、逆によく知っているのに黙って何も言わなければ、仕えている相手への裏切りに等しいという教えです。家庭でも近所付き合いでも、これは変わりません。例えば子供の様子で気になる点に気づいていながら、角が立つのを恐れて配偶者に伝えずにいれば、後で大きな困り事になったときに「なぜ黙っていたのか」と責められます。会社でも、危ない兆しに気づいた人が黙っていれば、傷は広がるばかりです。逆に、よく調べもせず思い付きだけで意見を言うのも困りもの。分かっていることは勇気を持って伝え、分からないことは軽々しく口にしない。当たり前だけれど難しい、この姿勢を保つことが大切です。
この章句が説くこと
報告義務心理的安全性発言責任情報共有透明性
関連する章句
-
論語・述而篇子曰わく、二三子、我を以て隠すと為すか。我は爾に隠すこと無し。行いて二三子と与せざること無し。是れ丘なり。
-
『韓非子』定法第四十三今知りて言わずんば、則ち人主尚ほ安にか假借せん。
-
『韓非子』南面第十八是くの如き者は之を言に壅がると謂い、言に壅がるる者は臣に制せらる。主道は、人臣をして、必ず言うの責有り、又た言わざるの責有らしむ。言に端末無く弁に験す所無き者は、此れ言うの責なり。言わざるを以て責を避け重位を持する者は、此れ言わざるの責なり。
-
孫子・軍争篇軍政に曰く、言うも相聞こえず、故に金鼓を為る。視るも相見えず、故に旌旗を為る、と。夫れ金鼓旌旗は、民の耳目を一にする所以なり。民既に専一なれば、則ち勇者も独り進むを得ず、怯者も独り退くを得ず。此れ衆を用うるの法なり。
-
十七条憲法 第十三条諸(もろもろ)の官(つかさ)に任(にん)ずる者は、同じく職掌(しょくしょう)を知(し)れ。或(ある)いは病(や)み或いは使(つかい)して、事(こと)に闕(か)くること有(あ)らん。然(しか)れども知ることを得(う)る日(ひ)は、和(あまな)うこと曾(かつ)て識(し)れるが如(ごと)くせよ。与(あず)かり無(な)しと以(もっ)て、公務(こうむ)を妨(さまた)ぐること匪(な)かれ。
-
論語・述而篇子曰わく、君子は坦蕩蕩(たんとうとう)、小人は長戚戚(ちょうせきせき)。