韓非子 / 難二第三十七
夫刑當無多,不當無少。無以不當聞,而以太多說,無術之患也。
新字:夫刑当無多,不当無少。無以不当聞,而以太多説,無術之患也。
書き下し
夫れ刑は当たれば多きこと無く、当たらざれば少なきこと無し。当たらざるを以て聞かずして、太だ多きを以て説くは、術無きの患いなり。
現代語訳
刑罰は妥当であれば多すぎるということはなく、妥当でなければ少なすぎるということもない。妥当かどうかを問わずに、多すぎるという理由で論じるのは、術が無いことの弊害である。
解説
刑罰の多寡を論じること自体を退けている。問うべきは量ではなく妥当性だ、と。妥当なら何件あってもよいし、妥当でなければ一件でも多い。基準を量から質へ移している。この論法は、組織の議論でそのまま使える。処分が多すぎる、会議が多すぎる、規則が多すぎる。どれもよく聞く批判だが、量だけを問題にすると、妥当なものまで削られる。逆に、量が少なければよいという話にもならない。無術之患也という切り捨て方が鋭い。量で論じるのは、一件ずつの妥当性を判断できないからだ、と言っている。個別に判断する手間を避けて、総量で語る。批判としては通りやすいが、そこで議論が止まれば、質は決して上がらない。
この章句が説くこと
刑罰公平性量と質ルール運用妥当性信賞必罰
関連する章句
-
『韓非子』初見秦第一賞を言うも則ち與えず、罰を言うも則ち行わず、賞罰信ならず、故に士民死せざるなり。
-
『韓非子』大體第二十九縄の外に引かず、縄の内に推さず、法の外に急にせず、法の内に緩くせず。
-
『韓非子』有度第六法を奉ずる者強ければ則ち國強く、法を奉ずる者弱ければ則ち國弱し。
-
『韓非子』內儲說上七術第三十魏の惠王ト皮に謂いて曰く、「子寡人の聲聞を聞く、亦た何如。」...對えて曰く、「臣王の慈惠なるを聞けり。」...王の功亡ぶるに至らん。...夫れ慈とは忍びずして、とは、與うるを好むなり。忍びざれば則ち過ち有るを誅せず、予うるを好めば則ち功有るを待たずして賞す。
-
『韓非子』備內第十七殺しては必ず當り、罪は赦さず、則ち姦邪、其の私を容るる所無し。
-
『韓非子』有度第六過ちを刑するに大臣をも避けず、善を賞するに匹夫をも遺れず。