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十善法語 / 巻第四・不妄語戒

又司馬晉ノ時。羊祐吳ノ陸抗江陵ニ對陣ス。互ニ使命ヲ通シ軍陣ハ日ヲ剋シタタカフ。掩襲ノ計ヲナサス。羊祐吳ノ境ニ入テ穀ヲ刈テ糧ニ用レハ。後絹ヲ贈テツクナフ。陸抗羊祐ニ酒ヲ贈ル。羊祐疑ハス飮ム。陸抗病ノトキ藥ヲ羊祐ニ求ム。羊祐藥ヲ製シテ與フ。陸抗此ヲ服セシト云コトシヤ。此等モ常例ニハナラヌコトナレトモ。一往面白キコトシヤ。

新字:又司馬晋ノ時。羊祐呉ノ陸抗江陵ニ対陣ス。互ニ使命ヲ通シ軍陣ハ日ヲ剋シタタカフ。掩襲ノ計ヲナサス。羊祐呉ノ境ニ入テ穀ヲ刈テ糧ニ用レハ。後絹ヲ贈テツクナフ。陸抗羊祐ニ酒ヲ贈ル。羊祐疑ハス飲ム。陸抗病ノトキ薬ヲ羊祐ニ求ム。羊祐薬ヲ製シテ与フ。陸抗此ヲ服セシト云コトシヤ。此等モ常例ニハナラヌコトナレトモ。一往面白キコトシヤ。

書き下し

又司馬晋ノ時。羊祐吳ノ陸抗江陵ニ対陣ス。互ニ使命ヲ通シ軍陣ハ日ヲ剋シタタカフ。掩襲ノ計ヲナサス。羊祐吳ノ境ニ入テ穀ヲ刈テ糧ニ用レハ。後絹ヲ贈テツクナフ。陸抗羊祐ニ酒ヲ贈ル。羊祐疑ハス飲ム。陸抗病ノトキ薬ヲ羊祐ニ求ム。羊祐薬ヲ製シテ与フ。陸抗此ヲ服セシト云コトシヤ。此等モ常例ニハナラヌコトナレトモ。一往面白キコトシヤ。

現代語訳

また司馬氏の晋の時、羊祐と呉の陸抗が江陵で対陣した。互いに使者を通わせ、戦いは日を決めて戦い、不意打ちの計略をしなかった。羊祐は呉の領内に入って穀物を刈って兵糧に用いると、後で絹を贈って償った。陸抗が羊祐に酒を贈ると、羊祐は疑わずに飲んだ。陸抗が病気の時に薬を羊祐に求めると、羊祐は薬を調合して与え、陸抗はこれを服用したということである。これらも通常の例にはならないことであるが、ひとまず面白いことである。

解説

三国時代の末、晋の羊祐(一般には羊祜と書かれる)と呉の陸抗は、敵同士として国境で対峙しながら、奇襲をせず、刈り取った穀物には絹で償い、贈られた酒を疑わずに飲み、病の相手に薬を送り、相手もそれを服したと伝えられる。慈雲はこれを常に倣うべき例ではないとしつつ、面白い例として挙げる。互いに相手を欺かないという信頼が、敵対する立場の間にさえ成り立ちうることを示している。競合する相手との関係にも守るべき信義がある、と考えさせる話である。
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この章句が説くこと

信義羊祐陸抗敵誠

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