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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

此ニ反對シテ十惡業ヲ上品ニツクレハ地獄ニ墮ス。中品ニ造レハ畜生ニ墮ス。下品ニ造レハ餓鬼ニ墮ス。華嚴經ニ。佛子。此菩薩摩訶薩復作此念。十不善業是地獄畜生餓鬼受生因トアル。此中世智辨聰ノ者ハ。地獄ト云モノ餓鬼ト云モノハ無キコトノ樣ニ思ヒ。オドシコトノ樣ニ思フ。今時法ヲ說者モ多ク人情ニ順シテ說ク故。此地獄餓鬼ト云コトカ淺ハカニ聞ユルシヤ。若人有テ法性緣起ノ不可思議ナルコトヲ實實ニ信スレハ。天眼ヲ以テ見ストモ地獄有シヤ。餓鬼世界モ有シヤ。此地獄緣起甚深。我心ノアリ通シヤ。自性法界清淨妙心ノ中ニ。何故此地獄アルソ。

新字:此ニ反対シテ十悪業ヲ上品ニツクレハ地獄ニ堕ス。中品ニ造レハ畜生ニ堕ス。下品ニ造レハ餓鬼ニ堕ス。華厳経ニ。仏子。此菩薩摩訶薩復作此念。十不善業是地獄畜生餓鬼受生因トアル。此中世智弁聰ノ者ハ。地獄ト云モノ餓鬼ト云モノハ無キコトノ様ニ思ヒ。オドシコトノ様ニ思フ。今時法ヲ説者モ多ク人情ニ順シテ説ク故。此地獄餓鬼ト云コトカ浅ハカニ聞ユルシヤ。若人有テ法性縁起ノ不可思議ナルコトヲ実実ニ信スレハ。天眼ヲ以テ見ストモ地獄有シヤ。餓鬼世界モ有シヤ。此地獄縁起甚深。我心ノアリ通シヤ。自性法界清浄妙心ノ中ニ。何故此地獄アルソ。

書き下し

此ニ反対シテ十悪業ヲ上品ニツクレハ地獄ニ堕ス。中品ニ造レハ畜生ニ堕ス。下品ニ造レハ餓鬼ニ堕ス。華厳経ニ。仏子。此菩薩摩訶薩復作此念。十不善業是地獄畜生餓鬼受生因トアル。此中世智弁聰ノ者ハ。地獄ト云モノ餓鬼ト云モノハ無キコトノ様ニ思ヒ。オドシコトノ様ニ思フ。今時法ヲ説者モ多ク人情ニ順シテ説ク故。此地獄餓鬼ト云コトカ浅ハカニ聞ユルシヤ。若人有テ法性縁起ノ不可思議ナルコトヲ実実ニ信スレハ。天眼ヲ以テ見ストモ地獄有シヤ。餓鬼世界モ有シヤ。此地獄縁起甚深。我心ノアリ通シヤ。自性法界清浄妙心ノ中ニ。何故此地獄アルソ。

現代語訳

これと反対に、十悪業を上品に造れば地獄に落ちる。中品に造れば畜生に落ちる。下品に造れば餓鬼に落ちる。華厳経に、「仏子よ、この菩薩摩訶薩はまたこう念じる。十不善業は地獄・畜生・餓鬼に生を受ける因である」とある。この中で、世の智恵や弁舌にたけた者は、地獄というもの、餓鬼というものは無いことのように思い、脅し事のように思う。今どき法を説く者も多く人情に合わせて説くので、この地獄や餓鬼ということが浅はかに聞こえるのである。もし人が法性の縁起の不可思議であることを本当に信じるならば、天眼で見なくとも地獄はあるのである。餓鬼の世界もあるのである。この地獄の縁起は甚だ深い。わが心のありのままである。自らの本性である法界の清浄な妙なる心の中に、なぜこの地獄があるのか。

解説

十善の果報に対し、十悪を犯す深さに応じて地獄・畜生・餓鬼に落ちると説く段である。尊者は、地獄を子供だましの脅しと考える賢しらな人々や、聴衆に受けるように地獄を語らなくなった当時の説法者を批判する。そのうえで、縁起の不思議を信じるなら地獄はあり、それは自分の心のありようそのものだと言う。清らかな本性の中になぜ地獄が現れるのか、という問いで次の段へ進む。ここでは尊者の説いた宇宙観として、行いが心に結ぶ結果の重さを受け止めたい。

この章句が説くこと

十悪地獄餓鬼畜生縁起因果

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