葉隠 / 聞書第十一
主君より仰付けられ候ものは、その儘にて差上ぐべく候なり。少しの物にて、私ならず御見限り候事有るものとなり。大形に存ずべからざる事なり。
書き下し
主君より仰付けられ候ものは、その儘(まま)にて差上ぐべく候なり。少しの物にて、私(わたくし)ならず御見限(みかぎ)り候事有るものとなり。大形(おおかた)に存ずべからざる事なり。
現代語訳
主君から命じられて用意する物は、命じられたそのままに差し上げるべきである。ほんの些細な物であっても、いい加減に扱えば、自分では思いもよらぬところで主君に見限られることがあるものだ。おろそかに考えてはならないことである。
解説
主君から言いつけられた物は、指示どおりそのまま差し上げよ、些細な物ほどおろそかにするな、と説く一条です。要点は、大きな仕事の失敗より、むしろ「これくらいは」と軽んじた小さな用事にこそ、その人の本質が表れ、信頼を失う落とし穴がある、という洞察です。命じた側は、ほんの些細な物の扱い一つを見て、この者は信用できるかどうかを静かに判断している。だからいい加減に構えてはならない、というのです。現代の仕事でも、大きな案件は誰もが力を入れますが、差がつくのは些事への向き合い方です。頼まれた小さなことを指示どおり丁寧にこなす人が、結局は深く信頼される。小事を軽んじない誠実さの大切さを、主従の関係を通して教える言葉です。
この章句が説くこと
葉隠小事誠実信頼主君油断
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