葉隠 / 聞書第一
起上り人形の様に合點すべきなり。主人も試みに仰付けらる〳〵事あるべし。浪人などして取亂すは沙汰の限りなり。「七轉び八起き」と口附けに申し候由。成富兵庫など七度浪人の由。
新字:起上り人形の様に合点すべきなり。主人も試みに仰付けらる〳〵事あるべし。浪人などして取乱すは沙汰の限りなり。「七転び八起き」と口附けに申し候由。成富兵庫など七度浪人の由。
書き下し
起(お)き上(あ)がり人形(にんぎょう)のように合点(がてん)すべきなり。主人(しゅじん)も試(こころ)みに仰(おお)せ付(つ)けらるることあるべし。浪人(ろうにん)などして取(と)り乱(みだ)すは沙汰(さた)の限(かぎ)りなり。「七転(ななころ)び八起(やお)き」と口(くち)ぐせに申(もう)し候(そうろう)よし。成富兵庫(なりとみひょうご)など七度(しちど)浪人(ろうにん)のよし。
現代語訳
人は起き上がり小法師のように、何度倒れても起き上がる心構えで心得るべきである。主君も、試しに(過酷な)命令を下されることがあるだろう。それで浪人などして取り乱すのは、もってのほかだ。「七転び八起き」と口ぐせに言うという。成富兵庫なども七度浪人したという。
解説
人は起き上がり小法師のように、何度倒れても起き上がる心構えでいよ、と説く一節です。主君はときに試すために過酷な命令を下すこともある。それで浪人の身になって取り乱すのはもってのほかだ、と戒めます。『七転び八起き』を口ぐせにし、成富兵庫のように七度も浪人した例を挙げて、逆境こそ当たり前と受けとめよと言うのです。背景には、失脚や浪人が珍しくなかった武士の現実があります。現代でも、失敗や左遷、再出発はつきものです。倒れること自体より、そのたびに崩れず立ち直れるかどうかが人の値打ちを決める、という励ましとも読めるでしょう。
この章句が説くこと
七転び八起き逆境打たれ強さ再起試練動じない心
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