言志四録 / 南洲手抄
公私在事、又在情。事公而情私者有之。事私而情公者有之。爲政者、宜權衡人情事理輕重處、以用其中於民。
新字:公私在事、又在情。事公而情私者有之。事私而情公者有之。為政者、宜権衡人情事理輕重処、以用其中於民。
書き下し
公私は事に在り、又情に在り。事公にして情私なるもの之有り。事私にして情公なるもの之有り。政を為す者は、宜しく人情事理軽重の処を権衡して、以て其の中を民に用ふべし。
現代語訳
公私の別は、行い(事)にもあり、また心(情)にもある。行いは公的でも心は私的である場合があり、行いは私的でも心は公的である場合がある。政治を行う者は、人情と事理、その軽重をよく秤にかけて、ちょうどよい中庸を民に対して用いるべきである。
解説
公私を「事(行い)」と「情(心)」の二層で見分ける、繊細な一条です。表向き公務でも内心は私利ということがあり、逆に私的な行いでも心は公に発することがある。だから外形だけで公私は決められない。政治を担う者は、人情(心情)と事理(道理)の軽重を天秤にかけ、その時々の「ちょうどよい中庸」を民に施せ、と説きます。西郷が城山で山県有朋の情の書簡を受けつつ死に就いた逸話が評に添えられ、公と私、情と理の切なさが語られます。原則一辺倒でも情実一辺倒でもなく、両者を秤にかけて中を取る——リーダーの成熟した判断を求める一条です。
この章句が説くこと
公私情と事理中庸権衡
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