言志四録 / 南洲手抄
因民義以激之、因民欲以趨之、則民忘其生而致其死。是可以一戰。
新字:因民義以激之、因民欲以趨之、則民忘其生而致其死。是可以一戦。
書き下し
民の義に因つて以て之を激し、民の欲に因つて以て之を趨らさば、則ち民其の生を忘れて其の死を致さん。是れ以て一戦す可し。
現代語訳
民の持つ正義感に訴えて奮い立たせ、民の願う欲求に沿って動かせば、民は自らの命さえ忘れて力を尽くす。こうなって初めて、一戦を交えることができる。
解説
人を本気で動かす原理を、戦いを例に説いた一条です。人は命令や強制では命を懸けません。その人自身が抱く「義(正義感)」に火をつけ、その人自身が求める「欲(願い)」に沿って導いたとき、初めて生死を忘れて力を尽くす、と一斎は言います。外から押しつけるのではなく、相手の内にある動機を引き出すこと。西郷が抄録に選んだのも、幕末の実戦でこの原理を体感したからでしょう。組織で人を動かす立場にある人にとって、モチベーションの根本原理を突いた、普遍性の高い一条です。
この章句が説くこと
動機づけ義と欲リーダーシップ人を動かす