顔氏家訓 / 雜藝
卜筮者、聖人之業也、但近世無復佳師、多不能中。古者、卜以決疑、今人生疑於卜、何者?守道信謀、欲行一事、卜得惡卦、反令(心式)(心式)、此之謂乎!且十中六七、以為上手、粗知大意、又不委曲。凡射奇偶、自然半收、何足賴也。世傳云:「解陰陽者、為鬼所嫉、坎壈貧窮、多不稱泰。」吾觀近古以來、尤精妙者、唯京房、管輅、郭璞耳、皆無官位、多或罹災、此言令人益信。儻值世網嚴密、強負此名、便有詿誤、亦禍源也。
新字:卜筮者、聖人之業也、但近世無復佳師、多不能中。古者、卜以決疑、今人生疑於卜、何者?守道信謀、欲行一事、卜得悪卦、反令(心式)(心式)、此之謂乎!且十中六七、以為上手、粗知大意、又不委曲。凡射奇偶、自然半収、何足頼也。世伝云:「解陰陽者、為鬼所嫉、坎壈貧窮、多不称泰。」吾観近古以来、尤精妙者、唯京房、管輅、郭璞耳、皆無官位、多或罹災、此言令人益信。儻値世網厳密、強負此名、便有詿誤、亦禍源也。
書き下し
卜筮なる者は、聖人の業なり。但だ近世復た佳師無く、多くは中つる能わず。古者、卜は以て疑を決す。今人は疑を卜に生ず。何となれば、道を守り謀を信じ、一事を行わんと欲するに、卜して悪卦を得れば、反って忐忑たらしむ。此れ之を謂うか。且つ十に六七を中つれば、以て上手と為す。粗ぼ大意を知るも、又た委曲ならず。凡そ奇偶を射るは、自然に半ばを収む。何ぞ頼るに足らんや。世に伝えて云う、「陰陽を解する者は、鬼の嫉む所と為り、坎壈貧窮にして、多く泰と称せず」と。吾近古以来を観るに、尤も精妙なる者は、唯だ京房・管輅・郭璞のみ。皆な官位無く、多く或いは災に罹る。此の言人をして益ます信ぜしむ。儻し世網の厳密なるに値い、強いて此の名を負わば、便ち詿誤有り。亦た禍源なり。
現代語訳
占いは聖人の業である。ただ近ごろは優れた師がおらず、多くは的中しない。昔は、占いで疑いを決した。今の人は占いから疑いを生じている。なぜか。道を守り計画を信じて一つのことを行おうとするとき、占って悪い卦が出れば、かえって落ち着かなくなる。これがそのことであろう。しかも十のうち六、七を当てれば上手とされる。おおよその意味は分かっても、細部までは分からない。およそ丁半を当てるのは、自然と半分は当たる。何を頼りにできようか。世に伝えて言う。「陰陽を解する者は鬼神に憎まれ、行き詰まって貧しく、多くは安泰といえない」。私が近ごろの世を見るに、とりわけ精妙だったのは京房・管輅・郭璞だけである。みな官位がなく、多くは災いに遭った。この言葉はますます信じられる。もし法網の厳しい世に当たって、無理にこの名を負えば、そのまま咎めを受ける。これも禍いの源である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『顔氏家訓』雜藝星文風気に及びては、率ね為すを労せず。吾嘗て六壬式を学ぶ。亦た世間の好匠に値い、龍首・金匱・玉軨変・玉暦十許種の書を聚め得たり。討求するも験無く、尋いで亦た悔いて罷む。凡そ陰陽の術は、天地と俱に生ず。亦た吉凶徳刑にして、信ぜざるべからず。但だ聖を去ること既に遠く、世に伝わる術書は、皆な流俗より出づ。言辞鄙浅にして、験少なく妄多し。反支不行するに、竟に以て害に遇い、帰忌寄宿するに、凶終を免れざるが如きに至りては、拘りて忌み多きは、亦た益無きなり。
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伝習録・黄修易録問う、「『易』は、朱子は卜筮を主とし、程の『伝』は理を主とす。何如」と。先生曰く、「卜筮は是れ理なり。理も亦た是れ卜筮なり。天下の理、孰か卜筮より大なる者有らんや。只だ後世、卜筮を将(も)って専ら占卦の上に主として看了るが為に、所以に卜筮を看得ること小芸に似たり。知らず、今の師友の問答、博く学び、審らかに問い、慎みて思い、明らかに辨じ、篤く行うの類は、皆な是れ卜筮なり。卜筮なる者は、狐疑を決するを求め、吾が心を神明にするに過ぎざるのみ。『易』は是れ諸を天に問う。人、疑い有りて、自ら信ずること及ばず。故に『易』を以て天に問う。人心は尚お渉る所有り、惟だ天のみ偽りを容れざるを謂うのみ」と。
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『徂徠先生答問書』卷下一占と申事聖人の書にも有之候得共御信用被成がたく候由被仰下候。是は理学の習弊にて小量に御入候故にて御座候。何事も理窟にて済候事と思召候故、占は不入事に被成候。まづ卜筮は稽疑の道の由相見え候。稽疑とはうたがひをさだむると申事にて御座候。今時世間にて女子わらはべの好見候占は、只行先の吉凶仕合せ不仕合を知り可申為にて、たとひ明日死候事を今日慥に存知候共何の益も無之事に候。古の卜筮は左にては無御座候。たとへば岐路御座候半に、左へ往て吉候半哉、右へ往て能く候半哉と申事、道理見え不申了簡つき不申候時に、卜筮を以て鬼神に問ひ候事に候。是によりて何事もなき時に先達て今年の吉凶を知ると申様なる事は曽て無之事に候。是を稽疑と申候。
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『潜夫論』卜列天地開闢して神民有り、民神業を異にして精気通ず。行に招召有り、命に遭随有り、吉凶の期、天は諶じ難し。聖賢察すと雖も、自ら専らにせず、故に卜筮を立てて、以て神霊に質す。孔子称す、「蓍の徳は円にして神、卦の徳は方にして以て智」と。又曰く、「君子将に行く有らんとするや、問うて已に言う、其の命を受けて向う」と。是を以て禹の皋陶を得、文王の呂尚を取るや、皆兆は其の象を告げ、卜は其の思いを厎し、以て其の吉を成す。夫れ君子は善を聞けば則ち勧楽して進み、悪を聞けば則ち循省して尤を改む、故に安静にして福多し。小人は善を聞けば即ち懾懼して妄りに為す、故に狂躁にして禍多し。是の故に凡そ卜筮とは、蓋し吉凶の情を問う所、興衰の期を言い、人をして身を修め行いを慎み以て福を迎えしむるなり。
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史記 宋微子世家稽疑。択びて卜筮の人を建立す。乃ち卜筮に命ず。雨と曰ひ、済と曰ひ、涕と曰ひ、霧と曰ひ、克と曰ひ、貞と曰ひ、悔と曰ふ、凡そ七。卜は五、占は二を用ひ、衍貣(えんとく)す。時の人を立てて卜筮を為さしめ、三人占はば則ち二人の言に従ふ。女則ち大疑有らば、謀ること女の心に及ぼし、謀ること卿士に及ぼし、謀ること庶人に及ぼし、謀ること卜筮に及ぼせ。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士従ひ、庶民従ふ、是を之れ大同と謂ふ。而の身其れ康彊にして、而の子孫其れ吉に逢はん。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士逆らひ、庶民逆らふも、吉。卿士従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、庶民逆らふも、吉。庶民従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、卿士逆らふも、吉。女則ち従ひ、亀従ひ、筮逆らひ、卿士逆らひ、庶民逆らはば、内に作せば吉、外に作せば凶。亀筮共に人に違はば、静を用ふれば吉、作を用ふれば凶。庶徴。雨と曰ひ、陽と曰ひ、奥と曰ひ、寒と曰ひ、風と曰ひ、時と曰ふ。五者来たりて備はり、各々其の序を以てせば、庶草繁廡す。一極めて備はるも、凶。一極めて亡きも、凶。休徴を曰ふ。粛と曰へば、時雨若(したが)ふ。治と曰へば、時暘若ふ。知と曰へば、時奥若ふ。謀と曰へば、時寒若ふ。聖と曰へば、時風若ふ。咎徴を曰ふ。狂と曰へば、常雨若ふ。僭と曰へば、常暘若ふ。舒と曰へば、常奥若ふ。急と曰へば、常寒若ふ。霧と曰へば、常風若ふ。王の眚(み)るは維れ歳、卿士は維れ月、師尹は維れ日。歳月日時易はること毋くんば、百穀用て成り、治用て明らかに、畯民用て章(あら)はれ、家用て平康なり。日月歳時既に易はらば、百穀用て成らず、治用て昏くして明らかならず、畯民用て微(かく)れ、家用て寧からず。庶民は維れ星、星に風を好むもの有り、星に雨を好むもの有り。日月の行、冬有り夏有り。月の星に従へば、則ち以て風雨あり。五福。一を寿と曰ひ、二を富と曰ひ、三を康寧と曰ひ、四を攸好徳と曰ひ、五を考終命と曰ふ。六極。一を凶短折と曰ひ、二を疾と曰ひ、三を憂と曰ひ、四を貧と曰ひ、五を悪と曰ひ、六を弱と曰ふ」と。
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『潜夫論』卜列聖人は卜筮を甚だ重んず、然れども疑わざるの事は、亦た問わず。祭祀を甚だ敬す、礼に非ざるの祈りは、亦た為さず。故に曰く、聖人は卜筮を煩わさず、鬼神を敬して之を遠ざく、と。夫れ鬼神と人とは気を殊にし務めを異にす、事故有るに非ざれば、何ぞ我に奈せん。故に孔子は楚昭の河を祀らざるを善とし、而して季氏の泰山に旅するを悪む。今俗人は卜筮に策し、而して其の鬼に非ざるを祭る、豈に惑わずや。亦た妄りに姓を五音に伝え、五宅の符第を設くる有り、其の誣いたること甚だし。古は陰陽有り、然る後に五行有り。五帝は右に拠りて行気し、以て人民を生ず。世を載ること遠くして、乃ち姓名敬民有り。名字とは、蓋し眾猥を別ち、此の人を顕す所以のみ、五音を絶ち剛柔を定むるに非ざるなり。今俗人は本祖を推紀する能わず、而して反って声音言語を以て五行を定めんと欲す、誤りは此れより甚だしきは莫し。夫れ魚は水に処りて生じ、鳥は巣に拠りて卵む、即ち其の本祖を推さず音を諧すと為して可ならん。即し鳥を呼びて魚と為さば、之を水に内るべけんや。魚を呼びて鳥と為さば、之を木に棲ましむべけんや。此れ然らざるの事なり。駒に命じて犢と曰うも、終に馬と為らず。是の故に凡そ姓の音有るや、必ず其の本生祖の土とする所に随うなり。太皞は木の精にして、歳を承けて王たり、夫れ其の子孫は鹹な当に角と為るべし。
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