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学問のすゝめ / 七編・国民の職分を論ず・その償金の出ずるところはかならず人民

右の次第をもって、政府たるものは人民の委任を引き受け、その約束に従いて一国の人をして貴賤上下の別なくいずれもその権義を逞しゅうせしめざるべからず、法を正しゅうし罰を厳にして一点の私曲あるべからず。今ここに一群の賊徒来たりて人の家に乱入するとき、政府これを見てこれを制すること能わざれば政府もその賊の徒党と言いて可なり。政府もし国法の趣意を達すること能わずして人民に損亡を蒙らしむることあらば、その高の多少を論ぜずその事の新旧を問わず、必ずこれを償わざるべからず。譬えば役人の不行届きにて国内の人か、または外国人へ損亡をかけ、三万円の償金を払うことあらん。政府にはもとより金のあるべき理なければ、その償金の出ずるところはかならず人民なり。

書き下し

右の次第をもって、政府たるものは人民の委任を引き受け、その約束に従いて一国の人をして貴賤上下の別なくいずれもその権義を逞しゅうせしめざるべからず、法を正しゅうし罰を厳にして一点の私曲あるべからず。今ここに一群の賊徒来たりて人の家に乱入するとき、政府これを見てこれを制すること能わざれば政府もその賊の徒党と言いて可なり。政府もし国法の趣意を達すること能わずして人民に損亡を蒙らしむることあらば、その高の多少を論ぜずその事の新旧を問わず、必ずこれを償わざるべからず。譬えば役人の不行届きにて国内の人か、または外国人へ損亡をかけ、三万円の償金を払うことあらん。政府にはもとより金のあるべき理なければ、その償金の出ずるところはかならず人民なり。

現代語訳

右の次第で、政府たる者は人民の委任を引き受け、その約束に従って一国の人に貴賤上下の別なくいずれもその権利を十分に発揮させねばならず、法を正しくし罰を厳格にして一点の私曲があってはなりません。今ここに一群の賊が来て人の家に乱入するとき、政府がこれを見てこれを制止できなければ、政府もその賊の仲間だと言ってよい。政府がもし国法の趣旨を達することができずに人民に損害を被らせることがあれば、その額の多少を論ぜず、その事の新旧を問わず、必ずこれを償わねばなりません。たとえば役人の不行き届きで国内の人か、または外国人に損害をかけ、三万円の賠償金を払うことがあるとします。政府にはもとより金があるはずがないので、その賠償金の出どころは必ず人民なのです。

解説

主人の側から見ると、政府の失敗の代金は誰が払うのかという話になります。政府に金があるはずがない、という一行が鋭い。賠償金の出どころは必ず人民です。だから政府の不始末は他人事ではない、という理屈で、当事者意識を財布の側から立ち上げています。賊を止められない政府は賊の仲間と言ってよい、という言い方も厳しく、できないことの責任を明確に取らせる姿勢が表れています。
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この章句が説くこと

賠償負担責任当事者財源

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