長短経 / 臣行
夫人臣萌芽未動、形兆未見、昭然獨見存亡之機、得失之要、豫禁乎未然之前、使主超然立乎顯榮之處、如此者、聖臣也。虛心盡意、日進善道、勉主以禮義、諭主以長䇿、將順其美、匡救其惡。如此者、大臣也。
新字:夫人臣萌芽未動、形兆未見、昭然独見存亡之機、得失之要、予禁乎未然之前、使主超然立乎顕栄之処、如此者、聖臣也。虚心尽意、日進善道、勉主以礼義、諭主以長策、将順其美、匡救其悪。如此者、大臣也。
書き下し
夫れ人臣、萌芽未だ動かず、形兆未だ見れざるに、昭然として独り存亡の機、得失の要を見、未然の前に予め禁じ、主をして超然として顕栄の処に立たしむ。此くの如き者は聖臣なり。心を虚しくし意を尽くし、日に善道を進め、主を勉ますに礼義を以てし、主を諭すに長策を以てし、其の美に将順し、其の悪を匡救す。此くの如き者は大臣なり。
現代語訳
臣下たる者で、芽がまだ動かず、形の兆しがまだ現れないうちに、はっきりと一人だけ存亡の分かれ目と得失の要点を見抜き、まだ起こらないうちに防ぎ止め、主君を超然と栄光の場に立たせる。このような者は聖臣である。心を空しくして意を尽くし、日々よい道を進め、主君を礼義によって励まし、主君を長期の策によって諭し、その美点には従って伸ばし、その欠点は正して救う。このような者は大臣である。
解説
臣下を六段階に分ける六正の、上位二つです。聖臣の定義が厳しい。兆しが現れる前に見抜き、しかもその功績が主君のものになるように動く。誰にも気づかれずに危機を消すので、本人の手柄にはなりません。大臣は、主君の美点には従って伸ばし、欠点は正す。将順其美、匡救其悪という四字ずつの対が、上司との付き合い方の基本形として今も使えます。
この章句が説くこと
臣行六正聖臣大臣将順匡救兆し
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『長短経』臣行成敗を明察し、早く防ぎて之を救い、其の間を塞ぎ、其の源を絶ち、禍を転じて以て福と為し、君は終に已に憂い無し。此くの如き者は智臣なり。文に依り法を奉じ、官に任じ事を職とし、贈遺を受けず、食飲節倹なり。此くの如き者は貞臣なり。国家昏乱し、為す所諛わず、敢えて主の厳顔を犯し、面して主の過失を言う。此くの如き者は直臣なり。
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『臣軌』卷上 公正章六正。一に曰く、萌芽未だ動かず、形兆未だ見れざるに、照然として独り存亡の機、得失の要を見、未然の前に予め禁じ、主をして超然として顕栄の処に立たしむ。かくの如き者は聖臣なり。二に曰く、心を虚しくし意を白くし、善を進め道を通じ、主を勉ますに礼義を以てし、主を諭すに長策を以てし、その美に将順し、その悪を匡救す。功成り事立ちて、善を君に帰し、敢えて独りその労を伐らず。かくの如き者は大臣なり。三に曰く、身を畢くし体を賤しくし、夙に興き夜に寐ね、賢を進めて懈らず、しばしば往古の行事を称して以て主意を励まし、庶わくは益有りて以て国家を安んぜんとす。かくの如き者は忠臣なり。四に曰く、成敗を察見し、早く防ぎてこれを救い、引きてこれを復し、その間を塞ぎ、その源を絶ち、禍を転じて以て福と為し、君をして終に憂い無からしむ。かくの如き者は智臣なり。五に曰く、文を守り法を奉じ、官に任じ事を職とし、禄を辞し賜を譲り、贈遺を受けず、衣服は端斉、食飲は節素なり。かくの如き者は貞臣なり。六に曰く、国家昏乱すれば、為す所諛わず、然して敢えて主の厳顔を犯し、面して主の過失を言い、その誅を辞せず、身死して国安んずれば、行う所を悔いず。かくの如き者は直臣なり。これを六正と謂うなり。
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『長短経』臣行中は実に険詖にして、外貌は小謹、巧言令色にして、又た心に賢を疾む。進めんと欲する所以は則ち其の美を明らかにして其の悪を隠す。退けんと欲する所以は則ち其の過ちを彰して其の美を匿す。主の賞罰をして当たらず、号令をして行われざらしむ。此くの如き者は奸臣なり。智は以て非を飾るに足り、弁は以て説を行うに足る。内は骨肉の親を離し、外は朝廷に妬乱す。此くの如き者は讒臣なり。
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『長短経』臣行官に安んじ禄を貪り、公事を務めず、世と沈浮し、左右観望す。此くの如き者は具臣なり。主の言う所は皆な「善し」と曰い、主の為す所は皆な「可なり」と曰う。隠れて主の好む所を求めて之を進め、以て主の耳目を快くす。偸かに合し苟くも容れられ、主と楽しみを為し、後害を顧みず。此くの如き者は諛臣なり。
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説苑・臣術人臣の術は、順従して命を覆し、敢えて専らにする所無く、義は苟くも合わず、位は苟くも尊からず。必ず国に益有り、必ず君に補う有り。故に其の身尊くして子孫之を保つ。故に人臣の行いに六正六邪有り。六正を行えば則ち栄え、六邪を犯せば則ち辱めらる。夫れ栄辱なる者は禍福の門なり。何をか六正六邪と謂うや。六正とは、一に曰く、萌芽未だ動かず、形兆未だ見れざるに、昭然として独り存亡の幾、得失の要を見、預め不然の前に禁じ、主をして超然として顕栄の処に立たしめ、天下孝を称す、此くの如き者は聖臣なり。二に曰く、虚心白意、善を進め道を信じ、主に勉むるに体誼を以てし、主に諭すに長策を以てし、将に其の美を順い、其の悪を匡救し、功成り事立てば、善を君に帰し、敢えて独り其の労を伐たず、此くの如き者は良臣なり。三に曰く、身を卑しくし体を賤しくし、夙に興き夜に寐ね、賢を進めて解らず、しばしば往古の徳行事を称して以て主意を厲まし、庶幾わくは益有りて以て国家社稷宗廟を安んず、此くの如き者は忠臣なり。四に曰く、幽を明察し、成敗を見ること早く、防ぎて之を救い、引きて之を復し、其の間を塞ぎ、其の源を絶ち、禍を転じて以て福と為し、君をして終に憂い無からしむ、此くの如き者は智臣なり。五に曰く、文を守り法を奉じ、官職の事に任じ、禄を辞し賜を譲り、贈遺を受けず、衣服端斉、飲食節倹、此くの如き者は貞臣なり。六に曰く、国家昏乱し、為す所道ならざるに、然れども敢えて主の顔面を犯し、君の過失を言い、其の誅を辞せず、身死して国安んじ、行う所を悔いず、此くの如き者は直臣なり。是を六正と為すなり。六邪とは、一に曰く、官に安んじ禄を貪り、私家を営みて公事を務めず、其の智を懐き其の能を蔵し、主論に饑え策に渇するも、猶お節を尽くすを肯んぜず、容容乎として世と沈浮上下し、左右観望す、此くの如き者は具臣なり。二に曰く、主の言う所は皆善と曰い、主の為す所は皆可と曰い、隠かに主の好む所を求めて即ち之を進め、以て主の耳目を快くし、偷かに合し苟くも容れて主と楽を為し、其の後害を顧みず、此くの如き者は諛臣なり。三に曰く、中実頗険にして、外容貌小謹、巧言令色にして、又心賢を嫉み、進めんと欲する所は則ち其の美を明らかにして其の悪を隠し、退けんと欲する所は則ち其の過ちを明らかにして其の美を匿し、主をして妄行過任せしめ、賞罰当たらず、号令行われず、此くの如き者は奸臣なり。四に曰く、智は非を飾るに足り、辯は説を行うに足り、言を反し辞を易えて文章を成し、内は骨肉の親を離し、外は朝廷を妒み乱す、此くの如き者は讒臣なり。五に曰く、権を専らにし勢を擅にし、国事を持招して以て私門に軽重を為し、党を成して以て其の家を富ませ、又威勢を増加し、主命を擅矯して以て自ら顕貴す、此くの如き者は賊臣なり。六に曰く、諂言以て邪にし、主を不義に墜し、朋党比周して、以て主の明を蔽い、入りては則ち辯言好辞、出でては則ち更に復た其の言語を異にし、白黒をして別無からしめ、是非をして間無からしめ、伺候して推すべければ、而して因りて附然し、主をして悪境内に佈かしめ、四鄰に聞こえしむ、此くの如き者は亡国の臣なり、是を六邪と謂う。賢臣は六正の道に処りて、六邪の術を行わず、故に上安くして下治まり、生きては則ち楽しまれ、死しては則ち思わる、此れ人臣の術なり。
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貞観政要・択官然れども今の群臣、罕(まれ)に能く貞白卓異なる者あるは、蓋し之を求むること切ならず、之を励ますこと未だ精ならざるが故なり。若し之を勖(つと)むるに公忠を以てし、之を期するに遠大を以てし、各々職分有りて、其の道を行うを得しめば。貴くば則ち其の挙ぐる所を観、富めば則ち其の養う所を観、居れば則ち其の好む所を観、習えば則ち其の言う所を観、窮すれば則ち其の受けざる所を観、賤しければ則ち其の為さざる所を観る。其の材に因りて以て之を取り、其の能を審らかにして以て之に任じ、其の長ずる所を用い、其の短なる所を揜(おお)う。之を進むるに六正を以てし、之を戒むるに六邪を以てせば、則ち厳ならずして自ら励み、勧めずして自ら勉めん。故に『説苑』に曰く、「人臣の行いに、六正六邪有り。六正を行えば則ち栄え、六邪を犯せば則ち辱めらる。何をか六正と謂う。一に曰く、萌芽未だ動かず、形兆未だ見(あら)われざるに、昭然として独り存亡の機、得失の要を見、未然の前に予め禁じ、主をして超然として顕栄の処に立たしむ。此くの如き者は、聖臣なり。二に曰く、心を虚しくし意を尽くし、日に善道を進め、主を勉ますに礼義を以てし、主に諭すに長策を以てし、将(まさ)に其の美に順い、其の悪を匡救す。此くの如き者は、良臣なり。三に曰く、夙に興き夜に寐ね、賢を進めて懈らず、数々往古の行事を称して、以て主の意を厲ます。此くの如き者は、忠臣なり。四に曰く、成敗を明察し、早く防ぎて之を救い、其の間を塞ぎ、其の源を絶ち、禍を転じて以て福と為し、君をして終に憂い無からしむ。此くの如き者は、智臣なり。五に曰く、文を守り法を奉じ、官に任じ事を職とし、贈遺を受けず、禄を辞し賜を譲り、飲食は節倹なり。此くの如き者は、貞臣なり。六に曰く、家国昏乱するに、為す所諛(へつら)わず、敢えて主の厳顔を犯し、面(まのあた)り主の過失を言う。此くの如き者は、直臣なり。是を六正と謂う。何をか六邪と謂う。一に曰く、官に安んじ禄を食み、公事に務めず、代と浮沈し、左右観望す。此くの如き者は、具臣なり。二に曰く、主の言う所は皆な善しと曰い、主の為す所は皆な可なりと曰う。隠かに主の好む所を求めて之を進め、以て主の耳目を快くす。偸合苟容し、主と楽を為し、其の後の害を顧みず。此くの如き者は、諛臣なり。三に曰く、内は実に険诐(けんぴ)にして、外貌は小謹なり。巧言令色、善を妒(ねた)み賢を嫉む。進めんと欲する所は、則ち其の美を明らかにし、其の悪を隠す。退けんと欲する所は、則ち其の過ちを明らかにし、其の美を匿す。主の賞罰をして当たらざらしめ、号令をして行われざらしむ。此くの如き者は、奸臣なり。四に曰く、智は以て非を飾るに足り、辯は以て説を行うに足る。内は骨肉の親を離し、外は朝廷の乱を構う。此くの如き者は、讒臣なり。五に曰く、権を専らにし勢を擅(ほしいまま)にし、軽きを以て重しと為す。私門は党を成し、以て其の家を富ます。擅(ほしいまま)に主命を矯(いつわ)り、以て自ら貴顕とす。此くの如き者は、賊臣なり。六に曰く、主に諂うに佞邪を以てし、主を不義に陥る。朋党比周し、以て主の明を蔽う。白黒をして別無からしめ、是非をして間無からしむ。主の悪をして境内に布かしめ、四鄰に聞こえしむ。此くの如き者は、亡国の臣なり。是を六邪と謂う。賢臣は六正の道に処り、六邪の術を行わず。故に上は安く下は治まる。生きては則ち楽しまれ、死しては則ち思わる。此れ人臣の術なり」と。『礼記』に曰く、「権衡誠に懸(か)かれば、軽重を以て欺くべからず。縄墨誠に陳(つら)なれば、曲直を以て欺くべからず。規矩誠に設くれば、方円を以て欺くべからず。君子礼を審らかにせば、奸詐を以て誣(し)うべからず」と。然らば則ち臣の情偽は、之を知ること難からざるなり。又た礼を設けて以て之を待し、法を執りて以て之を御し、善を為す者は賞を蒙り、悪を為す者は罰を受けば、安くんぞ敢えて企て及ばざらんや。安くんぞ敢えて力を尽くさざらんや。