墨子 / 魯問
子墨子見齊大王,曰:「今有刀於此,試之人頭,倅然斷之,可謂利乎?」大王曰:「利。」子墨子曰:「多試之人頭,倅然斷之,可謂利乎?」大王曰:「利。」子墨子曰:「刀則利矣,孰将受其不祥?」大王曰:「刀受其利,試者受其不祥。」子墨子曰:「并國覆軍,賊虐百姓,孰将受其不祥?」大王俯仰而思之,曰:「我受其不祥。」
新字:子墨子見斉大王,曰:「今有刀於此,試之人頭,倅然断之,可謂利乎?」大王曰:「利。」子墨子曰:「多試之人頭,倅然断之,可謂利乎?」大王曰:「利。」子墨子曰:「刀則利矣,孰将受其不祥?」大王曰:「刀受其利,試者受其不祥。」子墨子曰:「并国覆軍,賊虐百姓,孰将受其不祥?」大王俯仰而思之,曰:「我受其不祥。」
書き下し
子墨子、齊の大王に見えて曰く、「今、刀、此に有り。之を人の頭に試み、倅然として之を斷たば、利しと謂う可きか」と。大王曰く、「利し」と。子墨子曰く、「多く之を人の頭に試み、倅然として之を斷たば、利しと謂う可きか」と。大王曰く、「利し」と。子墨子曰く、「刀は則ち利し。孰れか将に其の不祥を受けんとする」と。大王曰く、「刀は其の利を受け、試む者は其の不祥を受く」と。子墨子曰く、「國を并せ軍を覆し、百姓を賊虐すれば、孰れか将に其の不祥を受けんとする」と。大王、俯仰して之を思いて曰く、「我れ其の不祥を受けん」と。
現代語訳
墨子が斉の大王に会って言った。「いまここに刀があります。人の頭で試して、さっと切り落とせたなら、よく切れると言えますか」。大王が言った。「よく切れる」。墨子が言った。「何度も人の頭で試して、さっと切り落とせたなら、よく切れると言えますか」。大王が言った。「よく切れる」。墨子が言った。「刀はよく切れる。では誰がその禍を受けるのですか」。大王が言った。「刀はその利を受け、試した者がその禍を受ける」。墨子が言った。「国を併せ軍を覆し、民を虐げれば、誰がその禍を受けるのですか」。大王は俯き、仰いで考えてから言った。「私がその禍を受ける」。
解説
刀の切れ味という中立の話題から入り、相手に「試した者が禍を受ける」と言わせてから、その言葉を戦争に移します。道具は責めを負わず、使った者が負う。武器の性能の話を、使用者の責任の話に転換する運び方です。相手が自分の口で結論を出す形になっているのが効いています。技術の是非を語る場面で、いまも繰り返される構図です。
この章句が説くこと
責任道具使用者戦争転換
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