墨子 / 節葬下
欲以衆人民,意者可邪?其説又不可矣。今惟無以厚葬久喪者為政。君死喪之三年,父母死喪之三年,妻與後子死者,皆喪之三年。然後伯父、叔父、兄弟、孽子其,族人五月,姑姊、甥舅皆有月數,則毁瘠必有制矣。使面目陷顔色黧黑,耳目不聰明,手足不勁强,不可用也。又曰:上士持喪也,必扶而能起,杖而能行,以此共三年。若法若言,行若道,茍其飢約又若此矣。是故百姓冬不忍寒,夏不忍暑,作疾病死者不可勝計也。此其為敗男女之交多矣,以此求衆,譬猶使人負劍而求其夀也,衆之説無可得焉。是故求以衆人民,而既以不可矣。
新字:欲以衆人民,意者可邪?其説又不可矣。今惟無以厚葬久喪者為政。君死喪之三年,父母死喪之三年,妻与後子死者,皆喪之三年。然後伯父、叔父、兄弟、孽子其,族人五月,姑姊、甥舅皆有月数,則毁瘠必有制矣。使面目陥顔色黧黒,耳目不聰明,手足不勁强,不可用也。又曰:上士持喪也,必扶而能起,杖而能行,以此共三年。若法若言,行若道,茍其飢約又若此矣。是故百姓冬不忍寒,夏不忍暑,作疾病死者不可勝計也。此其為敗男女之交多矣,以此求衆,譬猶使人負剣而求其夀也,衆之説無可得焉。是故求以衆人民,而既以不可矣。
書き下し
以て人民を衆くせんと欲するは、意う者、可なるか。其の説、又た不可なり。今、惟だ厚葬久喪を以て政を為す無し。君、死すれば之を喪すること三年、父母、死すれば之を喪すること三年、妻と後子と死する者は、皆な之を喪すること三年。然る後に伯父・叔父・兄弟・孽子は其れ、族人は五月、姑・姊・甥・舅は皆な月數有り。則ち毁瘠、必ず制有らん。面目をして陷らしめ顔色を黧黑ならしめ、耳目、聰明ならず、手足、勁强ならず、用う可からざらしむ。又た曰く、上士の喪を持するや、必ず扶けられて能く起ち、杖つきて能く行く。此を以て三年を共にす、と。若の法、若の言のごとくし、若の道を行いて、茍くも其の飢約、又た此くの若くんば。是の故に百姓、冬は寒に忍びず、夏は暑に忍びず、疾を作して病死する者、勝げて計う可からざるなり。此れ其の男女の交を敗ること多し。此を以て衆きを求むるは、譬うるに猶お人をして劍を負わしめて其の夀を求むるがごときなり。衆の説、得可き無し。是の故に以て人民を衆くせんことを求むるも、既に以て不可なり。
現代語訳
これで人民を多くしようとするのは、可能だろうか。その説もまた不可能である。いま手厚い葬儀と長い喪で政治を行うとする。君が死ねば三年喪に服し、父母が死ねば三年、妻と嫡子が死ねばみな三年。そのあと伯父・叔父・兄弟・庶子にもそれぞれ、一族の者には五か月、姑・姉・甥・舅にもみな月数が定められる。だからやつれ方にも規定ができる。顔をやつれさせ顔色を青黒くさせ、耳目は明晰でなく、手足は力が入らず、使い物にならなくなる。さらにいう、上等の士が喪に服するときは、必ず助けられてやっと起き、杖をついてやっと歩く。それを三年続ける、と。この法、この言葉に従い、この道を行って、その飢えと切り詰めがこのようであれば。だから百姓は冬の寒さに耐えられず、夏の暑さに耐えられず、病を得て死ぬ者は数え切れない。これは男女の交わりを損なうことが多い。これで人を多くしようとするのは、たとえば人に剣を背負わせて長寿を求めるようなものだ。多くする説は成り立たない。だから人民を多くしようとしても、それは不可能である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『墨子』節葬下以て刑政を治めんと欲するは、意う者、可なるか。其の説、又た不可なり。今、惟だ厚葬久喪を以て政を為す無し。國家、必ず貧しく、人民、必ず寡なく、刑政、必ず亂る。若の法、若の言のごとくし、若の道を行いて、上為る者をして此を行わしめば、則ち聴治する能わず、下為る者をして此を行わしめば、則ち事に從う能わず。上、聴治せざれば、刑政、必ず亂れ、下、事に從わざれば、衣食の財、必ず足らず。若し茍くも足らざれば、人の弟為る者は其の兄に求めて得ず、弟ならざる弟は必ず將に其の兄を怨まんとす。人の子為る者は其の親に求めて得ず、孝ならざる子は必ず且つ其の親を怨まんとす。人の臣為る者は之を君に求めて得ず、忠ならざる臣は必ず且つ其の上を亂さんとす。是を以て僻淫邪行の民、出づれば則ち衣無く、入れば則ち食無く、内に潰えて奚若んぞ並びに淫暴を為して、勝げて禁ず可からず。是の故に盜賊、衆くして治まる者、寡なし。盜賊を衆くして治まるを寡なくして、此を以て治を求むるは、譬うるに猶お人をして衆からしめて已に負わしむる毋きがごときなり。治の説、得可き無し。是の故に以て刑政を治めんことを求むるも、既已に不可なり。
-
『墨子』節葬下若し茍くも之の二子なる者の言に疑惑せば、然らば則ち姑く嘗みに傳えて國家萬民に政を為して之を觀ん。厚葬久喪を計るに、奚ぞ此の三利なる者に當たらんや。我が意、若し其の言に法り、其の謀を用いて、厚葬久喪、實に以て貧を富まし、寡を衆くし、危を定め、亂を治む可からしめんか。此れ仁なり、義なり、孝子の事なり。人の為に謀る者は勸めざる可からざるなり。仁者は將に之を興さんことを求め、天下、誰か霸として民をして之を譽めしめ、終に廢する勿からしめん。
-
『墨子』節葬下是の故に子墨子曰く、郷に吾が本と言えらく、意うに亦た其の言をして、其の謀を用いて、厚葬久喪を計るに、誠に以て貧を富まし、寡を衆くし、危を定め、亂を治む可からんか。則ち仁なり、義なり、孝子の事なり。人の為に謀る者は、勸めざる可からざるなり。意うに亦た其の言に法り、其の謀を用いて、人の若きの厚葬久喪、實に以て貧を富まし、寡を衆くし、危を定め、亂を治む可からざらんか。則ち仁に非ざるなり、義に非ざるなり、孝子の事に非ざるなり。人の為に謀る者は、沮まざる可からざるなり。是の故に以て國家を富まさんことを求むるも、甚だ貧を得たり。以て人民を衆くせんと欲するも、甚だ寡を得たり。以て刑政を治めんと欲するも、甚だ亂を得たり。以て大國の小國を攻むるを禁止せんことを求むるも、既已に不可なり。以て上帝鬼神の福を千めんと欲するも、又た禍を得たり。上、之を堯舜禹湯文武の道に稽うるに、政、之に逆らう。下、之を桀紂幽厲の事に稽うるに、猶お節を合わするがごとし。若し此を以て觀れば、則ち厚葬久喪は、其れ聖王の道に非ざるなり。
-
『墨子』節葬下何を以て其の然るを知るや。今、天下の士君子、將に猶お多く皆な厚葬久喪の是非利害に中たるを疑惑せんとす。故に子墨子言いて曰く、然らば則ち姑く嘗みに之を稽えん。今、厚葬久喪を執る者の言に法り、以て國家に事を為すこと毋しと雖も。此れ王公大人の喪有る者に存りては、曰く、棺槨は必ず重ね、葬埋は必ず厚くし、衣衾は必ず多く、文繡は必ず繁く、丘隴は必ず巨いにす、と。正夫賤人の死する者に存りては、殆ど家室を竭くす。諸侯の死する者に乎いては、庫府を虚しくし、然る後に金玉珠璣、身に比べ、綸組節約し、車馬、壙に蔵む。又た必ず多く屋幕・鼎鼓・几筵・壺濫・戈劍・羽旄・齒革を為り、寢しめて之を埋む。意を滿たすに送從の若きは、曰く、天子は殉を殺すこと、衆きは數百、寡なきは數十。將軍大夫の殉を殺すこと、衆きは數十、寡なきは數人。
-
『墨子』節葬下意うに亦た其の言に法り、其の謀を用いて、厚葬久喪、實に以て貧を富まし、寡を衆くし、危を定め、亂を治む可からざらしめんか。此れ仁に非ず義に非ず、孝子の事に非ざるなり。人の為に謀る者は勸めざる可からざるなり。仁者は將に之を天下に興さんとし、誰か霸として民をして之を譽めしめ、終に廢する勿からしめん。意うに亦た其の言に法り、其の謀を用いて、厚葬久喪、實に以て貧を富まし寡を衆くし、危を定め亂を理む可からざらんか。此れ仁に非ず義に非ず、孝子の事に非ざるなり。人の為に謀る者は沮まざる可からざるなり。仁者は將に之を除かんことを求め、天下、相い廢して人をして之を非とせしめ、身を終うるまで為す勿からしめん。且つ故に天下の利を興し、天下の害を除くに、今、國家百姓の治まらざるや、古より今に及ぶまで未だ嘗て之れ有らざるなり。
-
『墨子』節葬下故に衣食なる者は、人の生の利なり。然も且つ猶お尚お節有り。葬埋なる者は、人の死の利なり。夫れ何ぞ獨り此に節無からんや。子墨子、制して葬埋の法を為りて曰く、棺は三寸、以て骨を朽ちしむるに足る。衣は三領、以て肉を朽ちしむるに足る。地を掘るの深さは、下は菹漏する無く、氣は上に發洩する無く、壟は以て其の所を期するに足れば、則ち止むのみ。哭して往き哭して來り、反りて衣食の財に從事し、祭祀に佴きて、以て孝を親に致す。故に曰く、子墨子の法、死生の利を失わざる者は、此れなり。故に子墨子言いて曰く、今、天下の士君子、咸な將に仁義を為し、上士たるを求めんと欲すと謂う。上は聖王の道に中らんと欲し、下は國家百姓の利に中らんと欲せば、故に當に節葬の政を為すが若きにして、察せざる可からざる者、此れなり。