呂氏春秋 / 處方①
凡為治必先定分。君臣父子夫婦君臣父子夫婦六者當位,則下不踰節而上不苟為矣,少不悍辟而長不簡慢矣。金木異任,水火殊事,陰陽不同,其為民利一也。故異所以安同也,同所以危異也。同異之分,貴賤之別,長少之義,此先王之所慎,而治亂之紀也。
新字:凡為治必先定分。君臣父子夫婦君臣父子夫婦六者当位,則下不踰節而上不苟為矣,少不悍辟而長不簡慢矣。金木異任,水火殊事,陰陽不同,其為民利一也。故異所以安同也,同所以危異也。同異之分,貴賤之別,長少之義,此先王之所慎,而治乱之紀也。
書き下し
凡そ治を為すには必ず先づ分を定む。君臣父子夫婦、六つの者位に當たれば、則ち下は節を踰えずして、上は為すを苟くせず。少は悍辟ならずして、長は簡慢ならず。金木は任を異にし、水火は事を殊にし、陰陽は同じからざるも、其れ民の利を為すや一なり。故に異は同を安んずる所以なり、同は異を危うくする所以なり。同異の分、貴賤の別、長少の義、此れ先王の慎む所にして、治亂の紀なり。
現代語訳
およそ治めるには必ずまず職分を定める。君臣・父子・夫婦の六者がその位に当たれば、下は節度を越えず、上はいい加減に振る舞わず、若者は凶悪邪まにならず、年長者は侮り怠らない。金と木は用途が異なり、水と火は働きが違い、陰と陽は同じでないが、民の利益となる点では一つだ。だから異なるものは同じものを安んじる手段であり、同じものは異なるものを危うくする手段だ。同と異の分別、貴と賤の区別、長と少の秩序、これこそ先王が慎んだところで、治乱の要である。
解説
この段は「処方(職分を処する)」篇の総論で、統治の第一歩は職分を定めることだと説きます。君臣・父子・夫婦がそれぞれの位を得れば、上下や長幼の秩序が保たれます。金木水火や陰陽が用途も働きも異なりながら共に民の利に資するように、役割の相違こそが全体を安んじる、と論じます。背景には、名分を正して秩序を保つ古代の統治思想があります。核心は「異は同を安んじ、同は異を危うくす」、すなわち多様な役割分担が安定を生み、無理な画一化が破綻を招くという逆説です。現代の組織でも、各部門が異なる機能を担いつつ共通の目的に向かう分業は強く、全員を同じ型にはめる均質化はかえって脆さを生みます。役割設計の原理として読めます。
この章句が説くこと
処方定分名分役割分担陰陽秩序
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