呂氏春秋 / 執一③
田駢以道術說齊。齊王應之曰:「寡人所有者齊國也,願聞齊國之政。」田駢對曰:「臣之言,無政而可以得政。譬之若林木,無材而可以得材。願王之自取齊國之政也。駢猶淺言之也,博言之,豈獨齊國之政哉?變化應來而皆有章,因性任物而莫不宜當,彭祖以壽,三代以昌,五帝以昭,神農以鴻。」
新字:田駢以道術説斉。斉王応之曰:「寡人所有者斉国也,願聞斉国之政。」田駢対曰:「臣之言,無政而可以得政。譬之若林木,無材而可以得材。願王之自取斉国之政也。駢猶浅言之也,博言之,豈独斉国之政哉?変化応来而皆有章,因性任物而莫不宜当,彭祖以寿,三代以昌,五帝以昭,神農以鴻。」
書き下し
田駢、道術を以て齊に說く。齊王之に應えて曰く、「寡人の有つ所の者は齊國なり。願わくは齊國の政を聞かん。」田駢對えて曰く、「臣の言は、政無くして以て政を得可し。之を譬うれば林木の材無くして以て材を得可きが若し。願わくは王の自ら齊國の政を取らんことを。」駢は猶ほ之を淺言す。之を博言すれば、豈に獨り齊國の政のみならんや。變化應來して皆章有り、性に因り物に任せて、宜しく當らざるは莫し。彭祖は以て壽に、三代は以て昌え、五帝は以て昭らかに、神農は以て鴻なり。
現代語訳
田駢が道の術によって斉王に説いた。斉王はこれに応えて言った。わしが持っているのは斉の国だ。ぜひ斉の国の政治について聞きたい、と。田駢は答えた。私の申すことは、特定の政策はないのに、それによって政治を得ることができるものです。たとえば、林の木は初めから完成した用材ではないのに、それによって用材を得ることができるようなものです。どうか王ご自身で斉の国の政治をおとりください、と。田駢はこれでもまだ浅く言ったのだ。もし広く突きつめて言うなら、どうして斉の国の政治だけにとどまろうか。道に従えば、あらゆる変化に応じて現れ、みなおのずと筋道が立ち、本性に従い物に任せて、うまく当てはまらないものはない。彭祖はこの道によって長寿を得、夏・殷・周の三代はこれによって栄え、五帝はこれによって明らかとなり、神農はこれによって盛んになったのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
説苑・君道斉の宣王、尹文に謂いて曰く、「人君の事は何如」と。尹文対えて曰く、「人君の事は、無為にして能く下を容る。夫れ事寡なければ従い易く、法省ければ因り易し、故に民は政を以て罪を獲ず。大道は衆を容れ、大徳は下を容れ、聖人は寡為にして天下理まる。書に曰く、『睿は聖を作す』と。詩人曰く、『岐に夷の行有り、子孫其れ之を保たん』と」と。宣王曰く、「善し」と。
-
論語・陽貨篇子曰く、飽食終日、心を用うる所無きは、難いかな。博弈なる者有らずや。之を為すは、猶お已むに賢れり。
-
論語・衛霊公篇孔子曰わく、無為にして治むる者は、その舜なるか。夫れ何をか為さん。己を恭しくして南面するのみ。
-
説苑・君道晋の平公、師曠に問いて曰く、「人君の道は如何」と。対えて曰く、「人君の道は、清浄無為、務めて博愛にあり、趨りて賢を任ずるにあり、広く耳目を開きて以て万方を察し、流俗に固溺せず、左右に拘繋せられず、廓然として遠く見、踔然として独立し、屡々考績を省みて、以て臣下に臨む。此れ人君の操なり」と。平公曰く、「善し」と。
-
老子・第37章道は常に無為にして而も為さざる無し。侯王若し能く之を守らば、万物は将に自ら化せんとす。化して作らんと欲すれば、吾れ将に之を鎮むるに無名の樸を以てせんとす。無名の樸は、夫れ亦た将に欲無からんとす。欲せずして以て静かなれば、天下は将に自ら定まらんとす。
-
『信心銘』第十四章智者(ちしゃ)は無為(むい)、愚人(ぐにん)は自(みづか)ら縛(しば)る。法(ほう)に異法(いほう)無(な)きに、妄(みだ)りに自(みづか)ら愛著(あいじゃく)す。心(しん)を將(も)って心(しん)を用(もち)ゐる、豈(あ)に大錯(だいしゃく)に非(あら)ずや。