列子 / 説符篇
晉侯聞而大駭、立召文子而告之曰:「果如子言、郄雍死矣!然取盜何方?」文子曰:「周諺有言:察見淵魚者不祥、智料隱匿者有殃。且君欲無盜、莫若舉賢而任之、使教明於上、化行於下、民有恥心、則何盜之爲?」於是用隨會知政、而羣盜奔秦焉。
新字:晉侯聞而大駭、立召文子而告之曰:「果如子言、郄雍死矣!然取盗何方?」文子曰:「周諺有言:察見淵魚者不祥、智料隠匿者有殃。且君欲無盗、莫若舉賢而任之、使教明於上、化行於下、民有恥心、則何盗之為?」於是用随会知政、而羣盗奔秦焉。
書き下し
晉侯聞きて大いに駭き、立ちどころに文子を召して之に告げて曰く、果たして子の言の如し。郄雍死せり。然らば盜を取るに何の方あらん、と。文子曰く、周諺に言有り、淵の魚を察見する者は不祥、隱匿を智料する者は殃有り、と。且つ君盜無からんと欲せば、賢を舉げて之に任じ、教えをして上に明らかに、化をして下に行われしむるに若くは莫し。民に恥ずる心有らば、則ち何の盜をか爲さん、と。是に於いて隨會を用いて政を知らしむ。而して羣盜は秦に奔る。
現代語訳
晋侯はこれを聞いて大いに驚き、すぐに文子を呼んで告げた。「まったくあなたの言うとおりだった。郄雍は死んだ。では盗賊を捕らえるにはどんな方法があるか」。文子は言った。「周の諺にこうあります。淵の底の魚まで見通す者には不吉なことがあり、隠していることまで見抜く者には災いがある、と。それに君が盗賊をなくしたいのなら、賢者を挙げて任せ、教えを上で明らかにし、感化が下に行きわたるようにするのが一番です。民に恥じる心があれば、盗みなど誰がしましょう」。そこで随会を用いて政をつかさどらせた。すると盗賊たちは秦へ逃げていった。
解説
「淵の魚を察見する者は不祥」。見抜きすぎる者には災いがある、という諺です。郄雍の死は能力の代償でした。そのうえで文子が示した代案は、見張りではなく、教えと感化です。民に恥じる心があれば盗みは起きない。取り締まりから、そもそも起こらない状態を作るほうへ移した。そして盗賊は捕まったのではなく、秦へ逃げていきました。解決ではなく、いなくなった。組織の不正対策も同じ構図です。監視を強めれば、巧妙になるか、場所を変えるだけです。恥じる心を作るほうが遠回りに見えて、結局は早い。
この章句が説くこと
淵の魚を察見する者は不祥賢を舉げて之に任ず民に恥ずる心有らば何の盗をか為さん
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