十七条憲法 / 第三条
三曰、承詔必謹。君則天之、臣則地之。天覆地載、四時順行、萬氣得通。地欲覆天、則致其懐。是以、君言臣承。上行下靡。故承詔必愼。不謹自敗。
新字:三曰、承詔必謹。君則天之、臣則地之。天覆地載、四時順行、万気得通。地欲覆天、則致其懐。是以、君言臣承。上行下靡。故承詔必慎。不謹自敗。
書き下し
三に曰わく、詔(みことのり)を承(うけたまわ)りては必ず謹(つつし)め。君をば則(すなわ)ち天と為(し)、臣をば則ち地と為(せ)よ。天は覆(おお)い地は載(の)せ、四時(しいじ)順(したが)い行(めぐ)り、萬気(ばんき)通(かよ)うことを得。地、天を覆わんと欲(ほっ)すれば、則ち其れ懐(やぶ)るることを致(いた)す。是(ここ)を以て、君言(の)れば臣承る。上(かみ)行(おこな)えば下(しも)靡(なび)く。故に詔を承りては必ず慎め。謹まずんば自(おのずか)ら敗れん。
現代語訳
君主(天皇陛下)から詔が示されたときには、決して軽んじず、心して受け止めなければならない。 君主は天であり、臣下は地にたとえられる。 天が広く覆い、地がそれをしっかり支えているからこそ、春夏秋冬は巡り、万物がのびやかに育つ。 しかしもし地が天を覆そうとすれば、秩序は壊れ、世界は成り立たない。 これと同じく、上が示した道を下がまっすぐに受け取り、上が動けば下がそれに応じて動くことで、政治は乱れずに進み、国は安らかになる。 だからこそ、上から出された命や方針は、必ず慎重に受け止めよ。 軽く扱えば、やがて自らの身を滅ぼし、組織も乱れる。
解説
組織として動く以上、決まった方針を確実に実行する力が欠かせない。
上に立つ者が示した方向を、現場が正しく受け取り、同じ方向へ動くことで、組織の働きは整い、混乱が生まれない。
とりわけリーダー層が方針を軽く扱えば、その姿勢はすぐに部下へ伝わり、全体が迷い、組織はゆっくりと力を失っていく。
これは盲目的に従うことを求めているのではなく、組織の目的を果たすために、それぞれが自分の役割を果たす必要がある、という意味である。
リーダーは方針の意図を明確に示し、部下はその意味をつかんだうえで行動に移す。
この往復が成り立ってこそ、組織は力を発揮し、目的へ向かってまっすぐに進む。
この章句が説くこと
実行力トップダウン指揮命令系統役割遂行責任率先垂範
関連する章句
-
論語・里仁篇子曰わく、君子は言に訥(とつ)にして行いに敏ならんと欲す。
-
老子・第23章希言は自然なり。故に飄風は朝を終えず、驟雨は日を終えず。孰か此を為す者ぞ。天地なり。天地すら尚お久しきこと能わず、而るを況んや人に於いてをや。故に道に従事する者は、道者は道に同じく、徳者は徳に同じく、失者は失に同じくす。道に同じくする者は、道も亦た之を得るを楽しみ、徳に同じくする者は、徳も亦た之を得るを楽しみ、失に同じくする者は、失も亦た之を得るを楽しむ。信足らざれば、信ぜられざること有り。
-
論語・憲問篇子曰わく、君子はその言にして行に過ぐるを恥ず。
-
『韓非子』外儲説右下第三十五賞罰共にすれば則ち禁令行われず。何を以て之を明らかにせん。之を明らかにするに造父・於期を以てす。
-
『韓非子』飭令第五十三利一空より出づるときは、其の國敵無く、利二空より出づるときは、其の兵半ば用いられ、利十空より出づるときは、民守らず。
-
十七条憲法 第十二条国司(こくし)国造(くにのみやつこ)、百姓(ひゃくせい)に斂(おさ)めとること勿(な)かれ。国に二君(にくん)無(な)く、民(たみ)に両主(りょうしゅ)無(な)し。率土(そっと)の兆民(ちょうみん)は、王(きみ)を以(もっ)て主(あるじ)と為(な)す。任(にん)ずる所(ところ)の官司(かんし)は、皆(みな)是(こ)れ王の臣(しん)なり。何(なん)ぞ敢(あ)えて公(きみ)と与(とも)に、百姓に賦斂(ふれん)せん。