顔氏家訓 / 名實
吾見世人、清名登而金貝入、信譽顯而然諾虧、不知後之矛戟、毁前之干櫓也。虙子賤云:「誠於此者形於彼。」人之虛實真偽在乎心、無不見乎迹、但察之未熟耳。一為察之所鑒、巧偽不如拙誠、承之以羞大矣。伯石讓卿、王莽辭政、當于爾時、自以巧密、後人書之、留傳萬代、可為骨寒毛豎也。
新字:吾見世人、清名登而金貝入、信誉顕而然諾虧、不知後之矛戟、毁前之干櫓也。虙子賤云:「誠於此者形於彼。」人之虚実真偽在乎心、無不見乎迹、但察之未熟耳。一為察之所鑒、巧偽不如拙誠、承之以羞大矣。伯石譲卿、王莽辞政、当于爾時、自以巧密、後人書之、留伝万代、可為骨寒毛豎也。
書き下し
吾世人を見るに、清名登りて金貝入り、信誉顕れて然諾虧く。後の矛戟の、前の干櫓を毀つを知らざるなり。虙子賤云う、「此に誠なる者は彼に形わる」と。人の虚実真偽は心に在り。迹に見れざるは無し。但だ之を察すること未だ熟せざるのみ。一たび察するの鑑する所と為れば、巧偽は拙誠に如かず。之を承くるに羞を以てすること大なり。伯石の卿を譲り、王莽の政を辞するは、爾の時に当たりては、自ら巧密なりと以えり。後人之を書して、万代に留伝す。骨寒く毛豎つと為すべきなり。
現代語訳
私は世の人を見てきたが、清廉の名が高まるとともに金品が入り込み、信用の評判が現れるとともに約束の履行が欠けていく。後から出す矛や戟が、前に構えた盾を壊すことに気づいていない。虙子賤は言った。「こちらで誠実であれば、あちらに現れる」。人の虚実や真偽は心にあり、行跡に現れないことはない。ただそれを見抜くのに慣れていないだけである。ひとたび見抜かれてしまえば、巧妙な偽りは拙い誠実さに及ばない。それを恥として受け止める代償は大きい。伯石が卿の位を辞退し、王莽が政権を辞退したのは、そのときには自分では巧妙で緻密だと思っていた。後の人がそれを書き記し、万代に伝えた。骨が冷え毛が逆立つ思いがする。
解説
「後の矛戟の、前の干櫓を毀つ」——自分が後から出す矛が、自分が前に構えた盾を壊す。名声を得た後の振る舞いが、その名声の根拠を壊していく構図です。そして核心が「巧偽は拙誠に如かず」。巧妙な偽りは、拙い誠実さに及ばない。理由は単純で、心のありようは必ず行跡に出るからです。見抜かれるまでに時間がかかるだけで、見抜かれないわけではない。伯石も王莽も、当時は完璧に演じたつもりでした。それが史書に記録され、万代に残った。演出は、それが演出だと分かる証拠とともに残ります。
この章句が説くこと
後の矛戟前の干櫓を毀つ巧偽は拙誠に如かず此に誠なる者は彼に形わる演出の証拠誠実信頼
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