淮南子 / 兵略訓
兵有三詆,治國家,理境內,行仁義,布德惠,立正法,塞邪隧,群臣親附,百姓和輯,上下一心,君臣同力,諸侯服其威,而四方懷其德。修政廟堂之上,而折沖千里之外,拱揖指捴,而天下回應,此用兵之上也。地廣民眾,主賢將忠,國富兵強,約束信,號令明,兩軍相當,鼓錞相望,未至兵交接刃,而敵奔亡,此用兵之次也。知土地之宜,羽險隘之利,明奇正之變,察行陳解贖之數,維枹綰而鼓之,白刃合,流矢接,涉血屬腸,輿死扶傷,流血千里,暴骸盈場,乃以決勝,此用兵之下也。
新字:兵有三詆,治国家,理境内,行仁義,布徳恵,立正法,塞邪隧,群臣親附,百姓和輯,上下一心,君臣同力,諸侯服其威,而四方懐其徳。修政廟堂之上,而折沖千里之外,拱揖指捴,而天下回応,此用兵之上也。地広民眾,主賢将忠,国富兵強,約束信,号令明,両軍相当,鼓錞相望,未至兵交接刃,而敵奔亡,此用兵之次也。知土地之宜,羽険隘之利,明奇正之変,察行陳解贖之数,維枹綰而鼓之,白刃合,流矢接,渉血属腸,輿死扶傷,流血千里,暴骸盈場,乃以決勝,此用兵之下也。
書き下し
兵に三詆有り。國家を治め、境內を理め、仁義を行い、德惠を布き、正法を立て、邪隧を塞ぎ、群臣 親附し、百姓 和輯し、上下 一心、君臣 力を同じくし、諸侯 其の威に服して、四方 其の德を懷く。政を廟堂の上に修めて、沖を千里の外に折り、拱揖指捴して、天下 回應す。此れ兵を用うるの上なり。地 廣く民 眾く、主 賢に將 忠、國 富み兵 強く、約束 信あり、號令 明らかにして、兩軍 相い當たり、鼓錞 相い望むも、未だ兵の交わり刃を接するに至らずして、敵 奔亡す。此れ兵を用うるの次なり。土地の宜しきを知り、險隘の利に羽し、奇正の變に明らかに、行陳解贖の數を察し、枹を維ぎ綰びて之を鼓す。白刃 合し、流矢 接し、血を涉り腸を屬ぎ、死を輿し傷を扶け、血 千里に流れ、暴骸 場に盈つ。乃ち以て勝を決す。此れ兵を用うるの下なり。
現代語訳
兵には三つの段がある。国家を治め、領内を整え、仁義を行い、恵みを行き渡らせ、正しい法を立て、邪な抜け道を塞ぎ、群臣が親しみ従い、民が和らぎまとまり、上下が心を一つにし、君臣が力を合わせ、諸侯がその威に服し、四方がその徳を慕う。廟堂の上で政を整えて、敵の攻めを千里の外で折り、手を組んで指図するだけで天下が応じる。これが兵の用い方の上である。土地が広く民が多く、主が賢く将が忠実で、国が富み兵が強く、約束に信があり、号令が明らかで、両軍が向かい合い、太鼓が互いに見えるところまで来ても、刃を交える前に敵が逃げ散る。これが兵の用い方の次である。土地の適否を知り、険しい隘路の利に通じ、奇と正の変化に明るく、隊列や解散の数を見きわめ、撥を握って太鼓を打つ。白刃が交わり、流れ矢が飛び、血を渡り腸をつなぎ、死者を車に載せ傷者を助け、血が千里に流れ、屍が野に満ちる。そこでようやく勝ちを決める。これが兵の用い方の下である。
解説
この章句が説くこと
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『淮南子』兵略訓兵の隱議する所の者は、天道なり。圖畫する所の者は、地形なり。明言する所の者は、人事なり。勝を決する所以の者は、鈐勢なり。故に上將の兵を用うるや、上は天道を得、下は地利を得、中は人心を得たり。乃ち之を行うに機を以てし、之を發するに勢を以てす。是を以て破軍敗兵無し。中將に至るに及びては、上は天道を知らず、下は地利を知らず、專ら人と勢とを用う。未だ必ずしも萬全なる能わずと雖も、勝鈐 必ず多し。下將の兵を用うるや、博聞にして自ら亂れ、多知にして自ら疑う。居れば則ち恐懼し、發すれば則ち猶豫す。是を以て動けば人の禽と爲るなり。
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『淮南子』兵略訓乃ち爪鬋し、明衣を設けて、凶門を鑿ちて出づ。將軍の車に乘り、旌旗斧鉞を載せ、累として勝えざるが若し。其の敵に臨み戰を決するや、必死を顧みず、二心有る無し。是の故に上に天無く、下に地無く、前に敵無く、後に主無し。進みて名を求めず、退きて罪を避けず、唯だ民 是れ保ち、利 主に合するは、國の實にして、上將の道なり。此くの如くんば、則ち智者 之が爲に慮り、勇者 之が爲に鬥い、氣 青雲を厲まし、疾きこと馳騖の如し。是の故に兵 未だ交接せずして敵人 恐懼す。若し戰い勝ちて敵 奔らば、畢く功賞を受け、吏は官を遷し、爵祿を益し、地を割きて調と爲す。封外に決し、卒に軍中に論斷す。顧りて國に反れば、旗を放ちて以て斧鉞を入れ、報 君に畢わりて曰く、「軍に後治無し」と。乃ち縞素辟舍して、罪を君に請う。君曰く、「之を赦す」と。退きて、齋服す。大勝は三年にして舍に反り、中勝は二年、下勝は期年なり。兵の加うる所の者は、必ず無道の國なり。故に能く戰い勝ちて報いられず、地を取りて反されず。民 疾疫せず、將 夭死せず、五穀 豐昌、風雨 時節あり。戰い外に勝ちて、福 內に生ず。是の故に名 必ず成りて而る後に餘害無きなり。
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『淮南子』兵略訓兵の勝敗は、本 政に在り。政 其の民に勝ちて、下 其の上に附けば、則ち兵 強し。民 其の政に勝ちて、下 其の上に畔けば、則ち兵 弱し。故に德義 以て天下の民を懷くるに足り、事業 以て天下の急に當たるに足り、選舉 以て賢士の心を得るに足り、謀慮 以て強弱の勢を知るに足る。此れ必勝の本なり。地 廣く人 眾きも、以て強と爲すに足らず。甲 堅く兵 利きも、以て勝と爲すに足らず。城 高く池 深きも、以て固と爲すに足らず。令 嚴に刑 繁きも、以て威と爲すに足らず。存の政を爲す者は、小なりと雖も必ず存す。亡の政を爲す者は、大なりと雖も必ず亡ぶ。
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『淮南子』兵略訓權勢 必ず形れ、吏卒 專精し、良を選び才を用い、官 其の人を得、計 定まり謀 決し、死生に明らかに、舉錯得失、振驚せざる莫し。故に攻むるに沖隆雲梯を待たずして城 拔け、戰うに兵を交え刃を接するに至らずして敵 破る。必勝の攻めに明らかなればなり。故に兵 必ず勝たざれば、苟くも刃を接せず。攻めて必ず取らざれば、苟くも發を爲さず。故に勝 定まりて而る後に戰い、鈴 縣けて而る後に動く。故に眾 聚まりて虛しく散ぜず、兵 出でて徒らに歸らず。唯だ一動する無し。動けば則ち天を淩ぎ地を振るう。泰山を抗げ、四海を蕩かし、鬼神 移徙し、鳥獸 驚駭す。此くの如くんば、則ち野に校兵無く、國に守城無し。
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『淮南子』兵略訓是の故に善く守る者は與に禦する無く、善く戰う者は與に鬥う無し。禁舍開塞の道に明らかに、時勢に乘じ、民欲に因りて、天下を取る。故に善く政を爲す者は其の德を積み、善く兵を用うる者は其の怒を畜う。德 積みて民 用う可く、怒 畜えて威 立つ可きなり。故に文の加うる所の者 淺ければ、則ち勢の勝つ所の者 小なり。德の施す所の者 博ければ、而ち威の制する所の者 廣し。威の制する所の者 廣ければ、則ち我 強くして敵 弱し。故に善く兵を用うる者は、先ず敵を弱くして而る後に戰う者なり。故に費 半ばならずして功 自ら倍するなり。
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『淮南子』兵略訓故に善く兵を用うる者は、敵の虛を見れば、乘じて假す勿かれ、追いて舍く勿かれ、迫りて去る勿かれ。其の猶猶たるを擊ち、其の與與たるを陵ぐ。疾雷は耳を塞ぐに及ばず、疾霆は目を掩うに暇あらず。善く兵を用うるは、聲の響と、鏜の鞈とのごとし。眯するも撫するに給せず、呼ぶも吸するに給せず。此の時に當たりて、仰ぎて天を見ず、俯して地を見ず。手 戈を麾かず、兵 盡くは拔かず。之を擊つこと雷の若く、之に薄ること風の若く、之を炎くこと火の若く、之を淩ぐこと波の若し。敵は靜かにして其の守る所を知らず、動きて其の爲す所を知らず。故に鼓 鳴り旗 麾けば、當たる者 廢滯崩阤せざる莫し。天下 孰か敢えて威を厲まし節を抗げて其の前に當たる者あらんや。故に人を淩ぐ者は勝ち、人を待つ者は敗れ、人の杓と爲る者は死す。