帝範 / 求賢第三
齊成一匡之業,實資仲父之謀;漢以六合為家,是頼淮隂之䇿。
新字:斉成一匡之業,実資仲父之謀;漢以六合為家,是頼淮陰之策。
書き下し
齊(せい)は一匡(いっきょう)の業(ぎょう)を成(な)すこと、實(まこと)に仲父(ちゅうほ)の謀(はかりごと)に資(と)り、漢(かん)は六合(りくごう)を以(も)って家(いへ)と為(な)すこと、是(こ)れ淮陰(わいいん)の䇿(さく)に頼(よ)る。
現代語訳
斉が天下を一度正すという業を成し遂げたのは、まことに仲父と呼ばれた管仲の謀によるものであり、漢が天下を我が家としたのは、淮陰侯・韓信の策によるものであった。
解説
二十八字だけの短い一章で、直前に挙げた人物の結末が回収される。管仲は縄目にかかっていた囚人であり、韓信は逃亡していた無名の男だった。その二人が、斉の覇業と漢の天下という結果に直接つながっている。ここで太宗が使う言葉は「資る」と「頼る」である。用いてやったのではなく、頼ったのだと書く。桓公が管仲を仲父——父に次ぐ人と呼んだ呼称も、そのまま引かれている。トップが自分の功績として語れるはずの場面で、誰の謀によるものかを名指しで残す。人材論としての『帝範』の姿勢が、この短い一章に出ている。手柄の帰属をどこに置くかが、次に人が集まるかどうかを決めるからである。
この章句が説くこと
仲父管仲韓信手柄の帰属適材適所人材登用
関連する章句
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『長短経』任長管仲曰く「昇降揖譲、進退閑習なるは、臣は隰朋に如かず。請う、立てて以て大行と為せ。土を闢き粟を聚め、地の利を尽くすは、臣は甯戚に如かず。請う、立てて以て司田と為せ。平原広牧、車は轍を結ばず、士は踵を旋らさず、之を鼓して三軍の士、死を視ること帰するが如きは、臣は王子城父に如かず。請う、立てて以て大司馬と為せ。獄を決し中を折り、不辜を殺さず、不罪を誣いざるは、臣は賓胥無に如かず。請う、立てて以て大理と為せ。君の顔色を犯し、諫を進めて必ず忠、死亡を避けず、富貴に撓まざるは、臣は東郭牙に如かず。請う、立てて以て大諫と為せ。君若し国を治め兵を強くせんと欲せば、則ち五子なる者存す。若し覇王たらんと欲せば、則ち夷吾此に在り」と。
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荀子・仲尼篇是くの若くして亡びず、乃ち霸たるは、何ぞや。曰く、於乎、夫の斉の桓公は天下の大節有り。夫れ孰か能く之を亡ぼさん。倓然として管仲の能の以て国を託するに足るを見るは、是れ天下の大知なり。安んじて其の怒りを忘れ、出でて其の讎を忘れ、遂に立てて仲父と為すは、是れ天下の大決なり。立てて以て仲父と為すも、貴戚も之を妒むを敢えてする莫し。之に高・国の位を与うるも、本朝の臣も之を悪むを敢えてする莫し。之に書社三百を与うるも、富人も之を距むを敢えてする莫し。貴賤長少、秩秩焉として、桓公に従いて之を貴び敬わざるは莫し。是れ天下の大節なり。諸侯に一節此くの如き有らば、則ち之を能く亡ぼす莫し。桓公は此の数節を兼ねて尽く之を有つ。夫れ又た何ぞ亡ぶ可けんや。其の霸たるや、宜なるかな。幸いに非ず、数なり。
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呂氏春秋・贊能②管子は束縛せられて魯に在り。桓公、鮑叔を相にせんと欲す。鮑叔曰く、「吾が君、霸王たらんと欲すれば、則ち管夷吾、彼に在り。臣は若かざるなり。」桓公曰く、「夷吾は寡人の賊なり。我を射し者なり。不可なり。」鮑叔曰く、「夷吾は其の君の為に人を射し者なり。君若し得て之を臣とせば、則ち彼も亦た將に君の為に人を射んとせん。」桓公聽かず、強いて鮑叔を相とせんとす。固く辭して相を讓る,桓公果して之を聽く。是に於てか人をして魯に告げしめて曰く、「管夷吾は寡人の讎なり。願わくば之を得て親ら手を加えん。」魯君許諾し、乃ち吏をして其の拳を鞹し、其の目を膠し、之を盛るに鴟夷を以てし、之を車中に置かしむ。齊の境に至るや、桓公、人をして朝車を以て之を迎え、祓うに爟火を以てし、釁するに犧猳を以てし、生かして之と國に如かしむ。有司に命じて廟を除わしめ、筵几して之に薦めて曰く、「孤の夷吾の言を聞きし自り、目は益々明らかに、耳は益々聰なり。孤敢て專らにせず。敢て以て先君に告ぐ。」因りて顧みて管子に命じて曰く、「夷吾、予を佐けよ。」管仲還り走り、再拜稽首して、令を受けて出づ。管子、齊國を治め、事を舉げて功有れば、桓公必ず先づ鮑叔を賞して曰く、「齊國をして管子を得しめし者は、鮑叔なり。」桓公は賞を行うことを知れりと謂う可し。凡そ賞を行うには其の本を欲す。本なれば則ち過ち由りて生ずること無ければなり。
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呂氏春秋・勿躬③管子、桓公に復して曰く、「田を墾き邑を大にし、土を辟き粟を藝え、地力の利を盡くすは、臣、甯遬に若かず。請う置きて以て大田と為さん。登降辭讓にして、進退閑習なるは、臣、隰朋に若かず。請う置きて以て大行と為さん。蚤に入り晏く出で、君の顏色を犯し、諫めを進むること必ず忠に、死亡を辟けず、貴富を重んぜざるは、臣、東郭牙に若かず。請う置きて以て大諫臣と為さん。平原廣域、車は軌を結ばず、士、踵を旋らさず、之に鼓すれば、三軍の士、死を視ること歸るが如きは、臣、王子城父に若かず。請う置きて以て大司馬と為さん。獄を決するに中を折め、不辜を殺さず、無罪を誣いざるは、臣、弦章に若かず。請う置きて以て大理と為さん。君若し國を治め兵を彊くせんと欲せば、則ち五子の者にして足りなん。君、霸王たらんと欲せば、則ち夷吾此に在り。」桓公曰く、「善し。」五子をして皆其の事に任ぜしめ、以て令を管子に受けしむ。十年にして、諸侯を九合し、天下を一匡せしは、皆夷吾と五子の能なり。管子は人臣なり、己の不能に任ぜずして、以て五子の能を盡くせり。況んや人主に於いてをや。人主、能不能の以て民に君たる可きを知れば、則ち幽詭愚險の言、職らざる無く,百官有司の事、力を畢くし智を竭くす。五帝三皇の民に君たるや、下固より力を畢くし智を竭くすに過ぎざるなり。夫れ人に君たりて、其の能・勇・力・誠・信を恃む無きを知れば、則ち之に近し。凡そ君なる者は、平靜に處り、德化に任じて以て其の要を聽く。此くの若くなれば則ち形性彌々羸ちて、耳目愈々精に、百官職を慎みて、敢て愉綖すること莫く、人其の事を事として、以て其の名を充たす。名實相保つ、之を道を知ると謂う。
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『韓非子』外儲說左下第三十三桓公吏を置くことを管仲に問ふ、管仲曰く、「辞に弁察し、貨に清潔にして、人情に習ふこと、夷吾は絃商に如かず、請ふ立てて以て大理と為さん。登降粛譲し、以て礼を明らかにして賓を待つこと、臣は隰朋に如かず、請ふ立てて以て大行と為さん。草を墾き邑を仞め、地を辟き粟を生ずること、臣は甯戚に如かず、請ふ以て大田と為さん。三軍既に陣を成し、士をして死を視ること帰するが如くならしむること、臣は公子成父に如かず、請ふ以て大司馬と為さん。顔を犯し諫を極むること、臣は東郭牙に如かず、請ふ立てて以て諫臣と為さん。
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呂氏春秋・任數③有司、事を齊の桓公に請う。桓公曰く、「以て仲父に告げよ。」有司又請う。公曰く、「仲父に告げよ。」是くの若くすること三たび。習者曰く、「一にも則ち仲父、二にも則ち仲父、易きかな君為ること。」桓公曰、「吾未だ仲父を得ざれば則ち難し、已に仲父を得し後は、曷為れぞ其れ易からざらん。」桓公、管子を得てすら、事猶ほ大いに易し。又況んや道術を得るに於いてをや。
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