信心銘 / 第二十二章
宗非促延 一念萬年 無在不在 十方目前 極小同大 忘絕境界
新字:宗非促延 一念万年 無在不在 十方目前 極小同大 忘絶境界
書き下し
宗(しゅう)は促延(そくえん)に非(あら)ず、一念(いちねん)萬年(まんねん)なり。在(あ)ると在(あ)らざると無(な)く、十方(じっぽう)目前(もくぜん)なり。極小(ごくしょう)は大(だい)に同(おな)じく、境界(きょうがい)を忘絕(ぼうぜつ)す。
現代語訳
根本は短い長いに関わらず、一念がそのまま万年である。有るも無いもなく、あらゆる方角がそのまま目の前にある。極めて小さいものは大きいものと同じで、境目が消え失せている。
解説
時間と空間の分割が、ここで外される。「一念萬年」——一瞬の念がそのまま万年であるという。長く続けたから偉いのでも、短いから浅いのでもない。第六章の「須臾も返照すれば」と呼応しており、時間の量を成果の尺度から外す一貫した態度が読み取れる。「十方目前」は空間について同じことを言う。遠い彼方も、いまここの目の前と別ではない。そして「極小同大」。大小は比べる基準があってはじめて生じるが、第十七章で所以=基準は消されている。基準が無ければ大小は無く、「忘絕境界」、境目そのものが消える。修行の年数、規模の大小、距離の遠近——人が実績を測るときに使う目盛りが、ここで一通り無効にされている。
この章句が説くこと
一念万年十方目前極小同大境界