呂氏春秋 / 知度⑥
夫成王霸者固有人,亡國者亦有人。桀用羊辛,紂用惡來,宋用駃唐,齊用蘇秦,而天下知其亡。非其人而欲有功,譬之若夏至之日而欲夜之長也,射魚指天而欲發之當也,舜、禹猶若困,而況俗主乎?
新字:夫成王覇者固有人,亡国者亦有人。桀用羊辛,紂用悪来,宋用駃唐,斉用蘇秦,而天下知其亡。非其人而欲有功,譬之若夏至之日而欲夜之長也,射魚指天而欲発之当也,舜、禹猶若困,而況俗主乎?
書き下し
夫れ王霸を成す者は固より人有り、國を亡う者も亦た人有り。桀は羊辛を用い、紂は惡來を用い、宋は唐鞅を用い、齊は蘇秦を用いて、天下、其の亡びんことを知る。其の人に非ずして功有らんと欲するは、之を譬うるに、夏至の日にして、夜の長からんことを欲し、魚を射るに天を指して、之に發して當らんと欲するが若きなり。舜・禹すら猶若ほ困しむ。而るに況んや俗主をや。
現代語訳
そもそも王者・覇者の業を成す者にはそれにふさわしい人物がいるが、国を滅ぼす者にもそれなりの人物がいる。桀は羊辛を用い、紂は悪来を用い、宋は唐鞅を用い、斉は蘇秦を用いた。それによって天下は、これらの国が滅びるのを見て取った。ふさわしい人物でないのに功を挙げようとするのは、たとえば夏至の日に夜が長くなることを望み、魚を射るのに空を指して当たることを望むようなものだ。そんなやり方では、舜や禹でさえ行き詰まる。まして凡庸な君主ならなおさらである。
解説
知度篇を締めるこの段は、前段の賢者を得て栄える論の裏面として、よからぬ人物を用いて滅びる例を並べます。桀と羊辛、紂と悪来、宋と唐鞅、斉と蘇秦——不適切な人物を側近に据えた国は、天下から滅亡を予見されたというのです。ふさわしくない人物で功を挙げようとするのは、夏至に夜の長さを望み、空に向けて魚を射るようなもので、舜・禹でさえ成し遂げられないと断じます。誰を登用し誰を退けるかが国家の存亡を分けるという指摘は、人選そのものが成果を決めるという意味で、組織のトップ人事や参謀選びの重さを説く現代の教訓にも重なります。
この章句が説くこと
知度桀紂悪来蘇秦人選亡国
関連する章句
-
尚書・立政今自り立政するに、其れ憸人を以てすること勿かれ、其れ惟れ吉士のみ。
-
説苑・奉使蔡師強・王堅をして楚に使いせしむ。楚王之を聞きて曰く、「人の名章章たる者多し、獨り師強王堅と爲すか。」趣かに之に見えんとし、次を以てせず、其の人の狀を視るに、其の名を疑いて其の聲を醜しとし、又た其の形を惡む。楚王大いに怒りて曰く、「今蔡人無きか。國伐つべきなり。人有りて遣わさざるか。國伐つべきなり。端に此を以て寡人を誡むるか。國伐つべきなり。」故に二使を發するに、三たび伐たんと謀る者を見る、蔡なり。
-
尚書・冏命慎みて乃の僚を簡べ、巧言令色、便辟側媚を以てすること無かれ、其れ惟れ吉士なるべし。
-
牧民忠告・拜命今官を選ぶ者は大率(おおむ)ね内を重んじて外を軽んず、殊に知らず漢の宣帝の民を富ます所以、唐の太宗の家給し人足るる所以は、皆民を牧するの長を重んずるに由るが故なるを。嗚呼、民を牧するの長、其の重きこと此くの若し、乃ち泛焉(はんえん)として選び、懵焉(ぼうえん)として授く、奚(なん)為れぞ是れを慮らざるや。
-
尚書・咸有一德官に任ずるには惟れ賢材、左右には惟れ其の人。
-
『韓非子』説疑第四十四其の臣の意行を知らずして、之に任ずるに國を以てす。故に之を小にして名卑しく地削られ、之を大にして國亡び身死す。臣を用うるに明らかならざればなり。