呂氏春秋 / 大樂①
音樂之所由來者遠矣,生於度量,本於太一。太一出兩儀,兩儀出陰陽。陰陽變化,一上一下,合而成章。渾渾沌沌,離則復合,合則復離,是謂天常。天地車輪,終則復始,極則復反,莫不咸當。日月星辰,或疾或徐,日月不同,以盡其行。四時代興,或暑或寒,或短或長。或柔或剛。萬物所出,造於太一,化於陰陽。萌芽始震,凝𣽬以形。形體有處,莫不有聲。聲出於和,和出於適。和適,先王定樂由此而生。
新字:音楽之所由来者遠矣,生於度量,本於太一。太一出両儀,両儀出陰陽。陰陽変化,一上一下,合而成章。渾渾沌沌,離則復合,合則復離,是謂天常。天地車輪,終則復始,極則復反,莫不咸当。日月星辰,或疾或徐,日月不同,以尽其行。四時代興,或暑或寒,或短或長。或柔或剛。万物所出,造於太一,化於陰陽。萌芽始震,凝𣽬以形。形体有処,莫不有声。声出於和,和出於適。和適,先王定楽由此而生。
書き下し
音樂の由りて來たる所の者は遠し。度量に生じ、太一に本づく。太一は兩儀を出だし、兩儀は陰陽を出だす。陰陽は變化して、一上一下、合して章を成す。渾渾沌沌として、離るれば則ち復た合い、合えば則ち復た離る。是を天常と謂う。天地は車輪のごとし。終れば則ち復た始まり、極まれば則ち復た反り、咸な當たらざるは莫し。日月星辰、或いは疾く或いは徐ろに、日月は同じからずして、以て其の行を盡くす。四時は代々る興りて、或いは暑く或いは寒く、或いは短かく或いは長く、或いは柔らかく或いは剛し。萬物の出づる所は、太一に造まり、陰陽に化す。萌芽始めて震き、凝寒して以て形す。形體は處有れば、聲有らざるは莫し。聲は和に出で、和は適に出づ。和適、先王樂を定めて、此に由りて生ず。
現代語訳
音楽の由来ははるかに久しい。それは度量(一定の秩序)から生じ、太一(宇宙の根源)に根ざす。太一は天地の両儀を生み、両儀は陰陽を生む。陰陽は変化し、あるものは上りあるものは下り、合わさって形を成す。混沌としながら、離れてはまた合い、合ってはまた離れる。これを天の常道という。天地は車輪のようで、終わればまた始まり、極まればまた戻り、すべてが理にかなっている。日月星辰は速く、あるいはゆるやかに巡り、日と月は異なりつつそれぞれの運行を全うする。四季は代わる代わる興り、暑くも寒くも、短くも長くも、柔らかくも剛くもなる。万物は太一に始まり陰陽によって変化する。芽が動き出し、寒さに凝って形をなす。形ある体には必ず音がある。音は和から生まれ、和は適から生まれる。先王が音楽を定めたのも、この和と適から生じたのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
司馬法・天子之義上下相報ずること、此くの若きは、和の至りなり。意を得れば則ち愷歌(がいか)す、喜びを示すなり。伯を霊台に偃(ふ)せ、民の労に荅(こた)う、休みを示すなり。
-
『十七条憲法』第一条一に曰わく、和(わ)を以(も)って貴(たっと)しと為(な)し、忤(さから)うこと無きを宗(むね)と為(せ)よ。人は皆(みな)党(たむら)有り、亦(また)達(さと)れる者少なし。是(ここ)を以て、或(あるい)は君父(くんぷ)に順(したが)わず、乍(あるいは)隣里(りんり)に違(たが)う。然(しか)れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、則(すなわ)ち事理(じり)自(おのずか)ら通(つう)ず。何事(なにごと)か成らざらん。
-
『武訓』下・第14段師に克つこと、和にあり。衆にあらずと、古人いへり。いふ意は、軍にかつには、士卒將に和順にして、其の下知にそむかず、一同にちからを合せて、身ををしまずして戰ふにあり。大軍なりとて、たのむべからず。若、士卒の心、將に思ひつかず、そむきはなれて、其の力を同じくせずして、一に和せずんば、百萬の衆ありても、軍にかちがたし。和とは和合なり。天地和合すれば、萬物生ず。九族和合すれば、家道行はる。君臣和合すれば、國家平らかなり。兵を用ふるは、まことに武威を貴ぶ。しかれども、仁義の道なければ、諸人の心從はず。武を用ひがたし。
-
『呻吟語』内篇・倫理・惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す人子の和氣・愉色・婉容、發し得て深き時、養ひ得て定まる時、父母の冷面寒鐵、雷霆震怒に任せて、只だ是れ這の一腔の溫意、一面の春風なれば、則ち自ら回らざるの天無く、自ら屢〻變ずるの天無し。讒譖何に由りてか入らん、嫌隙何に由りてか作らん。其の次は敬慎に如くは莫し。夔夔齋栗は、敬慎の至りなり、故に瞽瞍も亦た允に若へり。溫和は人に示すに愛す可きを以てし、父母の惡怒を消融す。敬慎は人に示すに矜れむ可きを以てし、父母の悲憐を激發す。所謂誠意を積みて以て之を感動する者は、和を養ひ敬を致すの謂ひなり。蓋し親を格すの功は、惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す。至性純孝の者に非ざれば能はず。敬慎は猶ほ勉強す可きのみ。而今の人子は涼薄の色、惰慢の身、驕蹇の性を以てし、父母の怒りを犯すに及びて、既に挽回するを肯んぜず、又倨傲にして以て之を甚だしくす。此れ其の人は孝弟の外に在り、故に論ずるに足らず。即ち平日溫愉の子有るも、父母の悅ばざるに當たりて亦た慍見し、或いは疑ひを生じて怒りを遷す者、或いは意に遷怒無くして嫌を避けざる者、或いは善く嫌を避けずして愈〻避けて愈〻嫌を冒す者あり。隙を積みて釁を成し、遂に不祥を致す。豈に父母の慈ならざらんや。此れ孤臣孽子の法戒、志を堅くし仁に熟するの妙道なり。
-
『慎思録』巻之一天地は大寒大暑、大風大雨、迅雷地震、大変の時に方ると雖も、其の太和を失はず。是を以て万物を発育して、生理息まず。人は艱難多事の時、窮困危変の時に方り、横逆払戻の事に遇ふと雖も、従容自得、随処にして之を楽しむの工夫を忘るべからず。中庸の所謂君子は其の位に素して行ひ、入るとして自得せざること無しといふ者なり。苟も此くの如くならざれば、則ち天地の和気と相似ず。
-
『弁名』中庸和衷周礼の六徳の和の如きは、徳の名なり。人学びて以て徳を成すに、此の六徳の別有るを言ふなり。柳下恵の和の如きも、亦た同じ。皆其の物と相和順して忤違せざるを謂ふなり。以て司空の材と為す者は、司空は水土百工の事を掌る。百工は皆金木皮革百物の性に順ひて以て其の器を作る。故に巽順相入りて、能く物の性に和するに非ずんば、則ち其の事を掌ること能はざるなり。「允に其の中を執れ」と曰ふが如きは、天子の事を行ふを謂ふなり。古は中を執るを以て人君の道と為す。故に亦た天子の事を行ふを称して中を執ると為す。爾らずんば、堯曰・禹謨、文意皆協はず。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る