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呂氏春秋 / 貴生④

魯君聞顏闔得道之人也,使人以幣先焉。顏闔守閭,鹿布之衣,而自飯牛。魯君之使者至,顏闔自對之。使者曰:「此顏闔之家邪?」顏闔對曰:「此闔之家也。」使者致幣,顏闔對曰:「恐聽繆而遺使者罪,不若審之。」使者還反審之,復來求之,則不得已。故若顏闔者,非惡富貴也,由重生惡之也。世之人主,多以富貴驕得道之人,其不相知,豈不悲哉!

新字:魯君聞顏闔得道之人也,使人以幣先焉。顏闔守閭,鹿布之衣,而自飯牛。魯君之使者至,顏闔自対之。使者曰:「此顏闔之家邪?」顏闔対曰:「此闔之家也。」使者致幣,顏闔対曰:「恐聴繆而遺使者罪,不若審之。」使者還反審之,復来求之,則不得已。故若顏闔者,非悪富貴也,由重生悪之也。世之人主,多以富貴驕得道之人,其不相知,豈不悲哉!

書き下し

魯君、顏闔が得道の人なるを聞くや、人をして幣を以て先だたしむ。顏闔、閭を守り、鹿布の衣にして、自ら牛を飯う。魯君の使者至る。顏闔自ら之に對う。使者曰く、「此れ顏闔の家か。」顏闔對えて曰く、「此れ闔の家なり。」使者、幣を致す。顏闔對えて曰く、「聽くこと繆りて、使者に罪を遺さんことを恐る。之を審らかにするに若かず。」使者還反りて之を審らかにし、復た來たりて之を求むれば、則ち得ざるのみ。故に顏闔の若き者は、富貴を惡むに非ざるなり。生を重んずるに由りて之を惡むなり。世の人主は、多く富貴を以て得道の人に驕る。其の相知らざること、豈に悲しからずや。

現代語訳

魯の君主は、顔闔が道を体得した人物だと聞き、使者に礼物を持たせて先に遣わした。顔闔は路地の門番のような粗末な住まいに暮らし、鹿の粗布の衣を着て、自分で牛を飼っていた。魯君の使者が到着すると、顔闔みずから応対した。使者が『ここは顔闔の家か』と問うと、顔闔は『これは闔の家です』と答えた。使者が礼物を差し出すと、顔闔は『聞き違いで、あなたに人違いの罪を負わせては困ります。よく確かめられたほうがよい』と言った。使者が帰って確かめ、もう一度来て彼を求めたときには、もう見つからなかった。だから顔闔のような人は、富貴を嫌うのではない。生命を重んじるからこそ、それを避けたのだ。世の君主の多くは、富貴をかさに着て道を得た人に驕り高ぶる。互いに理解し合えないのは、なんと悲しいことではないか。

解説

この段は、魯君に招かれた賢者・顔闔が、礼物を持った使者をやり過ごし、姿を隠してしまった逸話です。粗末な住まいで牛を飼って暮らす顔闔は、自分だと名乗りながらもわざと確認を促し、その隙に立ち去ります。呂氏春秋はこれを、彼が富貴を憎んだのではなく、生命を重んじるがゆえに仕官の煩わしさや危険を避けたのだと説きます。あわせて、富貴をかさに賢者に驕る君主が、こうした人物の心を理解できない悲しさを嘆きます。生を貴ぶ思想の一例です。現代でも、地位や報酬より自分の生き方を守る選択の是非、また権威で人を測ろうとする側の限界を考えさせてくれます。

この章句が説くこと

貴生顔闔魯君富貴隠者得道

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