韓非子 / 存韓第二
且臣聞之、「唇亡則齒寒。」夫秦・韓、不得無同憂、其形可見。
書き下し
且つ臣之を聞く、『唇亡ぶれば則ち齒寒し。』夫れ秦・韓は憂いを同じくする無きを得ず、其の形見る可し。
現代語訳
さらに私は「唇がなくなれば歯が寒い」と聞いております。秦と韓は、憂いを同じくせざるを得ない(運命共同体である)ことは、その状況を見れば明らかです。
解説
「唇がなくなれば歯が寒くなる、という言葉を聞いている。秦と韓は憂いを共にせざるを得ない間柄であり、そのことは形を見れば明らかだ」という一節です。「唇亡歯寒」とは、密接に支え合う二つのものの片方が失われれば、もう片方も必ず痛手を受けるという教えです。会社と大事な取引先、隣近所同士、あるいは夫婦や親子のような近しい間柄も同じです。自分の都合だけを優先して、支え合っている相手を切り捨てたり見捨てたりすれば、巡り巡って自分自身も同じ寒さにさらされることになります。持ちつ持たれつの関係にあるときほど、相手の苦しみを自分のこととして受け止める姿勢が、結局は自分自身を守ることにつながるのです。
この章句が説くこと
運命共同体サプライチェーン部門間連携共存共栄Win-Win全体最適
関連する章句
-
『韓非子』老第二十一脣亡ぶれば而ち齒寒し。
-
貞観政要・君臣鑑戒貞観三年、太宗侍臣に謂いて曰く、「君臣は本と治乱を同じくし、安危を共にす。若し主は忠諫を納れ、臣は直言を進めば、斯れ故に君臣は契を合わす。古来重んずる所なり。若し君自ら賢とし、臣匡正せずんば、危亡せざらんと欲するも、得べからざるなり。君其の国を失えば、臣も亦た独り其の家を全うする能わず。隋の煬帝の暴虐に至るが如きは、臣下は口を鉗ざす。卒に其の過ちを聞かざらしめ、遂に滅亡に至る。虞世基等も尋いで亦た誅死せり。前事遠からず。朕と卿等と、慎まざるを得べけんや。後の嗤う所と為る無かれ」と。
-
『韓非子』十過第十貪愎にして利を喜むは、則ち國を滅ぼし身を殺すの本なり。
-
『韓非子』外儲說左上第三十二夫れ庸を賣いて播耕する者は、主人家を費やして食を美にし...庸客力を致して疾く耘耕し...皆な自ら為にするの心を挟めばなり。
-
論語・泰伯篇曾子曰く、「士は以て弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任と為す、亦重からずや。死して後已む、亦遠からずや」と。
-
老子・第47章戸を出でずして天下を知り、牖を闚わずして天道を見る。其の出づること彌々遠ければ、其の知ること彌々少なし。是を以て聖人は行かずして知り、見ずして名づけ、為さずして成す。