韓非子 / 喻老第二十一
脣亡而齒寒,虞、虢相救,非相德也。
新字:脣亡而歯寒,虞、虢相救,非相徳也。
書き下し
脣亡ぶれば齒寒し。虞・虢の相救ふは、相德とするに非ざるなり。
現代語訳
唇がなくなれば、歯は寒々とする。虞と虢が互いに救い合ったのは、互いに恩を売るためではない(自国が立ちゆかなくなるからである)。
解説
晋が虢を討つために虞に道借りを求めた。宮之奇は「(虞と虢は唇と歯の関係)唇が亡びれば歯が寒い。今日虢が滅びれば、明日は虞も滅びる」と諫めたが、虞君は目先の利益(垂棘の壁)に目が眩み、聞き入れなかった。結局、虢を滅ぼした晋は、帰りがけに虞を滅ぼした。 目先の小さな利益のために、共倒れのリスク(脣亡齒寒)や、戦略的な警告(宮之奇)を無視することの危険性。
この章句が説くこと
サプライチェーン共存共栄戦略的視点短期利益と長期利益リスク分析
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『春秋左氏伝』僖公五年 唇亡歯寒晉侯復た道を虞に假りて以って虢を伐たんとす。宮之奇諫めて曰く、「虢は虞の表なり。虢亡びなば、虞必ず之に從はん。晉は啟く可からず、寇は翫(あなど)る可からず。一たびを之れ甚だしと謂ふ、其れ再びす可けんや。諺に所謂『輔車相ひ依り、脣亡ぶれば齒寒し』とは、其れ虞虢の謂ひなり」と。公曰く、「晉は吾が宗なり、豈に我を害せんや」と。對へて曰く、「大伯・虞仲は、大王の昭なり。大伯從はず、是を以って嗣がず。虢仲・虢叔は、王季の穆なり、文王の卿士と為り、勳王室に在り、盟府に藏む。將に虢を是れ滅ぼさんとす、何ぞ虞を愛せんや。且つ虞は能く桓・莊よりも親しからんや。其れ之を愛するや、桓・莊の族何の罪ありて、以って戮と為すや、唯だ偪(せま)ればならずや。親にして寵を以って偪る、猶ほ尚ほ之を害す、況んや國を以ってせんをや」と。
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『新序』善謀第九宮之奇諫めて曰く、晉の使者、其の幣重く、其の辭卑し。必ず虞に便ならず。語に曰く、脣亡ぶれば則ち齒寒し、と。故に虞・虢の相い救うは、相い賜を爲すに非ざるなり。今日虢を亡ぼさば、明日虞を亡ぼさん、と。公聽かず、遂に其の幣を受けて之に道を借す。旋りて歸る。四年、反りて虞を取る。荀息馬を牽き璧を抱きて前みて曰く、臣の謀如何、と。獻公曰く、璧は則ち猶お是のごとし。而れども吾が馬の齒は加ミ長ぜり、と。晉の獻公荀息の謀を用いて虞を禽らう。虞は宮之奇の謀を用いずして亡ぶ。故に荀息は覇王の佐に非ず、戰國并兼の臣なり。宮之奇の若きは則ち忠臣の謀と謂う可きなり。
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呂氏春秋・權勳③昔者、晉の獻公、荀息をして道を虞に假らしめ、以て虢を伐たんとす。荀息曰く、「請う、垂棘の璧と屈産の乘とを以て、以て虞公に賂い、而して道を假ることを求めん。必ず得可からん。」獻公曰く、「夫れ垂棘の璧は、吾先君の寶なり。屈産の乘は、寡人の駿なり。若し吾が幣を受けて吾に道を假さずんば、將に奈何せんとする。」荀息曰く、「然らず。彼若し吾に道を假さずんば、必ず吾に受けざらん。若し我に受けて我に道を假さば、是れ猶ほ之を內府に取りて之を外府に藏むるがごとく、猶ほ之を內皁に取りて之を外皁に著ぐがごときなり。君奚ぞ患えん。」獻公、之を許す。乃ち荀息をして屈産の乘を以て庭實と為し、而も加うるに垂棘の璧を以てし、以て道を虞に假りて虢を伐たしめんとす。虞公、寶と馬とを濫りて之を許さんと欲す。宮之奇諫めて曰く、「許す可からざるなり。虞と虢とは、車の輔有るが若きなり。車は輔に依り、輔も亦た車に依る。虞と虢の勢は是れなり。先人に言える有り、曰く、『脣竭くれば齒寒し。』夫れ虢の亡びざるは、虞を恃めばなり、虞の亡びざるも、亦た虢を恃めばなり。若し之に道を假さば、則ち虢朝に亡びて虞夕べに之に從わん。奈何ぞ其れ之に道を假さんや。」虞公、聽かずして、之に道を假す。荀息、虢を伐ち、之に克つ。還反りて虞を伐ち、又之に克つ。荀息、璧を操り馬を牽きて報ず。獻公喜びて曰く、「璧は則ち猶ほ是れなり、馬の齒も亦た薄長じたり。」故に曰く、小利は、大利の殘なり、と。
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