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牧民忠告 / 慎獄

天地之德曰好生,聖元體之,以有天下。諸在縲紲無家者,皆給之糧,惟縣獄不給也。意者縣奭待報之官府,故令略詰其然,而上之州。比見為州者,往往為吏之所欺,吹求不受,以致瘐死於縣獄。夫罪不至死,而以己私繆殺之,不仁甚矣。為州若府者,尚深戒之。

新字:天地之徳曰好生,聖元体之,以有天下。諸在縲紲無家者,皆給之糧,惟県獄不給也。意者県奭待報之官府,故令略詰其然,而上之州。比見為州者,往往為吏之所欺,吹求不受,以致瘐死於県獄。夫罪不至死,而以己私繆殺之,不仁甚矣。為州若府者,尚深戒之。

書き下し

天地の德を好生(こうせい)と曰う、聖元之を體し、以て天下を有(たも)つ。諸(もろもろ)の縲紲(るいせつ)に在りて家無き者は、皆之に糧を給す、惟だ縣獄のみ給せず。意うに縣は奭(まさ)に報を待つの官府にして、故に令(ここ)に略(ほぼ)其の然るを詰(ただ)し、之を州に上(のぼ)せしむ。比(このごろ)州為(た)る者を見るに、往往にして吏の欺く所と為り、吹求(すいきゅう)して受けず、以て縣獄に瘐死(ゆし)するに致る。夫れ罪死に至らずして、己が私を以て之を繆殺(びゅうさつ)す、不仁甚だし。州若(も)しくは府為る者、尚(ねが)わくは深く之を戒めよ。

現代語訳

天地の徳を「生を好む」という。元朝の聖なる皇帝はこれを体現し、それによって天下を保っている。牢につながれて身寄りのない者には、すべて糧食を支給するのが定めであるが、県の獄だけはこれを支給していない。思うに、県はまさに上への報告を待つだけの役所であるから、法令ではおおよその事情を確かめさせ、それを州に上申させることにしている。この頃州の役人を見ると、しばしば下級役人に欺かれ、あら探しをして受理せず、そのために県の獄で(囚人が)衰弱して死ぬに至っている。そもそも罪が死刑に値しないのに、自分の私利によって間違って死なせてしまうのは、はなはだ不仁である。州や府の役人は、深くこれを戒めるべきである。

解説

「囚糧」は、制度の隙間で見落とされがちな「県獄には糧食支給の規定がない」という手続き上の穴を鋭く指摘し、それが実際に囚人の餓死という取り返しのつかない結果を招いている実態を告発する一条である。張養浩は、上申を怠る州の役人の保身や怠慢が、規定にない県獄の囚人を見殺しにしていると分析し、天地の徳である「好生」の理念に照らして厳しく戒める。制度の建前と現場の運用のギャップが、最も弱い立場の人間の命を奪うという構造は普遍的である。現代の組織でも、部門間の管轄の隙間に落ちた案件が放置され、深刻な被害につながることがある。管理職は制度の穴を見つけたら自ら手当てする責任を負う。

この章句が説くこと

囚糧制度の隙間好生責任

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