呂氏春秋 / 行論②
堯以天下讓舜。鯀為諸侯,怒於堯曰:「得天之道者為帝,得地之道者為三公。今我得地之道,而不以我為三公。」以堯為失論。欲得三公。怒甚猛獸,欲以為亂。比獸之角,能以為城;舉其尾,能以為旌。召之不來,仿佯於野以患帝。舜於是殛之於羽山,副之以吳刀。禹不敢怨,而反事之,官為司空,以通水潦,顏色黎黑,步不相過,竅氣不通,以中帝心。
新字:堯以天下譲舜。鯀為諸侯,怒於堯曰:「得天之道者為帝,得地之道者為三公。今我得地之道,而不以我為三公。」以堯為失論。欲得三公。怒甚猛獣,欲以為乱。比獣之角,能以為城;舉其尾,能以為旌。召之不来,仿佯於野以患帝。舜於是殛之於羽山,副之以吳刀。禹不敢怨,而反事之,官為司空,以通水潦,顏色黎黒,歩不相過,竅気不通,以中帝心。
書き下し
堯、天下を以て舜に讓る。鯀、諸侯と為り、堯に怒りて曰く、「天の道を得る者は帝為り、地の道を得る者は三公為り。今我地の道を得たるも、我を以て三公と為さず。」堯を以て論を失せりと為し、三公を得んと欲す。其の猛獸を怒し、以て亂を為さんと欲す。獸の角を比べて、能く以て城と為し、其の尾を舉げて、能く以て旌と為す。之を召すも來たらず、野に仿佯して以て帝を患えしむ。舜、是に於て之を羽山に殛し、之を副すに呉刀を以てす。禹、敢て怨みずして、反て之に事え、官は司空と為り、以て水潦を通じ、顏色黎黑、歩すること相過ぎず、竅氣通ぜず、以て帝の心に中る。
現代語訳
堯が天下を舜に譲った。鯀は諸侯であったが、堯に怒って言った、「天の道を得た者が帝となり、地の道を得た者が三公となる。今私は地の道を得たのに、私を三公にしない」。堯が人選を誤ったとして、三公になろうとした。猛獣のように怒り、乱を起こそうとした。獣の角を並べて城とし、その尾を掲げて旗とすることができた。召しても来ず、野をさまよって帝を悩ませた。舜はそこで鯀を羽山で処刑し、呉刀で処断した。禹は父を殺されてもあえて怨まず、かえって舜に仕え、官は司空となって水害を治め、顔色は黒ずみ、歩みは急がず、体の気も通じないほど働いて、帝の心にかなった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
尚書・說命中惟れ治乱は庶官に在り。官は私昵に及ぼさず、惟れ其の能のみ。爵は悪徳に及ぼす罔く、惟れ其の賢のみ。
-
『韓非子』外儲説右上第三十四吳起の愛妻を出だせる、文公の顛頡を斬れるは、皆な其の情に違える者なり。
-
呂氏春秋・行論①人主の行いは布衣と異なり、勢い便ならず、時利あらざれば、讎に事えて以て存せんことをを求め、民の命を執る。民の命を執るは、重任なり。志を快くするを以て故と為すを得ず。故に布衣、此を行えば、國に指けられ、鄉曲に容らられず。
-
『列子』楊朱篇鮌は水土を治むるも、績用就らず、諸を羽山に殛す。禹は業を纂ぎ讐に事う。惟だ土功に荒れ、子產まるるも字せず、門を過ぐるも入らず。身體偏枯し、手足胼胝す。舜の禪を受くるに及び、宮室を卑くし、紱冕を美にし、戚戚然として以て死に至る。此れ天人の憂苦なる者なり。
-
呂氏春秋・求人②堯、天下を舜に傳うるや、之に諸侯に禮せしめ、妻わすに二女を以てし、臣とするに十子を以てし、身、北面してこれを朝せんことを請うは、至卑なり。伊尹は、庖廚の臣なり。傅說は、殷の胥靡なり。皆上りて天子に相たるは、至賤なり。禹は東して榑木の地、日出の津、青羌の野、攢樹の所、㨉天の山、鳥谷・青丘の鄉、黑齒の國に至り、南して交阯・孫樸・續樠の國、丹粟漆樹ありて、沸水漂漂たる、九陽の山、羽人・裸民の、不死の鄉に至り、西して三危の國、巫山の下、飲露吸氣の民、積金の山、共肱一臂三面の鄉に至り、北して人正の國、夏海の窮、衡山の上、犬戎の國、夸父の野、禺彊の所、積水積石の山に至る。懈墮有らず、其の黔首を憂い、顏色は黎黑にして、竅藏通ぜず、歩むに相過ぎず、以て賢人を求め、地の利を盡くさんと欲するは、至勞なり。陶・化益・真窺・橫革・之交、を得、五人、禹を佐く。故に功績は金石に銘せられ、盤盂に著さる。
-
史記 五帝本紀堯曰く、「誰か此の事に順ふ可き」と。放齊曰く、「嗣子丹朱開明なり」と。堯曰く、「吁、頑凶なり、用ゐず」と。堯又曰く、「誰か可なる者ぞ」と。讙兜曰く、「共工旁く功を聚布す、用ゐる可し」と。堯曰く、「共工は言を善くするも、其の用は僻なり、恭に似て天を漫る、不可なり」と。四嶽鯀を挙げて鴻水を治めしむ、堯以て不可と為すも、嶽彊ひて之を試みんことを請ふ、試みるも功成らず。