韓非子 / 外儲說左上第三十二
對曰:「吳起吮其父之創而父死,今是子又將死也,今吾是以泣。
新字:対曰:「呉起吮其父之創而父死,今是子又将死也,今吾是以泣。
書き下し
吳起其の父の創を吮いて父死せり。今是の子又た將に死せんとするなり。
現代語訳
(以前)呉起様が(私の)夫の傷口の膿を吸い出してくださり、(感激した)夫は(死に物狂いで戦って)戦死しました。今、この子もまた(同じように)戦死するでしょう。
解説
リーダー(呉起)が部下(傷者)の傷の膿を吸うほどの「過剰な配慮(恩義)」を見せることは、一見すると素晴らしいリーダーシップに見えます。しかし、部下(やその家族)はそれを「命がけで報いなければならない」という強烈な「心理的負債」として受け取ります。これは、部下を「死(過労や無謀な忠誠)」に追いやる危険な「恩着せがましい」マネジメントであるとも言えます。
この章句が説くこと
恩着せがましい心理的負債過剰な配慮リーダーシップの罠パワハラオーバーコミットメント
関連する章句
-
『韓非子』用人第二十七儀的を釋てて妄に發すれば、中ると雖も小にして巧みならず。法制を釋てて妄に怒れば、殺戮すと雖も姦人恐れず。
-
『驢鞍橋』卷下或人語て曰く、この前、師、予に示して曰く、人は只かしの木が好いぞよ、藤かづらは用にたゝず。紀州に某と云ふ强者あり、国中に聞えたる人切にて、内の者どもに手も見せす、少しの事も許さす切るなり。此人、一日我所に来り、某はかくれなき人切也。是れ悪業とや成るへきと云ふ。我聞て、中々業となるべからす、定めて其方無理には殺しめされまい。盗するか、慮外するか、兎角咎なくては殺しめされまいと云ひけれは、彼の人中々其通也と云ふ。我良有りて、但し傍輩の中又余所の者には、其方機に合はぬ慮外者抔なしや。答て曰く、有る也。我それをも殺しめさるゝやと云へは、彼の人然らすと云ふ。その時、我扨て扨て鄙怯千万なる人哉、人切ならは、なせ夫れをきりめされんず。他人の慮外者はきりえすして、内の者ともの主とて、たつはいしはい廻る者とも、少しのことに切る様なる鄙怯なることあらんやと、强くはぢしめければ、彼の人ひしとうけ、一腰をぬき金を打て、其後は終に人をきらず。樫の木はをれ端各別也。
-
『韓非子』孤憤第十一其の罪過を以て誣(し)ふ可き者は、公法を以て之を誅し、其の罪過を以て被らしむ可からざる者は、私劒を以て之を窮む。是れ法術に明らかにして主上に逆らふ者は、吏誅に僇(りく)せられずんば、必ず私劒に死せん。朋黨比周して以て主を弊(おお)ひ、言を曲げて以て私を便にする者は、必ず重人に信ぜられん。故に其の功伐を以て借る可き者は、官爵を以て之を貴くす。
-
『韓非子』安危第二十五安術に七有り、危道に六有り。安術は、一に曰く賞罰は是非に隨ふ、二に曰く禍福は善惡に隨ふ、三に曰く死生は法度に隨ふ、四に曰く賢不肖有りて愛惡無し、五に曰く愚智有りて非譽無し、六に曰く尺寸有りて意度無し、七に曰く信有りて詐無し。危道は、一に曰く繩の内に斵削(たくさく)す、二に曰く法の外に斷割す、三に曰く人の害する所を利とす、四に曰く人の禍とする所を樂しむ、五に曰く人を安んずる所に危くす、六に曰く愛する所親しまず、惡む所䟽(うと)からず。
-
史記 孫子呉起列伝起の将為るや、士卒の最下の者と衣食を同じくす。臥するに席を設けず、行くに騎乗せず、親ら贏糧を裹ひ、士卒と労苦を分かつ。卒に疽を病む者有り、起、為に之を吮ふ。卒の母、聞きて之に哭す。人曰く、「子は卒なり、而るに将軍自ら其の疽を吮ふ、何ぞ哭するを為す」と。母曰く、「然るに非ざるなり。往年、呉公、其の父を吮ひ、其の父、戦ひて踵を旋さず、遂に敵に死す。呉公今又其の子を吮ふ。妾、其の死所を知らず。是を以て之を哭す」と。
-
説苑・復恩呉起魏の将と為り、中山を攻む、軍人に疽を病む者有り、呉子自ら其の膿を吮ふ、其の母之を泣く、旁人曰く、「将軍而の子に於て是くの如し、尚ほ何為れぞ泣くや」と。対へて曰く、「呉子此の子の父の創を吮ひて之を注水の戦に殺せり、戦ひて踵を旋らさずして死せり、今又之を吮ふ、安んぞ是の子の何くにか戦ひて死せんかを知らんや、是を以て之を哭するなり」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る