帝範 / 審官第四
立國制人,資股肱以合徳;宣風道俗,俟眀賢而寄心。列宿騰天,助隂光之夕照;百川决地,添溟渤之深源。海月之深朗,猶假物而為大。君人御下,統極理時,獨運方寸之心,以括九區之内,不資衆力何以成功?必須明職審賢,擇材分禄。得其人則風行化洽,失其用則虧教傷人。故云則哲惟難,良可愼也!
新字:立国制人,資股肱以合徳;宣風道俗,俟明賢而寄心。列宿騰天,助陰光之夕照;百川決地,添溟渤之深源。海月之深朗,猶仮物而為大。君人御下,統極理時,独運方寸之心,以括九区之内,不資衆力何以成功?必須明職審賢,択材分禄。得其人則風行化洽,失其用則虧教傷人。故云則哲惟難,良可慎也!
書き下し
國(くに)を立(た)て人(ひと)を制(せい)するは、股肱(ここう)に資(と)りて以(も)って徳(とく)を合(あ)はせ、風(ふう)を宣(の)べ俗(ぞく)を道(みちび)くは、眀賢(めいけん)を俟(ま)ちて心(こころ)を寄(よ)す。列宿(れっしゅく)天(てん)に騰(あが)りて、隂光(いんこう)の夕照(せきしょう)を助(たす)け、百川(ひゃくせん)地(ち)を决(き)りて、溟渤(めいぼつ)の深源(しんげん)を添(そ)ふ。海月(かいげつ)の深朗(しんろう)なるも、猶(な)ほ物(もの)を假(か)りて大(だい)と為(な)る。人(ひと)に君(きみ)たり下(しも)を御(ぎょ)し、極(きょく)を統(す)べ時(とき)を理(をさ)むるに、獨(ひと)り方寸(ほうすん)の心(こころ)を運(めぐ)らし、以(も)って九區(きゅうく)の内(うち)を括(くく)る、衆力(しゅうりょく)に資(と)らずんば何(なに)を以(も)って功(こう)を成(な)さん。必(かなら)ず須(すべか)らく職(しょく)を明(あき)らかにし賢(けん)を審(つまび)らかにし、材(ざい)を擇(えら)び禄(ろく)を分(わ)かつべし。其(そ)の人(ひと)を得(う)れば則(すなは)ち風(ふう)行(おこな)はれ化(か)洽(あまね)く、其(そ)の用(よう)を失(うしな)へば則(すなは)ち教(をしへ)を虧(か)き人(ひと)を傷(そこな)ふ。故(ゆゑ)に云(い)ふ、則(すなは)ち哲(てつ)は惟(こ)れ難(かた)しと。良(まこと)に愼(つつし)む可(べ)きなり。
現代語訳
国を立て人を治めるには、手足となる臣に頼ってその徳を合わせ、よい気風を広め習俗を導くには、明らかな賢者を待って心を寄せる。星々が天に昇って月の夕の光を助け、多くの川が地を切り開いて大海の深い水源に添う。海に浮かぶ月の深く明るいのも、なお他の物を借りて大きく見えるのである。人の君となって下を治め、天下の中心にあって時を治めるとき、たった一つの胸の内だけを働かせて九つの区域すべてを括ろうとしても、多くの力に頼らなければどうして功を成せようか。必ず職掌を明らかにし、賢者を見きわめ、材を選んで禄を分けねばならない。適した人を得れば気風が行きわたり教化が浸みるが、用い方を誤れば教えを損ない人を傷つける。だから言うのだ、人を見抜くことこそ難しいと。まことに慎むべきである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『帝範』審官第四今(いま)人(ひと)の智(ち)に短長(たんちょう)有(あ)り、能(のう)に巨細(きょさい)有(あ)り。或(あるひ)は百(ひゃく)を藴(つつ)みて尚(な)ほ少(すく)なく、或(あるひ)は一(いつ)を綂(す)べて多(おほ)しと為(な)す。輕才(けいさい)有(あ)る者(もの)は、以(も)って重任(じゅうにん)を委(ゆだ)ぬ可(べ)からず、小力(しょうりき)有(あ)る者(もの)は、以(も)って職(しょく)を成(な)すを賴(たの)む可(べ)からず。任(にん)を委(ゆだ)ね成(せい)を責(せ)め、勞(ろう)せずして化(か)す。此(こ)れ官(かん)を設(まう)くるの當(あた)れるなり。斯(こ)の二者(にしゃ)は、治亂(ちらん)の源(みなもと)なり。
-
『帝範』審官第四夫(そ)れ官(かん)を設(まう)け職(しょく)を分(わ)かつは、化(か)を闡(あき)らかにし風(ふう)を宣(の)ぶる所以(ゆゑん)なり。故(ゆゑ)に明主(めいしゅ)の人(ひと)に任(にん)ずるは、巧匠(こうしょう)の木(き)を制(せい)するが如(ごと)し。直(なほ)き者(もの)は以(も)って轅(ながえ)と為(な)し、曲(まが)れる者(もの)は以(も)って輪(わ)と為(な)し、長(なが)き者(もの)は以(も)って棟梁(とうりょう)と為(な)し、短(みじか)き者(もの)は以(も)って栱角(きょうかく)と為(な)す。曲直(きょくちょく)長短(ちょうたん)と無(な)く、各(おのおの)施(ほどこ)す所(ところ)有(あ)り。眀主(めいしゅ)の人(ひと)に任(にん)ずるも、亦(ま)た是(これ)に由(よ)るなり。智者(ちしゃ)は其(そ)の謀(はかりごと)を取(と)り、愚者(ぐしゃ)は其(そ)の力(ちから)を取(と)り、勇者(ゆうしゃ)は其(そ)の威(い)を取(と)り、怯者(きょうしゃ)は其(そ)の愼(つつし)みを取(と)り、智(ち)・愚(ぐ)・勇(ゆう)・怯(きょう)と無(な)く、兼(か)ねて之(これ)を用(もち)ゐる。故(ゆゑ)に良匠(りょうしょう)に棄材(きざい)無(な)く、明主(めいしゅ)に棄士(きし)無(な)し。一惡(いちあく)を以(も)って其(そ)の善(ぜん)を忘(わす)れず、小瑕(しょうか)を以(も)って其(そ)の功(こう)を掩(おほ)ふ勿(なか)れ。政(まつりごと)を割(わ)かち機(き)を分(わ)かち、其(そ)の有(あ)る所(ところ)を盡(つ)くす。然(しか)れば則(すなは)ち凾牛(かんぎゅう)の鼎(かなへ)は、以(も)って雞(にはとり)を烹(に)るに處(を)く可(べ)からず、䑕(ねずみ)を捕(と)らふるの狸(たぬき)は、以(も)って獸(けもの)を摶(う)たしむ可(べ)からず、一鈞(いっきん)の器(うつは)は、以(も)って江漢(こうかん)の流(なが)れを容(い)るる能(あた)はず、百石(ひゃくせき)の車(くるま)は、以(も)って斗筲(とそう)の粟(ぞく)を滿(み)たす可(べ)からず。何(なん)となれば則(すなは)ち大(だい)は小(しょう)の量(りょう)に非(あら)ず、輕(けい)は重(じゅう)の宜(ぎ)に非(あら)ざればなり。
-
『帝範』求賢第三故(ゆゑ)に舟航(しゅうこう)の海(うみ)を絶(わた)るや、必(かなら)ず橈楫(どうしゅう)の功(こう)を假(か)り、鴻鵠(こうこく)の雲(くも)を凌(しの)ぐや、必(かなら)ず羽翮(うかく)の用(よう)に因(よ)り、帝王(ていおう)の國(くに)を為(をさ)むるや、必(かなら)ず匡輔(きょうほ)の資(たすけ)に藉(よ)る。故(ゆゑ)に之(これ)を求(もと)むるに斯(こ)れ勞(ろう)し、之(これ)に任(にん)ずるに斯(こ)れ逸(いっ)す。車(くるま)を照(て)らすこと十二(じゅうに)、黄金(おうごん)千(せん)を累(かさ)ぬるも、豈(あ)に多士(たし)の隆(さかん)なる、一賢(いっけん)の重(おも)きに如(し)かんや。此(こ)れ乃(すなは)ち求賢(きゅうけん)の貴(たっと)きなり。
-
廟堂忠告・用賢第二天子の職は相を択(えら)ぶより重きは莫(な)く、宰相の職は賢を用うるより重きは莫し。然らば則ち何を以て其の賢を知らんや。諸(これ)を人に詢(と)えば則ち之を知り、其の行いを察すれば則ち之を知り、挙ぐる所を観れば則ち之を知る。夫れ室を為(つく)るに衆工の資を用いざれば、梓人(ししん)巧みなりと雖も、室成る能わず。国家の為に衆賢を集めざれば、相臣(しょうしん)才ありと雖も、国治まらず。彼(か)の相為(た)る者、誠に能く開誠布公(かいせいふこう)にして、廓焉(かくえん)として我無く、己に能わざる所有れば能なる者を挙げて之を用い、己に知らざる所有れば知る者を挙げて之を用い、己に敢えて言わざる所有れば敢えて言う者を挙げて之を用う。是くの如くなれば則ち彼の能くする所、皆我に有り。必ず一身にして衆人の事を兼ねんと欲すれば、大聖大賢と雖も能わざる所有り。夫れ粋白(すいはく)の狐は、世を挙げて有る所無きなり。然れども粋白の裘(かわごろも)有る者は、善く衆に取るのみ。况(いわ)んや大臣は、初めより事の知らざる無きを貴ばず、第(た)だ其の心を公正にして媢疾(ぼうしつ)する所無ければ、則ち智者は謀(はかりごと)を効(いた)し、勇者は力を効す。呫呫(ちょうちょう)として才と為し、捷捷(しょうしょう)として弁と為し、自ら衒(てら)い自ら伐(ほこ)らば、則ち賢者必ず楽しんで之が用を為さず。大氐(たいてい)人君自ら伐らば則ち臣の職行われざる所有り、相臣自ら伐らば則ち百執事(ひゃくしつじ)の職行われざる所有り。人の上為(た)る者は、約を操りて以て繁を馭(ぎょ)し、静に居りて以て動を制し、無心を以て天下の心に応ずれば、則ち令する所の者従い、庸(もち)うる所の者勧(はげ)む。苟(いやしく)も其の賢を知りて之に任じ、既に任じて之を疑い、務めて之を□(欠字)せんとせば、知らず用いざるに顧与(かえりみ)て、自ら其の才を任ずるや、奚(なん)ぞ異ならん。若(も)し然らば則ち体統(たいとう)失われて、謟佞(とうねい)の小人至らん。小人と処(お)れば、則ち天下の事、論ぜずして知るべし。吁(ああ)。
-
貞観政要・択官貞観元年、太宗房玄齢等に謂いて曰く、「治を致すの本は、惟だ審らかにするに在り。才を量りて職を授け、務めて官員を省く。故に『書』に称す、『官に任ずるは惟れ賢才』と。又た云う、『官は必ずしも備えず、惟だ其の人あれ』と。若し其の善き者を得ば、少なしと雖も亦た足れり。其の善からざる者は、多しと縦(たと)うとも亦た奚(なん)ぞ為さん。古人も亦た官の其の才を得ざるを以て、地に画きて餅を作るに比す。食らうべからざるなり。『詩』に曰く、『謀夫は孔(はなは)だ多し。是を用て就らず』と。又た孔子曰く、『官事摂(か)ねずんば、焉くんぞ倹なるを得ん』と。且つ『千羊の皮は、一狐の腋に如かず』と。此れ皆な経典に載在す。具さには道う能わず。当に須らく更に官員を並省し、各々任ずる所に当たるを得しむべし。則ち無為にして治まらん。卿宜しく詳らかに此の理を思い、庶官の員位を量定すべし」と。玄齢等是に由りて置く所の文武は総べて六百四十員。太宗之に従う。因りて玄齢に謂いて曰く、「此より儻(も)し楽工雑類有りて、仮使(たと)い術は儕輩に逾(こ)ゆるとも、只だ特に銭帛を賜いて以て其の能を賞すべし。必ず超えて官爵を授け、夫の朝賢君子と肩を比べて立ち、坐を同じくして食らわしむべからず。諸々の衣冠に恥累と為すを遺(のこ)す」と。
-
貞観政要・択官臣聞く、臣を知るは君に若(し)くは莫し。子を知るは父に若くは莫し、と。父にして其の子を知る能わずんば、則ち以て一家を睦(むつ)まじくする無し。君にして其の臣を知る能わずんば、則ち以て万国を斉しくする無し。万国咸な寧く、一人慶び有るは、必ず忠良の弼と作るを藉る。俊乂官に在らば、則ち庶績其れ凝(な)り、無為にして化せん。故に堯・舜・文・武は前載に称せらる。咸な人を知るを以て則ち哲なり。多士は朝に盈つ。元・凱は巍巍たるの功を翼(たす)け、周・召は煥乎たるの美を光らす。然らば則ち四岳・九官・五臣・十乱は、豈に惟だ之を曩代に生じて、独り当今に無からんや。求むると求めざると、好むと好まざるとに在るのみ。何を以て之を言うや。夫れ美玉明珠、孔翠犀象、大宛の馬、西旅の獒(ごう)は、或いは足無きなり、或いは情無きなり。八荒の表に生じ、塗(みち)は万里の外に遥かなり。重訳して貢に入り、道路絶えざるは、何ぞや。蓋し中国の好む所に由ればなり。況んや仕うる者は君の栄を懐い、君の禄を食む。之を率いるに義を以てせば、将に何くに往くとして至らざらんや。臣以為えらく、之と孝を為さば、則ち曾参・子騫に同じからしむべし。之と忠を為さば、則ち龍逄・比干に同じからしむべし。之と信を為さば、則ち尾生・展禽に同じからしむべし。之と廉を為さば、則ち伯夷・叔斉に同じからしむべし、と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る