帝範 / 求賢第三
故舟航之絶海也,必假橈楫之功;鴻鵠之凌雲也,必因羽翮之用;帝王之為國也,必藉匡輔之資。故求之斯勞,任之斯逸。照車十二,黄金累千,豈如多士之隆,一賢之重。此乃求賢之貴也。
新字:故舟航之絶海也,必仮橈楫之功;鴻鵠之凌雲也,必因羽翮之用;帝王之為国也,必藉匡輔之資。故求之斯労,任之斯逸。照車十二,黄金累千,豈如多士之隆,一賢之重。此乃求賢之貴也。
書き下し
故(ゆゑ)に舟航(しゅうこう)の海(うみ)を絶(わた)るや、必(かなら)ず橈楫(どうしゅう)の功(こう)を假(か)り、鴻鵠(こうこく)の雲(くも)を凌(しの)ぐや、必(かなら)ず羽翮(うかく)の用(よう)に因(よ)り、帝王(ていおう)の國(くに)を為(をさ)むるや、必(かなら)ず匡輔(きょうほ)の資(たすけ)に藉(よ)る。故(ゆゑ)に之(これ)を求(もと)むるに斯(こ)れ勞(ろう)し、之(これ)に任(にん)ずるに斯(こ)れ逸(いっ)す。車(くるま)を照(て)らすこと十二(じゅうに)、黄金(おうごん)千(せん)を累(かさ)ぬるも、豈(あ)に多士(たし)の隆(さかん)なる、一賢(いっけん)の重(おも)きに如(し)かんや。此(こ)れ乃(すなは)ち求賢(きゅうけん)の貴(たっと)きなり。
現代語訳
だから舟が海を渡るには必ず櫂の働きを借り、大鳥が雲を越えるには必ず羽の働きによるのであり、帝王が国を治めるには必ず輔佐の助けに頼るのである。だから人を求めるときには骨を折り、任せたあとは楽になる。車の前後を照らす十二個の珠玉も、千を積み重ねた黄金も、どうして多くの士がそろっていることの盛んさ、一人の賢者の重さに及ぼうか。これこそが賢を求めることの貴さである。
解説
「之を求むるに斯れ勞し、之に任ずるに斯れ逸す」——探すときは骨を折り、任せたあとは楽をする。求賢篇の実務的な結論はこの一句に尽きる。逆に言えば、採用に手を抜いた分だけ、そのあとずっと苦労し続けることになる。後半は斉の威王と梁の恵王の問答を踏まえている。恵王が「わが国には車の前後十二乗を照らす径寸の珠がある」と自慢したのに対し、威王は「私の宝は臣下だ」と答え、四人の名を挙げた。太宗はその答えの側に立ち、宝を珠玉ではなく人に置く。注目したいのは「多士の隆なる」と「一賢の重き」が並記されていることだ。層の厚さと、突出した一人。どちらか一方ではなく、両方が財だと言っている。
この章句が説くこと
求むるに労し任ずるに逸す多士の隆一賢の重き宝は人