帝範 / 建親第二
術以神隱為妙,道以光大為功。括蒼旻以體心,則人仰之而不測;包厚地以為量,則人循之而無端。蕩蕩難名,宜其宏逺。且敦穆九族,放勲流美於前;克諧烝乂,重華垂譽於後。無以奸破義,無以疎間親。察之以徳,則邦家俱泰,骨肉無虞,良為美矣。
新字:術以神隠為妙,道以光大為功。括蒼旻以体心,則人仰之而不測;包厚地以為量,則人循之而無端。蕩蕩難名,宜其宏遠。且敦穆九族,放勲流美於前;克諧烝乂,重華垂誉於後。無以奸破義,無以疎間親。察之以徳,則邦家倶泰,骨肉無虞,良為美矣。
書き下し
術(じゅつ)は神隱(しんいん)を以(も)って妙(みょう)と為(な)し、道(みち)は光大(こうだい)を以(も)って功(こう)と為(な)す。蒼旻(そうびん)を括(くく)りて以(も)って心(こころ)を體(たい)すれば、則(すなは)ち人(ひと)之(これ)を仰(あふ)いで測(はか)らず。厚地(こうち)を包(つつ)みて以(も)って量(りょう)と為(な)せば、則(すなは)ち人(ひと)之(これ)に循(したが)ひて端(はし)無(な)し。蕩蕩(とうとう)として名(な)づけ難(がた)く、宜(むべ)なるかな其(そ)れ宏遠(こうえん)なること。且(か)つ九族(きゅうぞく)を敦穆(とんぼく)にすれば、放勲(ほうくん)美(び)を前(まへ)に流(なが)し、烝乂(じょうがい)を克(よ)く諧(ととの)ふれば、重華(ちょうか)譽(ほまれ)を後(のち)に垂(た)る。奸(かん)を以(も)って義(ぎ)を破(やぶ)ること無(な)く、疎(そ)を以(も)って親(しん)を間(へだ)つること無(な)かれ。之(これ)を察(さっ)するに徳(とく)を以(も)ってすれば、則(すなは)ち邦家(ほうか)俱(とも)に泰(やす)く、骨肉(こつにく)虞(うれ)ひ無(な)く、良(まこと)に美(び)と為(な)す。
現代語訳
術は目立たず隠れているところに妙があり、道は大きく明らかであるところに功がある。青空をくくるように心を保てば、人は仰ぎ見てもその深さを測れない。大地を包むほどの度量をもてば、人はそれに従ってはてしがない。広々として名づけようもなく、なるほど広大で奥深い。そのうえで一族を睦まじく厚くすれば、堯がかつて美名を残したように、また人々をよく和らげ整えれば、舜が後世に誉れを垂れたようになる。よこしまな者に義を破らせてはならず、疎い者に親しい者を隔てさせてはならない。これを徳によって見きわめれば、国も家もともに安らかで、骨肉に憂いがなく、まことに美しいことである。
解説
この章句が説くこと
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『帝範』建親第二君徳(くんとく)の宏(ひろ)きは、唯(た)だ博達(はくたつ)に資(と)る。分(ぶん)を設(まう)け教(をしへ)を懸(か)け、術(じゅつ)を以(も)って人(ひと)を化(か)す。務(む)に應(おう)じ時(とき)に適(かな)ひ、道(みち)を以(も)って物(もの)を制(せい)す。
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『帝範』務農第十黎黔(れいけん)を子育(しいく)するは、惟(た)だ威恵(いけい)に資(と)る。恵(けい)は懷(なつ)く可(べ)ければ、則(すなは)ち殊俗(しゅぞく)風(ふう)に歸(き)すること、霜(しも)を披(ひら)きて春日(しゅんじつ)に照(て)らさるるが若(ごと)し。威(い)は懼(おそ)る可(べ)ければ、則(すなは)ち中華(ちゅうか)慴軏(しょうげつ)すること、刃(やいば)を履(ふ)みて雷霆(らいてい)を戴(いただ)くが如(ごと)し。必(かなら)ず湏(すべか)らく威恵(いけい)並(なら)び馳(は)せ、剛柔(ごうじゅう)兩(ふた)つながら用(もち)ゐ、刑(けい)を畫(えが)きて犯(をか)さず、木(き)を移(うつ)して欺(あざむ)くこと無(な)かるべし。賞罰(しょうばつ)既(すで)に明(あき)らかなれば、則(すなは)ち善惡(ぜんあく)斯(ここ)に别(わか)れ、仁信(じんしん)普(あまね)く著(あら)はるれば、則(すなは)ち遐邇(かじ)心(こころ)を宅(お)く。穡(しょく)を勸(すす)め農(のう)を務(つと)むれば、則(すなは)ち饑寒(きかん)の患(うれ)ひ塞(ふさ)がり、奢(しゃ)を遏(とど)め麗(れい)を禁(きん)ずれば、則(すなは)ち豐厚(ほうこう)の利(り)興(おこ)る。且(か)つ君(きみ)の下(しも)を化(か)するは、風(かぜ)の草(くさ)を偃(ふ)すが如(ごと)し。上(かみ)心(こころ)を節(せっ)せざれば、則(すなは)ち下(しも)に逸志(いっし)多(おほ)し。君(きみ)己(おのれ)を約(やく)せずして、人(ひと)の非(ひ)を為(な)すを禁(きん)ずるは、是(こ)れ猶(な)ほ火(ひ)の燃(も)ゆるを惡(にく)みて、薪(たきぎ)を添(そ)へて其(そ)の焰(ほのほ)の止(や)むを望(のぞ)み、池(いけ)の濁(にご)るを忿(いか)りて、浪(なみ)を撓(みだ)して其(そ)の流(なが)れを止(と)めんと欲(ほっ)するがごとし。得(う)可(べ)からざるなり。莫(な)し、先(ま)づ其(そ)の身(み)を正(ただ)せば、則(すなは)ち人(ひと)言(い)はずして化(か)するに若(し)くは。
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『帝範』審官第四國(くに)を立(た)て人(ひと)を制(せい)するは、股肱(ここう)に資(と)りて以(も)って徳(とく)を合(あ)はせ、風(ふう)を宣(の)べ俗(ぞく)を道(みちび)くは、眀賢(めいけん)を俟(ま)ちて心(こころ)を寄(よ)す。列宿(れっしゅく)天(てん)に騰(あが)りて、隂光(いんこう)の夕照(せきしょう)を助(たす)け、百川(ひゃくせん)地(ち)を决(き)りて、溟渤(めいぼつ)の深源(しんげん)を添(そ)ふ。海月(かいげつ)の深朗(しんろう)なるも、猶(な)ほ物(もの)を假(か)りて大(だい)と為(な)る。人(ひと)に君(きみ)たり下(しも)を御(ぎょ)し、極(きょく)を統(す)べ時(とき)を理(をさ)むるに、獨(ひと)り方寸(ほうすん)の心(こころ)を運(めぐ)らし、以(も)って九區(きゅうく)の内(うち)を括(くく)る、衆力(しゅうりょく)に資(と)らずんば何(なに)を以(も)って功(こう)を成(な)さん。必(かなら)ず須(すべか)らく職(しょく)を明(あき)らかにし賢(けん)を審(つまび)らかにし、材(ざい)を擇(えら)び禄(ろく)を分(わ)かつべし。其(そ)の人(ひと)を得(う)れば則(すなは)ち風(ふう)行(おこな)はれ化(か)洽(あまね)く、其(そ)の用(よう)を失(うしな)へば則(すなは)ち教(をしへ)を虧(か)き人(ひと)を傷(そこな)ふ。故(ゆゑ)に云(い)ふ、則(すなは)ち哲(てつ)は惟(こ)れ難(かた)しと。良(まこと)に愼(つつし)む可(べ)きなり。
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『帝範』賞罰第九夫(そ)れ天(てん)の物(もの)を育(そだ)つるは、猶(な)ほ君(きみ)の衆(しゅう)を御(ぎょ)するがごとし。天(てん)は寒暑(かんしょ)を以(も)って徳(とく)と為(な)し、君(きみ)は仁愛(じんあい)を以(も)って心(こころ)と為(な)す。寒暑(かんしょ)既(すで)に調(ととの)へば、則(すなは)ち時(とき)に疾疫(しつえき)無(な)く、風雨(ふうう)節(ふし)ならざれば、則(すなは)ち嵗(とし)に饑寒(きかん)有(あ)り。仁愛(じんあい)下(しも)に施(ほどこ)さるれば、則(すなは)ち人(ひと)凋弊(ちょうへい)せず、教令(きょうれい)度(ど)を失(うしな)へば、則(すなは)ち政(まつりごと)に乖違(かいい)有(あ)り。其(そ)の害(がい)の源(みなもと)を防(ふせ)ぎ、其(そ)の利(り)の本(もと)を開(ひら)く。罰(ばつ)を顯(あき)らかにして以(も)って之(これ)を威(おど)し、賞(しょう)を明(あき)らかにして以(も)って之(これ)を化(か)す。威(い)立(た)てば則(すなは)ち惡(あく)なる者(もの)懼(おそ)れ、化(か)行(おこな)はるれば則(すなは)ち善(ぜん)なる者(もの)勸(すす)む。己(おのれ)に適(かな)ひて道(みち)に妨(さまた)ぐれば、禄(ろく)を加(くは)へず、己(おのれ)に逆(さか)らひて國(くに)に便(べん)なれば、刑(けい)を施(ほどこ)さず。故(ゆゑ)に賞(しょう)せらるる者(もの)は君(きみ)を徳(とく)とせず、功(こう)の致(いた)す所(ところ)なればなり。罰(ばっ)せらるる者(もの)は上(かみ)を怨(うら)みず、罪(つみ)の當(あた)る所(ところ)なればなり。故(ゆゑ)に書(しょ)に曰(いは)く、偏(かたよ)る無(な)く黨(とう)する無(な)ければ、王道(おうどう)蕩蕩(とうとう)たりと。此(こ)れ賞罰(しょうばつ)の權(けん)なり。
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『管子』勢故に賢者は誠信にして以て之を仁し、慈惠にして以て之を愛す。政象を端しくし、敢えて以て人に先んぜず。中静にして留まらず、裕德にして求むる無く、女色に形る。其の處る所の者は、柔安静樂にして、德を行いて爭わず、以て天下の濆作するを待つ。故に賢者は安徐正静にして、柔節先ず定まる。敢えざるに行いて、能わざるに立ち、弱節を守りて堅く之に處る。故に天時を犯さず、民功を亂さず、時を秉りて人を養う。德を先にし刑を後にし、天に順いて、微かに人を度る。善く周する者は、明も見る能わざるなり。善く明なる者は、周も蔽う能わざるなり。大明大周に勝てば、則ち民に大周無きなり。大周大明に勝てば、則ち民に大明無きなり。大周の先は、以て信を奮う可し。大明の祖は、以て天下に代わる可し。索めて得ずんば、之を招搖の下に求む。獸走るに厭きて伏網罟有り、一たび偃し一たび側にす、然らずんば得ず。大文三たび曽ねて義と德とを貴ぶ。大武三たび曽ねて武と力とを偃す。
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