帝範 / 建親第二
君徳之宏,唯資博達。設分懸教,以術化人。應務適時,以道制物。
新字:君徳之宏,唯資博達。設分懸教,以術化人。応務適時,以道制物。
書き下し
君徳(くんとく)の宏(ひろ)きは、唯(た)だ博達(はくたつ)に資(と)る。分(ぶん)を設(まう)け教(をしへ)を懸(か)け、術(じゅつ)を以(も)って人(ひと)を化(か)す。務(む)に應(おう)じ時(とき)に適(かな)ひ、道(みち)を以(も)って物(もの)を制(せい)す。
現代語訳
君主の徳の広さは、ただ広く通じていることによる。分限を定め、教えを高く掲げ、術をもって人を導く。その時々の務めに応じ、時宜にかない、道をもって物事を治める。
解説
わずか三十字の短い一章だが、統治の順序が三段に畳まれている。第一に「分を設け」——役割と限度を定めること。第二に「教を懸け」——掲げて見えるようにすること。懸は高く掲げる意で、教えは隠すものではなく示すものだとされる。第三に「術を以って人を化す」——手立てを用いて人が自ら変わるようにすること。命じて従わせるのではなく化す、と書かれているところに含みがある。そして後半で、この三段は固定された手順ではないと釘が刺される。「務に應じ時に適ひ」——目の前の務めに応じ、時にかなうこと。原則は道の側に置き、やり方は時に合わせて変える。冒頭の「博達に資る」がそれを支えている。広く通じていなければ、時に応じた変え方ができないからである。
この章句が説くこと
博達分を設け教を懸く応務適時道以制物
関連する章句
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『帝範』建親第二術(じゅつ)は神隱(しんいん)を以(も)って妙(みょう)と為(な)し、道(みち)は光大(こうだい)を以(も)って功(こう)と為(な)す。蒼旻(そうびん)を括(くく)りて以(も)って心(こころ)を體(たい)すれば、則(すなは)ち人(ひと)之(これ)を仰(あふ)いで測(はか)らず。厚地(こうち)を包(つつ)みて以(も)って量(りょう)と為(な)せば、則(すなは)ち人(ひと)之(これ)に循(したが)ひて端(はし)無(な)し。蕩蕩(とうとう)として名(な)づけ難(がた)く、宜(むべ)なるかな其(そ)れ宏遠(こうえん)なること。且(か)つ九族(きゅうぞく)を敦穆(とんぼく)にすれば、放勲(ほうくん)美(び)を前(まへ)に流(なが)し、烝乂(じょうがい)を克(よ)く諧(ととの)ふれば、重華(ちょうか)譽(ほまれ)を後(のち)に垂(た)る。奸(かん)を以(も)って義(ぎ)を破(やぶ)ること無(な)く、疎(そ)を以(も)って親(しん)を間(へだ)つること無(な)かれ。之(これ)を察(さっ)するに徳(とく)を以(も)ってすれば、則(すなは)ち邦家(ほうか)俱(とも)に泰(やす)く、骨肉(こつにく)虞(うれ)ひ無(な)く、良(まこと)に美(び)と為(な)す。
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『帝範』建親第二夫(そ)れ六合(りくごう)は曠道(こうどう)、大寳(たいほう)は重任(じゅうにん)なり。曠道(こうどう)は偏(ひと)へに制(せい)す可(べ)からず、故(ゆゑ)に人(ひと)と之(これ)を共(とも)に理(をさ)む。重任(じゅうにん)は獨(ひと)り居(を)る可(べ)からず、故(ゆゑ)に人(ひと)と之(これ)を共(とも)に守(まも)る。是(ここ)を以(も)って親戚(しんせき)を封建(ほうけん)し、以(も)って藩衛(はんえい)と為(な)し、安危(あんき)力(ちから)を同(おな)じくし、盛衰(せいすい)心(こころ)を一(いつ)にす。遠近(えんきん)相(あ)ひ持(じ)し、親疎(しんそ)兩(ふた)つながら用(もち)ゐる。并兼(へいけん)の路(みち)塞(ふさ)がり、逆節(ぎゃくせつ)生(しょう)ぜず。
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『帝範』務農第十黎黔(れいけん)を子育(しいく)するは、惟(た)だ威恵(いけい)に資(と)る。恵(けい)は懷(なつ)く可(べ)ければ、則(すなは)ち殊俗(しゅぞく)風(ふう)に歸(き)すること、霜(しも)を披(ひら)きて春日(しゅんじつ)に照(て)らさるるが若(ごと)し。威(い)は懼(おそ)る可(べ)ければ、則(すなは)ち中華(ちゅうか)慴軏(しょうげつ)すること、刃(やいば)を履(ふ)みて雷霆(らいてい)を戴(いただ)くが如(ごと)し。必(かなら)ず湏(すべか)らく威恵(いけい)並(なら)び馳(は)せ、剛柔(ごうじゅう)兩(ふた)つながら用(もち)ゐ、刑(けい)を畫(えが)きて犯(をか)さず、木(き)を移(うつ)して欺(あざむ)くこと無(な)かるべし。賞罰(しょうばつ)既(すで)に明(あき)らかなれば、則(すなは)ち善惡(ぜんあく)斯(ここ)に别(わか)れ、仁信(じんしん)普(あまね)く著(あら)はるれば、則(すなは)ち遐邇(かじ)心(こころ)を宅(お)く。穡(しょく)を勸(すす)め農(のう)を務(つと)むれば、則(すなは)ち饑寒(きかん)の患(うれ)ひ塞(ふさ)がり、奢(しゃ)を遏(とど)め麗(れい)を禁(きん)ずれば、則(すなは)ち豐厚(ほうこう)の利(り)興(おこ)る。且(か)つ君(きみ)の下(しも)を化(か)するは、風(かぜ)の草(くさ)を偃(ふ)すが如(ごと)し。上(かみ)心(こころ)を節(せっ)せざれば、則(すなは)ち下(しも)に逸志(いっし)多(おほ)し。君(きみ)己(おのれ)を約(やく)せずして、人(ひと)の非(ひ)を為(な)すを禁(きん)ずるは、是(こ)れ猶(な)ほ火(ひ)の燃(も)ゆるを惡(にく)みて、薪(たきぎ)を添(そ)へて其(そ)の焰(ほのほ)の止(や)むを望(のぞ)み、池(いけ)の濁(にご)るを忿(いか)りて、浪(なみ)を撓(みだ)して其(そ)の流(なが)れを止(と)めんと欲(ほっ)するがごとし。得(う)可(べ)からざるなり。莫(な)し、先(ま)づ其(そ)の身(み)を正(ただ)せば、則(すなは)ち人(ひと)言(い)はずして化(か)するに若(し)くは。
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『帝範』賞罰第九夫(そ)れ天(てん)の物(もの)を育(そだ)つるは、猶(な)ほ君(きみ)の衆(しゅう)を御(ぎょ)するがごとし。天(てん)は寒暑(かんしょ)を以(も)って徳(とく)と為(な)し、君(きみ)は仁愛(じんあい)を以(も)って心(こころ)と為(な)す。寒暑(かんしょ)既(すで)に調(ととの)へば、則(すなは)ち時(とき)に疾疫(しつえき)無(な)く、風雨(ふうう)節(ふし)ならざれば、則(すなは)ち嵗(とし)に饑寒(きかん)有(あ)り。仁愛(じんあい)下(しも)に施(ほどこ)さるれば、則(すなは)ち人(ひと)凋弊(ちょうへい)せず、教令(きょうれい)度(ど)を失(うしな)へば、則(すなは)ち政(まつりごと)に乖違(かいい)有(あ)り。其(そ)の害(がい)の源(みなもと)を防(ふせ)ぎ、其(そ)の利(り)の本(もと)を開(ひら)く。罰(ばつ)を顯(あき)らかにして以(も)って之(これ)を威(おど)し、賞(しょう)を明(あき)らかにして以(も)って之(これ)を化(か)す。威(い)立(た)てば則(すなは)ち惡(あく)なる者(もの)懼(おそ)れ、化(か)行(おこな)はるれば則(すなは)ち善(ぜん)なる者(もの)勸(すす)む。己(おのれ)に適(かな)ひて道(みち)に妨(さまた)ぐれば、禄(ろく)を加(くは)へず、己(おのれ)に逆(さか)らひて國(くに)に便(べん)なれば、刑(けい)を施(ほどこ)さず。故(ゆゑ)に賞(しょう)せらるる者(もの)は君(きみ)を徳(とく)とせず、功(こう)の致(いた)す所(ところ)なればなり。罰(ばっ)せらるる者(もの)は上(かみ)を怨(うら)みず、罪(つみ)の當(あた)る所(ところ)なればなり。故(ゆゑ)に書(しょ)に曰(いは)く、偏(かたよ)る無(な)く黨(とう)する無(な)ければ、王道(おうどう)蕩蕩(とうとう)たりと。此(こ)れ賞罰(しょうばつ)の權(けん)なり。
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抱朴子外篇・君道名を考え実を責め、屢しば勤恤を省み、訓典を樹てて以て民の極を示し、褒貶を審らかにして以て勧沮を彰らかにし、検斉を明らかにして以て僭濫を杜ぎ、直枉を詳らかにして以て晦吝に違う。其の之を与うるや、理に叛くの幸い無く、其の之を奪うや、百氏の掩い有り。之を匠るに六藝を以てし、之を軌するに忠信を以てし、之に蒞むに慈和を以てし、之を斉うるに礼刑を以てす。仄陋を揚げて以て沈抑を促し、清流を激して以て臧否を澄ます。物をして詭道無く、事をして非分無からしむ。朝に立ち民を牧する者は、官を侵し局を越ゆるを得ず。轂を推して戎に即く者は、敢えて危うきを憚り命を顧みる莫し。近きを悦ばせて以て遠きを懐け、文を修めて以て携を招く。百姓の財粟を阜にし、進徳の広途を闡き、機偽の繁務を杜げば、則ち罰を明らかにし法を敕め、哀敬して獄を折し、淳化洽ければ、則ち瑕を匿し疾を蔵し、五教は寛に在り。
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『帝範』君体第一夫(そ)れ人(ひと)は國(くに)の先(さき)にして、國(くに)は君(きみ)の本(もと)なり。人主(じんしゅ)の體(たい)は、山嶽(さんがく)の如(ごと)くにして、髙峻(こうしゅん)にして動(うご)かず、日月(じつげつ)の如(ごと)くにして、貞明(ていめい)にして普(あまね)く照(て)らす。兆庶(ちょうしょ)の瞻仰(せんぎょう)する所(ところ)、天下(てんか)の歸徃(きおう)する所(ところ)なり。其(そ)の志(こころざし)を寛大(かんだい)にすれば、以(も)って兼(か)ね包(つつ)むに足(た)り、其(そ)の心(こころ)を平正(へいせい)にすれば、以(も)って制斷(せいだん)するに足(た)る。威徳(いとく)に非(あら)ざれば以(も)って遠(とほ)きを致(いた)す無(な)く、慈厚(じこう)に非(あら)ざれば以(も)って人(ひと)を懷(なつ)くる無(な)し。九族(きゅうぞく)を撫(ぶ)するに仁(じん)を以(も)ってし、大臣(だいじん)に接(せっ)するに禮(れい)を以(も)ってす。先(せん)を奉(ほう)じては孝(こう)を思(おも)ひ、位(くらゐ)に處(を)りては恭(きょう)を思(おも)ふ。己(おのれ)を傾(かたむ)けて勤勞(きんろう)し、以(も)って徳義(とくぎ)を行(おこな)ふ。此(こ)れ乃(すなは)ち君(きみ)の體(たい)なり。
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