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荘子 / 天下

老聃曰:「知其雄,守其雌,為天下谿;知其白,守其辱,為天下谷。」人皆取先,己獨取後,曰:「受天下之垢。」人皆取實,己獨取虛,無藏也故有餘,巋然而有餘。其行身也,徐而不費,無為也而笑巧。人皆求福,己獨曲全,曰:「苟免於咎。」以深為根,以約為紀,曰:「堅則毀矣,銳則拙矣。」常寬容於物,不削於人,可謂至極。關尹、老聃乎!古之博大真人哉!

新字:老聃曰:「知其雄,守其雌,為天下谿;知其白,守其辱,為天下谷。」人皆取先,己独取後,曰:「受天下之垢。」人皆取実,己独取虚,無蔵也故有余,巋然而有余。其行身也,徐而不費,無為也而笑巧。人皆求福,己独曲全,曰:「苟免於咎。」以深為根,以約為紀,曰:「堅則毀矣,銳則拙矣。」常寛容於物,不削於人,可謂至極。関尹、老聃乎!古之博大真人哉!

書き下し

老聃曰く、「其の雄を知りて、其の雌を守れば、天下の谿(たに)と為る。其の白を知りて、其の辱を守れば、天下の谷と為る」と。人皆な先を取り、己独り後を取る。曰く、「天下の垢を受く」と。人皆な実を取り、己独り虚を取る。蔵する無きが故に余り有り。巋然(きぜん)として余り有り。其の身を行うや、徐(おもむ)ろにして費(つい)えず、無為にして巧を笑う。人皆な福を求め、己独り曲全す。曰く、「苟(いやしく)も咎を免る」と。深きを以て根と為し、約を以て紀と為して曰く、「堅ければ則ち毀(やぶ)れ、鋭ければ則ち拙(つたな)し」と。常に物に寛容にして、人に削(けず)らず。至極と謂うべし。関尹・老聃かな。古の博大真人なるかな。

現代語訳

老聃は言った。「その雄々しさを知りながら、その雌々しさを守れば、天下の谷川となる。その白さを知りながら、その汚れを守れば、天下の谷となる」。人はみな先を取ろうとするが、彼だけは後ろを取る。「天下の垢を引き受ける」と言った。人はみな実を取ろうとするが、彼だけは虚を取る。蓄えないから、余りがある。どっしりと構えて、余裕がある。その身の処し方は、ゆっくりとして無駄がなく、何もしないでいながら、巧みさを笑う。人はみな福を求めるが、彼だけは身をかがめて全うする。「なんとか咎を免れる」と言った。深さを根とし、簡素を綱として言った。「堅ければ壊れ、鋭ければ欠ける」と。常に物に寛容で、人を削らない。これこそ究極と言うべきだ。関尹と老聃よ。まことに、古の博大なる真人であった。

解説

老子への、最大級の賛辞です。「人はみな先を取ろうとするが、彼だけは後ろを取る」。「人はみな実を取ろうとするが、彼だけは虚を取る」。すべてが逆です。そして「蓄えないから、余りがある」。この逆説が美しい。抱え込まないから、いつも余裕がある。「堅ければ壊れ、鋭ければ欠ける」。強さを求めれば、脆くなる。荘子は老子を「古の博大なる真人」と讃えます。批評の中で、これほどの賛辞は他にありません。

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